バイリンガル教育を始めるその前に、考えた③ - 一年遅らせるという決断
長男のキンダー入学を一年遅らせようと決めたのは、リモートによる授業が始まって2週目のことでした。先生にも、親にも初めてづくしで、全てが手探りで進みました。担任の先生は、どうしたら子供達が授業に集中してくれるかを考え、毎日色々な工夫をしてくれました。親も、自分たちはどのように子供達と授業に臨むべきか、試行錯誤の日々でした。第一日目に、先生には「どのくらいの距離を保って、親は授業に関わるべきか」を尋ねました。先生からの回答は「ミュートのオンオフができるようになるまでは付き添い、基本操作に問題がなくなれば、子供達だけで授業を受けることが望ましい」でした。「対面での授業であれば、子供達は親の力を借りずに一日を過ごさなければならないので」とも言われました。
しかし、全く英語を理解していない長男にとっては、何を言われているかわからない中でパソコンの前に座り続けなければいけないことは、苦行でしかありませんでした。隣に付き添って、逐一先生の言葉を通訳したり、指示を説明する親御さんも多かったですが、私は絶対にやりませんでした。最初はわからないとしても、徐々に理解するであろう英語での授業を、この時点で日本語に逐一訳すことがいいことだとは思えなかったからです。でも、長男にとっては辛い時間であることは間違いなく、心が痛みました。
リモート授業と対面授業の大きな違いは、クラスメイトのやっていることを真似ることができないことだと思いました。自分が、10歳で現地校に放り込まれた時、最初は本当に何もわかりませんでした。先生の言っていることは全く理解できませんでしたが、周りの子が算数の教科書を開けば私も教科書を開いたし、絵を描き始めれば、なんの絵を描くのかはわからずとも、とりあえず色鉛筆を机の上に取り出しました。こうして、言われていることと取るべき行動を合致させていき、少しずつ学校に馴染んでいきました。しかし、リモート授業では、画面に映っているクラスメイトの顔は見えていても、何をしているかまではわかりません。クラスメイトの様子を見ることもできず、息子は先生の指示が全く理解できませんでした。まだ5歳です。一生懸命わからないことを聞き取ろうという姿勢も、集中力も持って数分でした。この時間で、息子が得られることはあるんだろうか、と私には疑問でしかありませんでした。
アメリカのキンダーガーテン(小学校準1年生)は、本当は、学校に馴染むための準備期間です。最近は(特に私が住んでいる州では)キンダーからかなりの勉強を強いられるようですが、元々は半日で終わりでしたし、楽しくお友達と遊び、社会生活に適応していくことが目的でした。(最近のキンダーガーテンの在り方に関しては、アメリカの中でも賛否両論あります。)息子には、学校って楽しいな、学校に行きたいな、って思ってもらえる一年にして欲しいし、英語をこれ以上嫌いになって欲しくないと思いました。また、長男が授業を受けている間、次男は邪魔にならないよう行動を制限され、公園にも行けず……と、次男にとってもよくない環境でした。親もストレスでイライラするし、子供たちも強制的にやりたくもないことをやらされ、家族全員にとっていいことが一つも見つかりませんでした。幸い、長男は夏生まれ(アメリカの早生まれ)で、学年を一つ落とすことができたので、思い切って、我が家は長男のキンダー入学を一年遅らせることにしました。
この決断が、将来的に吉と出るか凶と出るかは、今はわかりませんが、とりあえず、後悔はしていません。来年は、日英イマージョンではなく、アメリカの現地校へ進学させようと思っていますが、それについては次にまとめたいと思います。
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