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かなしみさえ咲くように
あいいろのうさぎ
クラスメイトを好きになってしまった私がいけないのかしら。いいえ、きっと“好き”自体は罪ではなくて、それが叶わなかったからこんなにも辛いの。
告白する前の私が楽観的だったのかしら。あなたは絶対私が好き、なんて思ってなかったわ。でも絶対に気持ちが伝わらないと思っていなかったのも確かよ。きっと不安より期待の方が強かったから、私はあなたに想いを伝えてしまったのね。
あなたは私の想いを砕く時ですらとても優しかったわ。泣き出す私に何回も何回も「ごめん」と言ったの。私はその声ですら愛しくて、同時にこの想いが叶わないことを認めないといけなくて、辛さが涙になってとめどなく溢れてきたわ。
今でもあなたを見ていると心が酷く痛むの。学校に通っているのだから、あなたを見ない日はないわ。それどころか、私は心が痛むのを分かっていてあなたを目で追ってしまうの。心が痛むのと同時に、甘いきらめきが私の心を満たすから。そのきらめきは傷に沁みてしまうと分かっていても、目が離せないの。
こんなことなら最初から“好き”なんて感情がなければ良かった。
何かの歌で聞いたような言葉が心の中から浮き上がってしまって、思わず自分を笑ってしまったわ。だって、初めてその歌を聞いた時には『こんなに幸せな感情がなければ良かったなんて、そんな風に考えたくはないわ』と思っていたのよ。
でも、あなたにフラれたら、一瞬で考えが変わってしまった。
こんなに辛いなら、こんなに虚しくなるなら、“好き”なんて最初からなければ良かった。
そうしたら、きっと私たちはまだ友達のままでいられたのよ。告白をしてしまってから、私はあなたとぎこちなく接することしか出来なくなって、段々疎遠になってしまった。私が“好き”でさえなければ、告白なんてしなくって、今だってあなたの隣で笑っていたはずなの。
……でも、もし“好き”じゃなかったら、私とあなたは関わらなかったかもしれないわね。
その方が幸せだったのかもしれないけれど、私はやっぱりあの輝かしい思い出を捨て去ることはしたくないの。あなたと過ごして笑い合った、今となっては直視できないほど眩しいあの時間を。
私はあなたが好き。
きっとそれを今すぐ変えることは出来ないわ。傷つく覚悟を持って好きで居続けることの方が、まだ易しいかもしれない。私にとっては、“好き”を手放すのはそれくらい恐ろしいことなの。
でも、変わらなければいけない。私のために、あなたのために。
あなたとの思い出を他人事のように眺められるようになる日は随分遠いと思うわ。けれど、いつか出来るようになって、あなたを好きでいて良かったって、そう思える日が来たら、それはとても素敵なことだと思うの。
あとがき
目を通してくださってありがとうございます。あいいろのうさぎと申します。以後お見知りおきを。
「かなしみさえ咲くように」は「切ない花言葉」というお題から生まれた作品です。執筆にあたり、切ない花言葉を集めました。悲しき思い出・失われた愛・暗い悲しみ・別れの悲しみ・傷つく心をピックアップし、想像を膨らませてできたのが今作です。
お楽しみいただけていれば幸いです。
またお目にかかれることを願っています。