ドイツの減価するお金『キームガウアー』から学ぶ
Aging moneyのホットスポットで始まったキームガウアー(Chiemgauer)
ドイツの南東部キーム湖周辺50km圏内の「Chiemgau」地方で2002年に始まった地域通貨。
この近辺には、ミヒャエル・エンデの出身地やシルビオ・ゲゼルの理論を実践して大恐慌の1930年代に奇跡的な地域経済の復活に貢献した地域通貨ヴェーラ(WARA)やヴェルグル(Wörgl)(共に政府によって廃止)が利用された地域があり、Aging money(減価するお金)の実践が数多く行われてきたエリアでもある(参考:エンデの遺言「根源からお金を問うこと」)。
お金の本質について考える実践の場
贈与が循環の起点となるデザイン
シュタイナー教育を行う学校の寄付集めから始まったキームガウアーの最大の特徴は贈与が循環の起点となり、誰でも容易に贈与(寄付)のプロセスに関われるようにしていること。2022年現在、約300の寄付団体が登録されている。
減価することで、通貨の流通速度を加速して、地域経済を活性化させるだけでなく、自分自身でお金の使い途を選ぶことで、Common goodや長期的な経済効果に視野を広げ、地域雇用や公共インフラを外部環境の影響から守り、地域の持続可能な発展に貢献できるようなデザインが施されている。
また、寄付先の上位には、シュタイナー教育を行う学校があり、寄付されたキームガウアーは学生達に配布されるため、学生達が実社会の中でお金について学ぶための実践の場となっている。
キームガウアーの特徴
1キームガウアーは1euroに相当し、銀行口座と連携したカードでチャージし、チャージ金額に応じたキームガウアーの紙幣を受け取ることができる。
チャージ金額の3%は自分で選択した団体に寄附される。
6ヶ月毎に3%減価(2022年現在)するため、期限が切れた場合はスタンプを購入しないと、利用できない。
誰もが循環の担い手となる仕組みづくり
店舗がキームガウアーをB2Bや社員への給与の一部などに利用することができ、通貨の循環を促している。また、店舗は5%の手数料を払って、ユーロに換金することもできる。換金手数料の3%が寄付の原資として利用されている。
キームガウアーの利用状況
2022年現在の利用状況は以下の通り。
利用者 約4000人
店舗数 約400
寄付先 約300
流通金額 約2.5億円(2021年1月1日 - 2022年1月1日)
寄附金額 約700万円(2021年1月1日 - 2022年1月1日)
(HP(Chiemgauer-Statistik)より引用)
キームガウアーの今とこれから
キームガウアーは紙幣の発行から始まったが、2006年にカード決済できるようになり、現在はアプリも開発中。併用可能となっている。
その理由は、紙幣に使い慣れた人(高齢者等)を取り残さないこと、
紙幣の循環やスタンプによる減価の仕組みを見て、手にとって、体感することで複雑なAging Moneyへの教育的な理解や美しい紙幣に対する愛着を大切にしているため。
現在、QR決済できる電子通貨(スマホアプリ)の開発を行っていて、eumoアプリのSNS機能やギフトリング、コミュニティ通貨を作るプラットフォームなど、いいね!をたくさんもらいました!
