カネは、稼ぐより使うほうが難しい
銀行のローンは、固定金利のほうが変動金利よりも目先の利率は高くなっている。これは固定金利の場合は、市場金利が変化しても金利が変化せず、金利の変動リスクは貸し手が負うことになるためだ。ファイナンス的な用語で言えば、固定金利が変動金利よりも高い分の差額は、金利変動リスクをヘッジするためのプレミアム(保険料)ということになる。
長いこと金利のない世の中が続いてきたため、いざ金利が上がり始めるとみんなどうしていいかわからず右往左往しているような感じがする。「変動金利」と言っているのに、変動とは下落のことしか念頭になく、金利が上昇するということはありえないと考えていたとしか思えないようなポジションを組んでいる人がたくさんいる。
私はだいぶ前から、金利の話になると前述の話をして多少無理をしてでも固定金利に借り換えろというような話をしてきたが、私よりも圧倒的に稼いでいる人たちはあまり聞く耳を持ってこなかった。あるいは話としては理解しても実際に借り換えるまでの行動を起こす人はいなかった。
日銀が利上げし、日経平均も大きく下げたときにはいろんな人からどうしたらいいんだみたいな連絡が来て面白かった。いまだにどの銘柄がいいかみたいな話をしているので、証券投資じゃなくて手元に現物が残るものだけにしろということは言っているが、それも実際に正誤がわかるのは5年とか10年のスパンということになる。私にそれがわかるようになったのも、アベノミクスがはじまった11年前の当時から、いまのような状況になることは予想されていたからだ。
11年前は私もまだ22歳で、理屈としてはアベノミクスのような金融緩和がただの緩和バブルであり、やがてインフレをもたらし円安になるということがわかっても、実際に金融政策として行われていることがそれほどひどいものなのか?という、権威に対する盲信というか正常性バイアスみたいなものもあった。30すぎて、実際に世の中で進行する現象と、理屈の上でどういうことが起こっていくのかということにはかなり時間的なギャップがあり、5年や10年の単位で変わっていくということがようやっとわかった。こういうのが年齢を重ねる意味というものだろう。
緩和バブルの恩恵でカネがたくさん入ってきても、それを維持するのは難しい。稼ぐよりも使うほうが圧倒的に大変だということだろう。
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