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成長を写して
あいいろのうさぎ
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八月一日。天候に恵まれた今日は、きっと写真にも青空が映えることだろう。クーラーの効いた車から流れる景色を見るのは気持ち良かったけれど、子供たちは早々に飽きてしまったらしい。いつもならアニメでも見せてあげるところだけれど、今日はせっかくなので持って来たアルバムを見せることにした。
「え? これがお母さん?」
「それは奈津ちゃんだよ! お母さんは真ん中!」
甥の俊太と姪の風花が、まだ彼らと同じくらいの年だった私たち兄妹の写真を眺めて、あーだこーだと話している。風花の言うように姉は真ん中で、右端にいるのが私なんだけど……しばらく黙っておいた方が面白いかもしれない。小さい頃、姉と私はそっくりで、違いと言えば身長くらいだった。もちろん小さい方が私だけれど、今は私の方が背が高いので俊太には少し難しい問題かもしれない。
二人が頭を悩ませている間に目的地に着いた。
「正解はおばあちゃんに聞こっか」
姉が言うと二人は「早くこれ外して!」とチャイルドシートを叩く。手早くシートから解放してあげると、別の車で来ていた彼らのおばあちゃんの元へ走り出す。
「おばあちゃん答え合わせー!」
それだけ言われたので母は顔に疑問符を浮かべている。でもアルバムを開いて持って来たので察したらしい。一人一人名前の答え合わせをしては、俊太と風花が「えー!」とか「ほんとう!?」とか素晴らしいリアクションをしている。
「奈津、カメラのセット手伝え」
兄に言われて私はもう一冊のアルバムを取り出す。これは風花が生まれてからの写真が載っているものだ。
「もうちょっと近くて良いんじゃない? あとちょっと左」
写真とカメラの液晶が映す景色とを見比べて指示を出す。我が家では八月一日に毎年家族そろって写真を撮る習慣がある。地震の中でも倒れなかったという大木にあやかりたくて私のひいおじいちゃんが始めたことらしい。できるだけ構図が同じになるように撮ると、家族の成長が分かりやすくてなかなか面白いのだ。
「まあ、カメラの位置はこんなもんでいいか。じゃあ全員並べー!」
兄の合図で俊太と風花が駆け出す。私は母からアルバムを預かって車に戻してから並ぶ。左から父と母が並び、兄のスペースが空いて姉、そして私。俊太と風花は姉の前に並ぶ。
「よし、良い感じ! じゃあ撮るぞ!」
兄がタイマーをセットして走って来る。いつからか写真用の笑顔を作るのは苦手になっていたけれど、甥と姪がいると不思議と自然に笑える。
カシャっと音がして俊太と風花がカメラの方へ走り出す。兄がそれを追いかけて写り具合をみんなでチェックする。
この写真も、いつか俊太たちの大事な思い出になるといい。
あとがき
目を通してくださってありがとうございます。あいいろのうさぎと申します。以後お見知りおきを。
「成長を写して」は「写真の中の風景」をお題に、「熱い以上に温かく」という作品に出てきた家族に再登場してもらった作品です。お題から同じ場所で写真を撮り続ける家族が思い浮かび、あの子達がいるじゃないか!
と出てきてもらいました。今作をお楽しみいただけていれば幸いです。 またお目にかかれることを願っています。
あいいろのうさぎ