『モンテーニュ随想録』の構成
『モンテーニュ逍遙』を読んでくださるみなさんへ
モンテーニュの『随想録(エッセー)』は、全3巻全107章で成り立っています(第1巻は57章、第2巻は37章、第3巻は13章で構成)。
たくさんの章がありますが、それぞれの長さはまちまちで、1〜2頁だけのもあれば、第2巻第12章のように200頁近くにも及ぶ雄編もあります。
一つ一つの章が「エッセー」(essai) という〈試み〉であり、これらが寄り集まって『エッセー』(Les Essais) という書物になっている、と捉えても良いかもしれません。
『随想録』は1580年に第1巻・第2巻が初版として刊行され(A)、その後1588年には第3巻も刊行されました。
モンテーニュはこのとき第1巻と第2巻に600に及ぶ増補を加えていますが(B)、その後も、加筆は晩年まで続けられました(C)。『随想録』の文中に(A)(B)(C)の標示が含まれているのは、これにもとづいています。
「全三巻を注意して読んでみると、案外各エッセーの排列には著者の細かい考慮が払われているように思う」(『随想録』第1巻第1章の冒頭解説(I・1・49)より)という考えにもとづいて、『モンテーニュ逍遙』ではときおり、『随想録』の構成について触れています。
以下、国書刊行会版『モンテーニュ随想録』の目次より抜粋。
随想録
読者に
第一巻
第一章 人さまざまの方法によって同じ結果に達すること
第二章 悲哀について
第三章 我々の感情は我々を越えてゆくこと
第四章 ほんとうの目あてがつかまらないと霊魂はその激情を見当ちがいの目あての上に注ぐこと
第五章 包囲されたお城の大将は講和の際その城を出るべきや否や
第六章 講和の時の危険
第七章 我々の行為は意志によって判断されること
第八章 無為について
第九章 嘘つきについて
第十章 弁舌には早いのも、のろいのもあること
第十一章 予言について
第十二章 勇気について
第十三章 王侯会見の儀礼
第十四章 幸不幸の味わいは大部分我々がそれについて持つ考え方の如何によること
第十五章 みだりに一つの砦を固守する者は罰せられる
第十六章 卑怯の処罰について
第十七章 或る使臣たちの態度
第十八章 恐怖について
第十九章 我々の幸不幸は死んでから後でなければ断定してはならないこと
第二十章 哲学するのはいかに死すべきかを学ぶためであること
第二十一章 想像の力について
第二十二章 一方の得は一方の損
第二十三章 習慣のこと及びみだりに現行の法規をかえてはならないこと
第二十四章 同じ意図から色々ちがった結果が生れること
第二十五章 ペダンティスムについて
第二十六章 子供の教育について
第二十七章 真偽の判断を我々人間の知恵にゆだねるのはとんでもないこと
第二十八章 友愛について
第二十九章 エチエンヌ・ド・ラ・ボエシの二十九篇の十四行詩
第三十章 節制について
第三十一章 カンニバルについて
第三十二章 神意をおしはかるには慎み深くすべきこと
第三十三章 生命をすてても快楽を避けること
第三十四章 運命はしばしば理性の道に合流すること
第三十五章 我が国の制度の一欠陥について
第三十六章 着物を着る習慣について
第三十七章 小カトーのこと
第三十八章 いかに我々は同じ事柄を泣いたり笑ったりするか
第三十九章 孤独について
第四十章 キケロに関する考察
第四十一章 名誉はなかなか人に譲らないこと
第四十二章 我々の間にある不平等について
第四十三章 奢侈取締令について
第四十四章 睡眠について
第四十五章 ドルゥの戦いについて
第四十六章 名前について
第四十七章 我々の判断の不確実について
第四十八章 軍馬について
第四十九章 古代の習慣について
第五十章 デモクリトスとヘラクレイトスについて
第五十一章 言葉のむなしさについて
第五十二章 古人のつましさについて
第五十三章 カエサルの一句について
第五十四章 つまらぬ小器用について
第五十五章 においについて
第五十六章 祈りについて
第五十七章 年齢について
第二巻
第一章 我々の行為の定めなさについて
第二章 酩酊について
第三章 ケア島の習慣
第四章 用事は明日
第五章 良心について
第六章 鍛練について
第七章 名誉的褒賞について
第八章 父の子供に対する愛情について
第九章 パルティア人の武器について
第十章 書物について
第十一章 残酷について
第十二章 レーモン・スボン弁護
第十三章 人の死の判断について
第十四章 いかに我々の精神は自縄自縛におちいるか
第十五章 我々の欲望は困難にあうと増加すること
第十六章 栄誉について
第十七章 自惚れについて
第十八章 嘘について
第十九章 信仰の自由について
第二十章 我々は何一つ純粋に味わうことがない
第二十一章 安逸無為をしりぞける
第二十二章 駅馬について
第二十三章 よい目的に用いられる悪い手段について
第二十四章 ローマの偉大について
第二十五章 仮病を使わないこと
第二十六章 親指について
第二十七章 臆病は残酷の母
第二十八章 何事にもその時あり
第二十九章 徳について
第三十章 奇形児について
第三十一章 怒りについて
第三十二章 セネカとプルタルコスを弁護する
第三十三章 スプリナの話
第三十四章 ユリウス・カエサルの戦争の仕方についていろいろ気がついたこと
第三十五章 三人の良妻について
第三十六章 最も秀でたる男性について
第三十七章 父子の類似について
第三巻
第一章 実利と誠実について
第二章 後悔について
第三章 三つの交わりについて
第四章 気分の転換について
第五章 ウェルギリウスの詩句について
第六章 馬車について
第七章 身分の高い人の不便窮屈について
第八章 話合いの作法について
第九章 すべて空なること
第十章 自分の意志を節約すること
第十一章 びっこについて
第十二章 人相について
第十三章 経験について
(参考)
関根秀雄訳『モンテーニュ随想録』(国書刊行会)
関根秀雄著『新版 モンテーニュ逍遙』(国書刊行会)