夕づつ窓辺の乙女の装い クラシカルロリィタあなたこなた
神宮前で逢いましょう
【夕づつ窓辺の乙女の装い ~クラシカル・ロリィタあなたこなた~】
ロリータ・ファッションの中にも何種類ものジャンルがあり、それぞれイメージ・ソース(要は連想されるモチーフや文学作品のこと)も精神性も異なるが去年通して、私は“甘ロリ”一択でお洋服やグッズを集めてきた感はある。
ピンクや赤、苺やアリスなど『ロリィタと言われてまず、想像されるであろう装い』でアニメなどでピンクカラーのロリータ・ファッションを纏ったキャラが出たときは甘ロリがモデルと思って間違いないかと思われる。
この所、通販サイトやインスタなどでブランドのお洋服を眺めては、
「素敵だなぁ……」
とため息をついているブランドがある。
Innocent Worldという名前のメゾンで、公式サイトのフォントや通販サイトのお洋服のディテール紹介などもレースのパターンや縫製までこだわって作られているのがよくわかるのだ。
このブランドが牽引して来たジャンルに、“クラシカルロリータ”というものがある。
甘ロリよりもう少し落ち着いた…ヨーロピアン・アンティークがお好きな方はその装いがグッと刺さるであろう。
赤毛のアンや小公女、大草原の小さな家などの名作児童文学の小さなヒロインの装いや古い西洋の探偵映画に登場する淑女たちのファッションを想像して頂けると分かりやすいかも知れない。
日本だと明治~大正辺りの文学を好んで読み、よく『ヨーロッパの美しい村』などの本を眺め…西洋の田舎というのに憧れがわずかながらある人間なのでクラロリ(略称である)に興味を持つのは必然だったのかも知れない。
私の大好きな森茉莉の『甘い蜜の部屋』のヒロイン・モイラは何となくクラロリを着たおかっぱ頭の少女を想像しているし。
事実、そこに分類されるブランドのお洋服を見ると、
「英国の花園」
と、ヴィクトリア朝時代の令嬢を連想させるヘッドドレスにレース使いは控えめだが気品とかわいらしさを併せ持っているものや、秋口には、
「金木犀ドレス」
という可憐な小花がひらひら落ちるようなプリントが施された繊細な一着まである。
また、レースにも一家言あるのだろうブランドのドレスの紹介文には、
「1900年代、フランスの令嬢たちのドレスにあしらったアンティーク・レースを再現した最高級のものです」
や、
「“エレーヌローズ”という薔薇を象った美しいレースです」
など、ぜひとも手にとって一本の糸で織られた宝石のようなそのレース達をそっと触れてみたいと思うのだ。
この“乙女の洋装”と呼びたい装い、恐らく…いや確実に横浜の馬車道や山手の景色やカフェとはかなりシンクロするだろう。
一本道を曲がった先にあるみなとみらいにも、思いのほか、
「初めて世間の賑やかな景色を知ったやんごとなきお嬢さま」
と、10年前に忘れかけていた学園アニメでよく見かけた構図になるだろうか。
冗談はほどほどにして……5月のバラの季節には白いボンネット(ディズニーのアリスに出てくるオイスターの帽子を想像してほしい)にクラシック・ドールのようなストンとパニエなしで着られるお洋服に、ドライローズを模した豪華な花冠をボンネットにかぶせてフレンチ・カントリーめいた装いで歩いてもいいし10月に銀杏が街道を金色に染めるころには薔薇のコサージュがポイントのクロッシェ(英国王室の女性や皇族の方がかぶっているタイプのクラシカルな型の帽子)にレース使いの繊細な、上品な色合いのワンピースを纏い探偵モノ(文学でもアニメでも)の助手兼ヒロインになりすまして歩きたい。
似合うカフェはこのnoteにて載せて頂いている『横浜喫茶あなたこなた』でも書いたCAFE de la PRESSEという日本大通りと(実質)直結している古いビルにあるパリの新聞記者が集い議論に花を咲かせる古き良き時代を思わせるカフェや元町にあるパティスリー パブロフというパリの宝石店のようなロビーにケーキやクグロフが美しい襞を描いたカーテンが額縁になっている窓枠から覗けるカフェなんかもいいなぁ、と思う。
横浜の重厚な名建築ホテル、ニューグランドのロビーラウンジは恐らく去年にTVで見た。
噴水が真ん中にあり、取り囲むように丹念に整えられた芝や季節の薔薇が咲くパティオ(中庭)を白い大窓から眺めながらお茶や食事を楽しめるようだ。
そんな光景がクラシック音楽をバッグに紹介されたとき、
(日本のTV、もっとこういうのを流せ!!!)
とその歴史の年輪を積み重ねた美しさを前にして、いささか競馬場のオジサンじみた綺麗じゃない事を考えた辺り、私もいささかスレたのかも知れない。
ここのロビーでは、アフタヌーンティーも提供されているようでこれを書いている1月現在は苺のアフタヌーンティーが楽しめるようだ。
クラロリのワンピースがよく似合う場所だろうなぁ、といつの日かここに
古き良き英国の淑女のような心持であの石畳を歩いて訪れる事が密かな野望である。
執筆 むぎすけ様
挿絵 麻菜様
投稿 春原スカーレット柊顯
©DIGITAL butter/EUREKA project