疫学調査とは何か
感染症関連のニュースになると「疫学調査」という言葉をよく耳にしますが,これはいったいどんな調査なのでしょうか。私たちもデマのような情報に踊らされることなく,最低限の知識は身につけた上で冷静に対処したいものですね。
今回は,疫学調査について自治医科大学が発表している資料や国立感染症研究所の感染症危機管理研修会の資料をもとに簡単にまとめてみたいと思います。
疫学調査とは
疫学調査(疫学研究)とは,人間の集団を対象としてさまざまな病気の広がりや頻度,原因または分布に影響する因子)を統計学的に研究し,病気の予防や治療方法を探る学問・研究のことです。 重要な医学研究のひとつであり,健康調査とも呼ばれるそうです。
疫学調査は,感染症対策ということだけではなく,私たちの健康の改善や向上に欠かせない情報を提供するものであり,疫学調査なしに公衆衛生上の対策を立てることはできません。
疫学調査の目的
疫学調査の目的は主に以下の3つに分類できます。
・集団発生の原因究明
まずは発症・感染拡大の原因究明が先決です。原因が分からなければ対策や予防法を確立することもできません。
・集団発生のコントロール
原因がわかれば,感染の拡大を阻止するか,あるいは少なくとも遅らせることができます。ピークの時期をコントロールすることができれば感染の拡大を最小限に抑えることも可能になるでしょう。
・将来の集団発生の予防
今後同じような感染症が発生した際に想定される事態や対処方法を予測し,データとして蓄積しておくことは極めて重要です。
疫学調査の結果からわかること
疫学調査を行うことで,対象となる病気にかかっている人の数,また病気にかかりやすい人の性別・年齢・ 職業などがわかってきます。それ以外にも,病気にかかりやすい人の体質・生活習慣・生活環境を知ることができるので,その病気に対する適切な予防法を知ることができるそうです。
それらのデータをもとに,感染症が拡大しているときや,病気にかかったときに,より適切な治療法を確立することやその後の見通しを立てることができるようになります。病気の予防・治療はもちろん,健康の保持・増進にも役立つものだということができるでしょう。
調査方法について
疫学調査には様々な調査方法があるそうですが,いずれも人間の集団を対象としている点では共通しています。
・横断調査
横断調査とは,多くの人々を調査することで,病気の頻度やどんな人がどんな病気になっているかを明らかにし、その調査結果から病気の発生に関する仮説をつくるものです。
・コホート研究
コホート研究とは,多くの人々を数年から数十年間追跡し,どんな人がどんな病気になりやすいか調べるものです。長期的な研究を前提とした調査方法だといえます。
・症例・対症研究
症例・対照研究とは,ある病気にかかった人々とそうではない人々を比較して,過去に病気にかかる原因となりそうな出来事があったかどうかを調べるものです。
・具体例
自治医科大の資料では「糖尿病実態調査」と「インフルエンザと脳症」という2つの調査例が紹介されています。インフルエンザなどの感染症だけでなく,糖尿病などのいわゆる生活習慣病も調査対象ということが分かると思います。特殊な調査ではなく,幅広い病気を対象とした調査だということですね。
まとめ
今回はニュースなどで良く耳にするけれど,何のことだかいまいちわからない疫学調査についてまとめてみましたがいかがだったでしょうか。未知のものを相手にしていると,不安が増大します。私たちも可能な範囲で正しい知識を手に入れ,冷静に事態に対処していきたいものですね。
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