【レビュー】目指す場所は遥か先。目を向ける先は一つ一つのプレー〜J2第39節 アルビレックス新潟vs大宮アルディージャ 〜
俺たちの点の取り方
突然ですが、みなさんは今季新潟は67得点中このJSTATsが分類する得点パターンのうちどの得点パターンが多いと思いますか?(JSTATsとは・・なんかJリーグの試合のデータたくさん持っているところ)
こちらがJSTATsが記録する新潟の今季の得点パターンと数と割合になります。
大体想像はついたとは思うんですが、やっぱりショートパスが一番多いです。
ただ他のチームと比較するとショートパスからの得点数や割合は多いけどれっきとして多いとは言い難い感じ。
ここで注目したいのが「クロスからの得点数」です。
11/67で16.42%とこちらも少ない方ではあるがれっきとして少ないとは言い難い感じ。
ただデータじゃなくてここで記録されているクロスからの得点のシーンを実際に見ると印象が変わってきます。
クロスに分類されてる多くは相手からボールを奪い相手が戻ってくる前に決めている速攻(ショートカウンター)です。
そしてもう一つのパターンはこの夏欧州の地へ羽ばたいていった本間至恩からのクロスです。
これらのパターンを除くと新潟がクロスから決めたゴールは6節の群馬戦の長谷川→谷口のゴール、15節の東京V戦松田→高木のゴール、20節の徳島戦藤原→谷口のゴール、30節徳島戦の秋山→堀米のゴールくらいです。
(ちなみにこの6節、20節、30節のゴールはJSTATsが記録した得点パターンの分類上ではクロスからの得点ではない。)
そしてこの4ゴールのうちヘディングで決めたゴールは徳島戦の谷口と堀米のゴールのみ。
本間至恩を欠いた今のこのチームは、後ろで守ってくる相手に対してサイドで勝負してクロスをあげて得点を取るという可能性は低いです。
だからこそ、今回の大宮戦や前の甲府戦、琉球戦で決めたような2人、3人、4人が連続的に関わって崩していく形が重要です。
これらの得点の共通した点は相手のDFラインとMFラインの間でボールを受けて、そしてそこで前を向いてボールを持つ選手がいる状態を作っている点、そして2人、3人、4人と連動している点です。
じゃあどうやったらこの状況ができているのか?逆にできていないのか?
大宮戦の映像でそのプレーができてる時とできていない時を見比べて考えてみようと思います。
また今回のnoteでは説明しやすいように相手のDFラインの背後をゾーン1、相手DFと相手のMFの間の場所をゾーン2、相手のMFと相手のFWの間をゾーンをゾーン3、相手のFWより前の場所をゾーン4と表記していきます。
一般的なサッカー用語ではないので悪しからず。
当初狙ってた形にならない大宮
相馬監督が試合後語っていた当初の狙いどおり、大宮は前半最初の20分FWが前からプレッシングをかけてきました。
新潟のダブルボランチを警戒しながら、プレスのかけれるタイミングでFWがCBにプレスをかけて大宮のボランチがそれに連動して前に出てきます。
しかし、新潟はうまくゾーン3にいる選手(高)とゾーン2にいる選手(伊藤)で縦関係を作り、大宮のボランチがゾーン3にいる選手(高)にプレスをかけたところでゾーン2(伊藤)がフリーになりゾーン2で前を向く展開を作っていきます。
アルビは前に出てきてくれる大宮に対してゾーン3の選手とゾーン2にいる選手でうまく縦関係を作り、相手の中盤に的を絞らせないことで、
始まって20分弱の間でゾーン2への侵入に10回成功しゾーン2で前を向く形を6回作っていきました。
しかし、大宮もこのままでいるわけがなく、前半21分すぎから大宮の2トップがプレスをかけることをやめて新潟のボランチより後ろにポジションをとるようになりました。
相手が後ろに下がることで新潟のDF陣は自由にボールが持て、相手を押し込むことができますが、
相手のFWが新潟のボランチより下がったことで、ゾーン3にいる選手がいなくなり、大宮のボランチもゾーン2に入ろうとしている人だけを見ればよくなったのでマークが明確になりゾーン2でフリーな選手を作らなくなりました。
この後堀米が高い位置とって島田&伊藤&堀米vs相手の右SHと右ボランチで数的優位を作ってゾーン4からゾーン3に入って行ったりしますが、なかなか相手のブロックの内側を効果的に破れず前半が終わります。
HTで修正した大宮。さらに苦しむ新潟。それを救う堀米。
前半の同様、島田が相手の2トップ脇、新潟の左サイドに顔を出すことで数的優位を作って前進を試みる新潟。
そこに対して大宮は修正を行い、柴山が島田に牽制をかけることで簡単に前進させず、島田が最終ラインに降りたら、富山に任せて柴山は堀米にマークするという形で新潟のゾーン3への侵入を許しません。
