フランスの帽子博物館を訪れた時の思い出
前回のnoteにかいた総合帽子メーカーに10年つとめた後、
念願であったフランスのリヨンにある帽子博物館「ラ・シャペルリー」を訪れました。
帽子文化の奥深さや歴史に触れ、ますます帽子に魅力された忘れられない旅となりました。
博物館を知ったのは、何十年も前の雑誌「ハイ・ファッション」と「装苑」で特集記事を見つけたことがきっかけです。
当時の記事をずっと大切に保管し、いつか訪れたいと思っていました。
博物館があるリヨンまでは、パリからTGVで2時間、リヨンからはローカルバスで1時間半ほどの場所にあります。
バスの窓から牛が放牧されたのどかな風景が見えたときは、ずいぶんと遠くまで来たものだとドキドキしました。
バス停に到着するも迷子になってしまい、珍道中の旅となってしまいました。
そのためか、やっと博物館に辿り着いたときの高揚感と言ったらもう、それはそれは今でも鮮明に覚えています。
資料によると、博物館は、かつてこの町が帽子産業で発展した歴史と、帽子作りを後世に伝えるため設立されたのだそうです。
町は水資源も豊富で、フェルト帽体(型に入れてつくる帽子の原形)の原料であるうさぎの生息地だったそうです。
そのため、16世紀からフェルト製造が始まり、町は帽子産業で飛躍的に発展しました。
20世紀初頭には、フランスの高級フェルト帽子生産の代表的な町になり、世界的にも有名になりました。
しかし、戦後ファッションの変化に伴い帽子産業は衰退し、28軒あった工場のうちの最後の工場が97年に閉鎖されています。
博物館の中は、かつて工場で使われていた帽体を作る巨大な機械や、当時工場で働いていた人々のモノクロ写真が並んでいました。
帽体一つ作るのに、うさぎ約4匹分の毛が使用されます。
実際の帽体の四倍もの大きさの型に入れてから、機械や手作業で圧縮していく工程など、帽体が仕上がるまでの当時の技術を展示物から知ることができます。
帽子職人の女性が、フェルト帽体の型入れの実演を見せてくれるコーナーもありました。
別のフロアには、木型を作る職人、麦わら帽子を作るブレード職人。
色とりどりのリボンや羽を婦人帽子に装飾する職人。
生地の帽子の型を作る職人など、様々なアトリエが見事にに再現されていました。
アトリエに飾られている道具や材料は、当時使われていた物そのままです。
まるでそこに職人達がいるような錯覚になり、タイムスリップしたような気持ちになりました。
最後のフロアには、18世紀末から現代までの帽子が飾れていました。
マリー・アントワネットの豪華客船がのっていたヘッドドレスから、現代を代表する帽子デザイナー、スティーブン・ジョーンズ氏の帽子、有名メゾン、ディオールなどの帽子まで様々な帽子が飾られていました。
さすがモードの先進国フランスだけあり、どの時代もクリエイティブかつエレガントな帽子の数々に感動が止まりませんでした。
昔は、日常生活に帽子が欠かせなないものだったので、男女共に帽子のおしゃれを思いっきり楽しまれてる感じがしました。
今度は、帽子作家として再訪してみたいと思います。
最後までお読みくださりありがとうございました😊