見出し画像

私なりの小説メイキング

 はじめまして、DAC+に通所している亜子と申します。
 まだ通所をはじめる相談をしている段階の頃、職員の方に「亜子さんは他の利用者の方に小説の書き方を教えることができますか?」と聞かれたことがこのメイキングの執筆のきっかけです。
 そういった活動を全然していないな~と思ったこと、また、最近、通所した際に小説を書く機会が増えてきたので、自分の備忘録的な形で残しておきたいなと思いました。
 一応、コピーライターもやっていたので、小説だけではなく、様々な文章を書く上で参考になる内容になればと思っています。
 今回のメイキングは「起承転結」についてです。

1.起承転結の大事さについて


 起承転結は小説や文章の「骨格」とも言える部分だと思います。
 起承転結があるから、読者は小説の設定を理解でき、その小説が大事にしているところを感じ取ることができるのだと思います。
 今回はその起承転結をひとつひとつ取り上げて、どのように書けば効果的なのか考えてみたいと思います。あくまで個人的な意見ですので、学校教育などで習う内容とは違う可能性があります。

2.起


 私が「起承転結」の起の部分に必要だなと思うのは、「小説の背景」を描写することだと思います。具体的に言えば、主人公のこれまでの境遇、舞台設定、主人公をとりまく環境などを取り上げるといいと思います。
 小説や文章を書く上で、私が一番大事だと思っていることは「親切心」です。
 読者は小説を「読んでいる」のではなく、小説を読んで「くれている」という意識を持って文章を書くのが、読者の読みやすい文章を書くコツではないかと思います。
 それを踏まえた上で、まず最初に読者が知りたいことはなんだろう? と考えると、やはり主人公について知りたいと思うと私は考えます。どんな主人公なんだろう、主人公はどんな生活をしているんだろう、ということですね。
 なので、導入部分である起の部分では、主人公についての仔細を読者に伝えるのが小説にのめり込みやすくなるコツなのかなと思います。

例)Aは今、高校生だ。Aが通っている学校は県内でも有数の進学校で、生活指導も厳しいと有名だ。その代わり、学校は県内でも市街地のほうに設置されているため、通学するのにとても便利である。
 家族は父と母だけの核家族である。父は地元の大手企業の下請けに勤めていて、母は家で専業主婦をしている。兄弟が欲しかったと思うこともあるが、一人っ子だからこそ大事にされてきたと思うこともある。
 今通っている学校には、小学生のころからの幼馴染もいて、友人関係もうまくいっている。また、Aの前向きな性格上、文化祭などのイベントがあれば中心人物になるような立場だった。

3.承


 起承転結の承では、なにか「イベント」が起こるといいと思います。
 読者の気を引きつけるようなことが主人公に起こるのです。
 それは転の部分にあたるのではないか? と思う方もいるかもしれませんが、ここには様々な意見があって、「起承転結というシナリオの構造自体が長すぎる」という意見もあります。なので、私は、早めに読者の気を引くためにも、承の部分で何かしらの出来事が起こる方が効果的だと思います。

例)Aが普段通りの日常を送っていたある日の夜、突然の家族会議が起こった。
 父方の祖母が足を骨折してしまったそうだ。もう高齢の父方の祖父母の面倒を見るために、引っ越しを検討している、と父にAは言われた。
 Aの頭の中がぐわんぐわんと揺れ動く。
 引っ越し? どんな所へ? 今までの友達はどうなる? これからの進路は?
 様々な不安がAの脳裏をよぎり、家族会議が起こった夜はまともに寝ることができなかった。

4.転


 転の部分は、主人公になにか変化が起きる部分です。
 「承の部分で起きたイベント」の「アンサー」の部分だと考えると、小説を書くネタを考える時にすっきりするのではないでしょうか。
 私の個人的な意見では、転の部分が小説で最も大事だと思います。なぜなら「主人公に“変化”が起こる」部分だからです。変化はシナリオの一番の重要な部分です。起で説明した、「元々の主人公像」から、「別の主人公像」へ変わっていく。その過程を書くのが転の部分だと私は思います。

例)祖父母の家への引っ越しは現実のものになった。
 祖父母の家へは夏休みなどにはしばしば訪れることがあったが、住むには家が古すぎる気がした。
 新たな学校は田舎の学校だった。周囲を見回しても田んぼぐらいしかない。ただっ広い校庭くらいしか取り柄はなかった。
 今までの友人や慣れた環境から引き離される形になったAは、新たな学校で友人ができずにいた。新たな学校はクラスの人数も少なく、幼い頃から幼馴染という人々の集団で、Aが新たにそこに参入する、というのは難しい話だった。
 今までクラスの中心人物的存在だったAは、新たな学校では教室の隅で面白くもない小説を読むことが多くなった。家でも家族との会話が減ってしまう。
塞ぎこんだAは結局、カウンセリングを受けにいくことになった。

5.結

 結の部分は「エピローグ」の部分です。
 起で「元々の主人公像」を説明し、承で「主人公にイベント」が起こり、転で「主人公に変化」が起きる。そして、結では「その主人公がどうなったか」を説明する。これでひとつの物語ができあがります。
 小説ではない普通の文章で考えると、起は「現状の説明」、承は「説明したいこと、現状からの変化」、転は「承で説明したこと、起こったことがどうなったか」、結は「転に対する感想」を意識して書くと文章がまとまるのではないかと思います。

例)たまたま幸運にも、新居から30分圏内の心療内科にカウンセラーがいた。
 そこへカウンセリングを受けに行ったAは、はじめは学校への愚痴をぽつぽつとカウンセラーに話す程度だったのだが、その愚痴は学校のことから、意外にも家族への愚痴へ変わっていった。
 自分の意見を聞かずに勝手に引っ越したこと。父が母の意見を軽んじているように感じること。母も本当は自分と同じように祖父母の面倒を診るために引っ越すのは嫌だったのではないかと思っていること。
 それらを話している内に、Aは自分が新たな学校自体に不満があるのではなく、家族への不満の反動から新たな環境を受け入れられずにいるのではないかと思うようになった。
 そう考えると、今まで足が重かった学校への登校も、むしろ不満を抱えている新居という環境から逃げることのように感じてきた。次第に今まで重かった学校への足取りも、少し軽く感じるようになる。
 そんな意識の変化が起こってから数日後、休憩時間に初めて学校のクラスメイトに話しかけられた。
「おはよう。なんか暗い印象があったけど、最近ちょっと話しかけやすくなったね」
 そう話しかけられて、Aは気恥ずかしさで少し俯くが、確かに「ありがとう」と返答することができた。
 それ以来、次第にAもクラスメイトに打ち解けていき、新たな環境での生活に前向きな意識を持つようになれた。

……以上です。いかがでしたでしょうか?
私なりの起承転結の考え方をまとめさせていただきました。
 通所している際に、起承転結は大事、ということを他の利用者さんにお話しさせていただく機会があったので、いつかまとめたいなと思っていたことを書くことができてよかったです。
 自分の中でも視界がすっきりとして、よかったなと思います。
 お話の構造には、今回説明した起承転結以外にも、序破急という考え方や、視聴者を退屈させないことを一番に意識した映画のシナリオのような書き方などもあります。自分に合ったシナリオの構造を勉強するのも、より良い小説・文章を書けるようになるコツだと思います。
 もし、次回があれば、次は「キャラクター」について話したいと思います。
 ここまで読んでくださってありがとうございました。

亜子


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?