それに対して堀米は後半7分すぎから低い位置を取り始めます。
この状況で柴山が外の低い位置にいる堀米に圧力をかけにいくと、柴山と富山の間のパスコース通されてしまいます。
またこのシーンでは高がいるので出ていくことができず、堀米がサイドに開いているため堀米と富山の距離は遠く、柴山は富山にプレスを任せることができません。
大宮はまた後ろに押し込まれる展開になってしまいました。
ゾーン2への侵入の突破口。キーワードは3つの縦関係と4つの高さ。
だいぶ本題から逸れてしまいましたが、本題に戻ります。
今日の本題はどうやってゾーン2(DF-MF間)に入るの?ゾーン2で前を向いた状態を作れるの?です。
相手を押し込める展開が作れました。ゾーン3までは行けてます。しかし、前半では同様の展開で引いた相手のFW、ボランチに捕まってゾーン2まで侵入できませんでした。
しかし58分すぎからまたゾーン2で前を向ける展開が作れてきます。
その展開に共通しているのが3つの縦関係でき4つの高さが生まれてる点です。
60'40~ 島田が左サイドから右サイドにやってきて、3つの縦関係と4つの高さを作り、マイケルが島田に出し、島田はマイケルに戻します。
大宮のボランチの小島は島田に食いついて、ゾーン2が空き、マイケルから谷口に縦パスが入ります。
その瞬間三戸、島田が一斉に動きだし、谷口の落としをもらいにいきます。
残念ながらマイケルから谷口への縦パスが繋がりませんでしたが、ゾーン2で前が向けそうな展開が生まれました。
同じように高さが4つできて縦関係が3つ作りゾーン2に侵入するという展開が58:36、60:50、61:13と3つ続きました。
トドメの交代。ゾーン2で前をむくキーワードは小さな四角形。
いい展開が作れている中でOUT:島田・小見・谷口 IN: 秋山・イッペイ・鈴木の3枚替えが行われました。
秋山は左側に主にいた島田と異なり右サイド側に位置を取りました。
新潟の右サイドすなわち大宮の左サイドの山崎はこの3枚がえが行われる前から、プレスに行くところと行かないところ、パスコースを閉じるところの判断を間違えるなど右の柴山に比べると守備に穴がありました。
そこを狙っていたのかはわかりませんが、相手の2トップの脇、左サイドハーフ山崎の前スペースで秋山が起点になろうと交代で変わった直後からポジションをとっていました。
入って、5分後に生まれたゴールシーンでは、高・秋山・伊藤・鈴木孝司と3つの縦関係、4つの高さが作られているところから、秋山が起点になり、伊藤から鈴木孝司に縦パスが入ったところで、秋山、堀米、三戸が一気に動き出し、大宮守備陣を一気に崩していきました。
高さが3つだと(2つの縦関係)プレスをかけてこない引いてきた相手(ボランチまでFWが下がるような相手)だとゾーン2に入る人が足りなくなります。
高さが4つできると、ガッツリ引いてきた相手に対してもゾーン2に人を置くことができ、ゾーン2への縦パスが打ち込むことができます。
松橋アルビの特徴としては、縦パスが入って終わるのではなく、縦パスが出そうな瞬間から周りの選手が前を向く状態を作るためにすぐサポートします。
この得点シーンに限らずどのシーンでもこの試合はみんな動き出しています。
去年何回も見たロメロフランク孤立で鬼キープみたいなシーンはありません。
そしてここ数試合うまく行ってるシーンを見ると、ただ縦パスが入って3人目でもらうサポートをしてにいっているのではなく、縦パスを受ける頂点の人とみな距離感が近いです。
小さな四角形を作ることでスペースが狭い中でも前が向け、相手も速いスピードについてこれないです。
距離感が近いことでボールの出しては選択肢がたくさん作れれて、相手もマークが曖昧になって迷い時間とスペースが生まれます。
リキさんはアルベルと大きく違い、ピッチを広く使うことやバックパスなども好みませんがこの試合を見ててその理由がよくわかりました。
ピッチを広く使おうとすると、選手同士の距離感開きがこのような連動して崩し切る得点は実現できないです。
サイドチェンジをしてから攻撃をする形だと広いスペースはあり1vs1の状況は作れますが、そこを壊しても中にはまた頑丈なブロックがあります。(強力な個がいたらそこも壊せるけど)。
シーズン中盤、千葉、横浜FCと固いブロックを引いたチームに対して一切崩せなかったチームでしたが、終盤になり残り試合が少なくなった状況でも確実に進化を遂げていると思います。
昇格目前?優勝争い?
このチームが目指す先はさらにその先で、その先に向けて成長し続け、その成長のために1つ1つのプレーに目を向けて改善に取り組んでいると感じた試合でした。
試合記録
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