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『モンテーニュ逍遙』〜『随想録』へのいざない〜

祖父関根秀雄の旧著『モンテーニュ逍遙』が、新版として刊行されました。(2024年7月2日)

関根秀雄著『新版 モンテーニュ逍遙』(国書刊行会)


モンテーニュ Michel de Montaigne, 1533-1592 は16世紀フランスに生きた人で、『随想録』(エセー、エッセー)という作品を残しています。「エセー」 (essai) は元来、何かを試すことを意味するフランス語ですが、この作品をきっかけに「エッセイ」(随筆)という大きな文学ジャンルが発展したことは、ご存じの方もいらっしゃるかと思います。

祖父は昭和10年(1935年)に『モンテーニュ随想録』の題名で日本語で初めての全訳を出し、亡くなるまでモンテーニュの研究と翻訳に心血を注いでおりました。『モンテーニュ逍遙』はそんな祖父の晩年の著作です(昭和55年に出版)。「逍遙しょうよう(逍遥)」は、あちこちぶらぶらと歩くこと、悠々自適して楽しむこと、などを意味する語です。祖父はこの題名を殊のほか気に入っておりました。

本書では東洋思想との比較パラレルだとか、モンテーニュは思想家であるよりも芸術家、詩人であったことだとか書いておりますが、本書で一番に伝えたかったのは《とにかく『随想録』を読んでみてください、願わくば、モンテーニュを生涯の友にぜひ加えてください》という、この一言に尽きるかと思います。

10年前(2014年)には伯母の尽力で、遺稿にもとづく『モンテーニュ随想録』の新版(増補決定版)が出ておりますが、今回の『モンテーニュ逍遙』刊行(紙・電子両方)に合わせて、『モンテーニュ随想録』の電子書籍版も出ております。

関根秀雄訳『モンテーニュ随想録』(国書刊行会)


『随想録』は、何の予備知識もいらずに手に取ることができるほか、人生設計に悩みの多い若い頃はもちろんのこと、ある程度人生経験を積んでから読んでも一層味わい深く、心に刺さるなどと言われます。祖父の著作をとっかかりに、みなさんにもモンテーニュを読んでもらえたらとても嬉しいです。

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『モンテーニュ逍遙』は、序章と終章を合せて全部で十三の章で構成されています。今後、章ごとに記事を立てて、本書のなかで気に入ったところ、気になったところ、多少補足があっても良いかもと思ったところなどを抜き書きしていこうと思います。ほんの少しでもみなさんの読書のお役に立てたら幸いです。


*『モンテーニュ随想録』からの引用表記は、『モンテーニュ逍遙』に記載の凡例に従っています。


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