カメラのデザイン。
家にあったα7000はミノルタのオートフォーカスカメラだが、多分20年近くは使われていたはずで、そう考えるとかなり丈夫なカメラだったのだと思う。僕が生まれあとに親父が購入しているので、それを大学生となった僕が使うことになろうとは思いもしなかったことだろう(カメラが)。
当時、このカメラのデザインはどんなふうに受け止められていたのか、と言うことを考えてみる。角ばったカタチは以前のフィルムマニュアルカメラと共通するところだが、ボタンの多さや、鉄ではないガワなどは、それまでのカメラと一線を画す。もしかしたら近未来的な印象を抱かせたかも知れない。肩の液晶なんかは特に斬新だったことだろう。
今の目線で見てみると、このカクカク感はけっこう悪くない。だが、好みかと問われれば、いや、違うなあ、と答えそうだ。古びたデザインで、何と言えばいいか、昭和のデザイン、70〜80年台のポップデザインと、当たり前だが通じるところがある。うん、当たり前だが。プラスチッキーでシャッターボタンまでカクカクしているのは、どこか当時のアニメや特撮で出てくるような機械やコンピュータを思い浮かばせる。なんかこんな感じ、で作り上げた絵とでも言えばいいか、それは先に述べたように近未来的なイメージを具現化したカメラだ。なんせオートフォーカス、プログラム露出、自動巻き上げ、カメラがあれこれやってくれるのである。そうした先進性をデザインに落とし込んだのがこのα7000だったのだろう、そう勝手に想像してしまう。
バカ売れしたと聞くし、そんなに余裕のある家庭ではなかった我が家にも一台あったくらいだし、写真部の後輩女子がこれを首からさげていて、マニュアルカメラを使っていた先輩が新人類が来た!と驚いたというエピソードを聞くらいだから、本当にショックだったのだろうと思う。当時に僕がいたなら、僕も目を輝かせて手に入れようとしただろうか。
しかし、今。それよりは、僕はこの時期以前か、ほぼ同時期にもあったであろうマニュアルカメラのデザインの方が好みだ。
そしておそらく多くの人が、そう考えているのではないかな、と思う。FUJIFILMのX100シリーズの人気はその最たる例だ。
さて、ニコンがZfを発表した。すでに供給不足が公式から通達されている。このマニュアル一眼レフスタイルのカメラは、それだけで手に入れたい気持ちにさせてくれる。このカメラは、ポップでキッチュなスタイルの時代にあって、その軽快さは持ちながらも、鉄の重みを感じさせるFM2を元にしているらしい。うーんかっこいい。価格的にもフルサイズで機能も満載ということを踏まえればお安いと言えそうで、何よりこのスタイルのカメラでフルサイズとなればライカ以外だとこれしかないことになる。むしろFUJIFILMのデザインが、だんだんとレトロから離れつつあることを感じる今となっては、唯一無二の存在だと言えそうだ。
ところが、なんとなく違和感もあった。なんだろう、と考えていた時に、Z fを多少批判的に語る動画を見て、なるほどと思ったことがある。
ボディの比率だ。
FM2は横に長い。それと比べるとZfは横の長さが短い。撮像素子のフォーマット、16:9と4:3くらい違う。比率が違えばスタイルの印象も変わってくる。
だから、FM2をインスパイア、と言われても、うーん、そうかねえ、と思ってしまう。細部が似ていたとしても、それはFM2ではないよね、と思う。オマージュとかインスパイアと言うのであれば、やはりボディの比率にこそこだわって欲しいと僕も感じた。
そう言えばと思う。
ライカM240はフィルム時代より4ミリ分厚い。それがどうしてもしっくりこないという人がいる。実際に握るところだから、なおさらそう感じるだろう。たかが4ミリされど4ミリなのだ。
ニコンのDfはかなり心惹かれたけれど、触るたびにコレジャナイ感が湧いてきた。それもまた、ボディの分厚さ、大きさに起因していた気がする。昔のマニュアルカメラはもっと小さかっただろう、と。でも、それでもなんとなく惹かれてしまう自分がいて、Canonから乗り換えようかと何度思ったことか。
Z f cはその点良くって。でも持ってみて意外なほどの軽さがあって、ニコンユーザーだったとしても買わないだろうなと感じてしまった。デザインは最高にかわいいし、実際握ってみてこれはきいと思ったけど、デザインは手にした時の重さも関わってくるのだ。小さいけれどずっしりくる、と言うのは往年のフィルムマニュアルカメラの持つ特性だと思う。その感覚を持っている人ほど、カメラの持つ質量、密度は大切だと思う。
(軽い方が楽でいいんだけど。)
こんなふうに、往年の名機に寄せたカメラは、機能との関連でどうしたって違和感が残るものなのかもしれない。しかし、なんだかんだZfはカッコいい。FM2をインスパイアとかそんなの抜きにすれば、比率的に不恰好というわけでもないし、とりあえず見た感じかなり良さげな質感を持っている。重さもある。それは可搬性においてマイナスではあるけれど、やっぱり見た目と質量の関係はしっかり釣り合うようなものであって欲しい。そういう点ではZf、かなり人気が出そうだ。
絶対に売れないだろうなと思うのだけど願わくば、FM2のカタチそのままでデジカメにしてくれんかなと思ったりもする。EPSONが出していたレンジファインダー機のような無駄にこだわったカメラなら、マニュアルレンズの母艦として手に入れたくもなる。
それから、もう一つの懸念は、このレトロラインが続いていくだろうかということもある。この機体に合わせて、似合うオールドレンズを手に入れてみたものの、数年後に後継がでませんとなるとなんだか寂しい。
息の長いシリーズになってくれればいいな、と思う。そしたら自分もとち狂ってまたマウントを増やしてしまうかも知れないし、再び恐ろしい勢いで値上げするライカの代わりにもなるかも知れない。
やったれ、Nikon。