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『モンテーニュ逍遙』冒頭の引用
逍遙学派はすべての学派の中で最も社交的であるが...
『随想録』第2巻第17章「自惚れについて」からの引用。
逍遥学派(ペリパトス派)école péripatéticienne ... アリストテレスが創設した古代ギリシアの哲学者の一派。 回廊(ペリパトス)を散歩(逍遥)しながら哲学論議を交わしたことからこの名があるらしい。
逍遙学派はすべての学派のなかで最も社交的であるが、以上両面〔霊魂=精神と肉体〕の合致による幸福をやしない、これをもろともにたのしもうと心がけることをもって、ただ一つ賢者にふさわしいこととし、他の諸学派がこの融合について十分に考慮せず、徒らに派をかまえて、あるいは肉体をのみ重んじ、あるいは霊魂にのみ傾いて、何れも同じ誤りにおちいったことをとがめている。彼らが人間を主題としながら人間をうとんじたり、一般に自然をその案内者と認めながら自然を遠ざけたりしたことをとがめている。
今、子ハ、大樹ヲ有シテ其ノ用ナキヲ患ウ。… 彷徨乎トシテ其ノ側ニ無為ニシ、逍遙乎トシテ其ノ下に寝臥セザル。…
『荘子 内篇』「逍遥遊篇第一」からの引用。
「いま君のところの大木は、役に立たんとこぼしているが、なぜそれを何一つない村里や、果てもなく広い曠野に植えて、ゆったりとそのかたわらに憩い、のびのびとその下に寝そべらないんだい。まさかりや斧で若木のうちに切り倒されもせず、何かに危害を加えられる恐れもない。何の役にも立たなくたって、気に病むことなんてまったくないんだよ。」福永光司・興膳宏訳(ちくま学芸文庫)
茫然トシテ塵垢之外ニ彷徨シ、無為之業ニ逍遙ス。
『荘子 内篇』「大宗師篇第六」からの引用。
「何思うことなく俗世の外に彷徨し、無為のいとなみに気ままに身を任せている。」福永光司・興膳宏訳(ちくま学芸文庫)
関根秀雄著『新版 モンテーニュ逍遙』(国書刊行会)
関根秀雄訳『モンテーニュ随想録』(国書刊行会)
福永光司・興膳宏訳『荘子 内篇』(ちくま学芸文庫)
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関根秀雄著『新版 モンテーニュ逍遙』は、序章と終章を合せて全部で十三の章で構成されています。章ごとに記事を立てて、本書のなかで気に入ったところ、気になったところ、多少補足があっても良いかもと思ったところなどを抜き書きしています。ほんの少しでもみなさんの読書のお役に立てたら幸いです。