そんな情報交換のレポートがChiemgauerのHPにも掲載されているので、ドイツ語ですがよかったらどうぞ〜
eumoとの共通点は、贈与の循環を体験するためのツールとしての通貨
キームガウアーは、ユーザーへの割引や得点などの経済的メリットはなく、誰もが贈与の循環に参加することで、地域、共助、コミュニティ、Common goodにフォーカスした持続可能な地域の発展に繋げることを、この通貨の価値として大切にしている。
贈与(ギフト)の循環を体験してもらうためのツールとしてデザインされていることが、eumoとの共通点であり、一番の共感ポイントでした。キームガウアーの運営メンバーと話し込んだ時も同じこと考えてる人たちがドイツ/日本にいたなんて!とお互いに感嘆しました。
eumo加盟店の説明会で必ずお伝えるす共感コミュニティ通貨eumoに込めたギフトのコンセプトは、人、環境、社会のために真っ正直に事業をされている心ある事業者(加盟店)の方を応援する手段として、ユーザーからのギフトを贈る(日々の生活で使うお金を小額のクラウドファンディングのように使ってみる)ことです。
ギフトはしてもしなくてもいいし、eumoを使うか否かもユーザー自身が選べるようになっていますが、eumoアプリという選択肢があることで、各自がお金の使い途を考え、ギフトの循環に参加できる機会を提供したいと考えています。
学びと実践の繰り返しの中で、自ら成長すること
キームガウアー創設当初には、経済合理性から考えると贈与というコンセプトは成立しないのではないかといった意見もある中で、教育事業への投資の性質もあり、自分達自身が成長するための実験ツールとして始められた(キームガウアーの創設メンバーであるChristian Gelleri論文より)、そして実際に始まってみると、贈与の循環に参加してくれるユーザー達によってキームガウアーは20年近く続いており、今もなお、教育のための実践的な地域通貨として、地元の学校や世界中から多くの人たちが学びにやってくるほどのrole modelとなっていることは、同じ贈与のコンセプトをもつ後輩のeumoにとっても本当に心強い存在です。
あらゆるモノやサービスが等価交換の対象となってしまった現代において、ギフトの循環(受けとること/贈ること)は容易な概念ではなく、この点においては、eumoを利用されている皆さんの中にも、戸惑いや葛藤があることをよく聞きます。
一方で、自然にギフトを受け取ってくださる加盟店があります。
その方々から感じるのは、受け取っている以上に多くのギフトを普段から社会に贈っていて、ギフトのフローの中に存在しており、自らギフトを受け取る責任を全うしているようにも見えること。そして、必ずといっていいほど、そういった加盟店の周りにはギフトの循環に参加する利用者が集まってくるので、ギフトの循環を体験する機会を提供してくださっていると思います。
キームガウアーの寄付先の上位も教育機関(シュタイナー教育を行う学校)ですが、eumoのもう一つの柱であるアカデミー事業の中にもお金の本質を考える教育パートがあり、循環的な世界を醸成するためには、それを体感すること、理解している人がどれだけコミュニティに存在するかが鍵となると考えています。
実際に、アカデミー卒業生がコミュニティ通貨の発行主体になったり、様々な形でギフトの循環を実験/実践してくれていることが未来への希望だと感じています。
等価交換の世界からギフトの循環へのシフトは一足飛びにできるものではなく、心の成長と実社会での体験の中で少しづつ育まれていくものではないかと思います。
心の成長をサポートするeumoアカデミーとお金という目に見える形で贈与の循環を体験できる共感コミュニティ通貨eumoを通じて、これからもみなさんと共に成長していきたいと思います。
20年遅れて始めたeumoだからできることを磨く
減価するお金の仕組みを実践してこられた先人の長い歴史の歩みと比べると、共感コミュニティ通貨eumoの歩みは、まだまだ小さな一歩ではありますが、テクノロジーの進化により、今だからこそできる通貨の形があるのではないか?と開発メンバーは日々模索しています。
通貨プラットフォームとしての技術的な進化はこれからも大切にしたいことでありますが、それ以上にこのプラットフォームを利用して、コミュニティでの新しい循環の形を模索してくれているコミュニティ通貨仲間が拡がっていくことが、共感コミュニティ通貨eumoのプラットフォームとしての価値になると考えています。
ギフトの循環という選択肢がコミュニティをさらに豊かにしてくれるのではないか?という仮説をこれからも関わってくださる皆様と共に楽しく実証していきたいと思います。
eumoでは今後とも共感が循環する社会の実現に向けて活動してまいります。
共感コミュニティ通貨eumoの詳細はこちら。
共感コミュニティ通貨eumo加盟店にご興味のある方はこちらより、加盟店説明会にご参加ください。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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