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星野実『漫画アシのABC総集編その1』を読んだ

星野実『漫画アシのABC総集編その1』を読んだ。

2010年ころの同人誌だが、すごい……4コマ漫画でアシスタント目線から漫画業界を描いているが、表紙に『ブラック会社も裸足で逃げ出す業界へようこそ』とか書いてある。ヴォエッとなる。

内容は基本的に実録漫画、暴露漫画だ。実名は出ておらず、登場人物はパンダさんとかクマ子さんとハートフルなのだが、どっちかというとジョージ・オーウェルの『動物農場』に近い。動物の世界でも人間の世界でもブラックはブラックなんだよ! 辛いものは辛い!

 表紙から主張されている通り、そこかしこでブラックなやりとりが見え隠れする。漫画家が指示した〆切(ここではアシスタントの出勤時間を示す)の日にちが木曜→金曜→月曜にズレていったり(つまり土曜日や日曜日のスケジュールも変更)、泊まり込みのアシスタント先で寝ることになったら、よそさまのお宅で眠るのに神経使って寝れなかったエピソードが参考になる。以前はマイナンバー制度に絡めた総集編を読んだのだが、今回はアシスタント業務の全般が槍玉に挙げられる

ちなみに読んでいて一番ヴォエッとなったのは、アシスタントをやめて就活を始めた人の話。面接までこぎつけたはいいものの、「好きなことやってたのになんで辞めちゃったの?」と面接官にいわれ、結局落ちてしまった。なんで面接官はそっちの方向に話題を持っていくの? って思ったが、世間としてはアシスタントをやめた=好きな事も長続きしない=雇う価値がない、というところに結びつくらしい。随分前の話だが、この人が無事に就職できるよう願ってやまない。

アシスタントには他の職業にも共通する、臨機応変さや違う環境にすぐさま適応する能力が求められる。エピソードで面白かったのは、アシ先の漫画家が一日一食生活だったので、自分用にアメやガムを常備するようになった話がある。アシにも生活を分けて欲しい……! ちょっとおもしろいのは、漫画だけでなくドラマや映画とかの若干違う路線をチェックしておくと、「アレみたいな背景をお願いしたい」や「あの映画の後半シーンの演出、できる?」という漫画家とのやりとりができるようになることだ。アシスタント道でも芸は身を助ける……

ちなみに小説家・記者は他の業種に比べて(政治家や芸能人など)平均寿命が短いという話を聞く。座業は姿勢が良くないから、座りっぱなしの仕事だと内臓の負担が強めなのかな……漫画家とかイラストレーターってどうなんだろう……と思っていたら、漫画業界でも平均寿命は他と比べて短いと記してあった。適度な運動や栄養、睡眠などを環境と相談しつつ、できればきちんと取ってほしい。

漫画を読み終えた。全体的にヴォエッとなるエピソードが多かったが、ある意味漫画業界のしんどいエピソードをズバズバ書きまくっているので、漫画家やアシスタントを志す方ならば「この辺は先んじて準備しておこう」とか「こういう問題がありえるならこの対策が立てられるな」という点で面白いかもしれない。なんか防災マニュアルみたいだな?

そして何より世間は世知辛く、世間はアシスタント一人を簡単に追い込んでいく……追い込まれすぎないように個々人は逃げ場を作ったり、対策を練らないといけない……と思いながらページを閉じた。参考になるのでまた他の本を読みたい。

《終わり》

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