最近の、衝動

　ここ最近、旅行がしたくて仕方がない。見知らぬ土地を歩き回り、まだ食べたことがないおいしいものと出会い、スーパーで売っている物を端から手にとって眺めたい。きれいだね、楽しいね、面白いね、と言ってとにかくまだわたしの人生に入り込んでいないものと出会いたい。
　となると、国内旅行ではその願いは叶えられないので、できれば国外へ行きたい。ちょっとそこまで晩ごはんを食べに……の気軽さで行けるお隣の国でもいい。海外である必要はない。ただ、どこか、自分が住んでいる国以外の場所に行きたい。

　でも、本当は旅行がしたいのではなくて、引越しがしたいのかもしれない、とふと思う。今持っているものをギリギリまで減らし、どこか遠くへ引越して、一から暮らしを築くのだ。スーパーに行っても、言葉がわからなくて、何を買っていいかわからない。スマホを片手に、あれでもない、これでもないと迷いながら買う。買ったものは予想通りのものかもしれないし、大きく外れるかもしれない。でも、そのドキドキが楽しい。自分の生活を、新しい環境に合わせていく工程はとてもストレスフルだけど、自分が追い求めていた以上の物が手に入った時の達成感は、病みつきになる。そう、わたしはきっと、生活を一から整えると言う、とてもストレスフルで、でも新しい出会いに心踊る、そんな日々が恋しいのだ。

　一つの国で連続して生活した最長期間は、今年で十五年。第二位は七年。同じ家に連続して住んだ最長期間は、今年で一位タイの六年。いつもならとっくに海を渡っている頃だ。どこかに行きたくなっても不思議ではない。でも、そんなことはもう到底無理なので、家の断捨離をとにかく進めて、ささやかな模様替えで心を落ち着かせている。あぁ、どこかに行きたい。