4.母と推し活とわたし〜前編〜
私の母御歳77歳。
今年喜寿を迎えた。
根っからの長女気質で忍耐力が有り世話焼き。
両親が商売をしていたので幼い頃から弟妹達の面倒をみて、早くに父と結婚。
祖父母の介護や自由奔放な父、私達姉妹のために身を粉にして働いてきてくれた。
母と私は現在ふたり暮らしをしている。
父が亡くなり早10年…
毎週の健康体操に通う以外はのんびりと余生を送る毎日だ。
数年前から母には推しがいる。
最初はテレビで観て満足するだけだった。そのうちファンクラブに入り、コンサートにも行くようになった。
母が使うガラケーが壊れ、機種変更をする事にした。
その頃私が使っていたiPhone11proMAX。変えたばかりだったが、画面が大きすぎて持ち運びに不便やなぁ…と思っていた。
自宅で過ごす事が多い母は携帯を外にあまり持ち出さない。
母に使ってもらおうかと考えた。
でもいきなりiPhoneか…無理かな…
高齢者用かんたんスマホにするかとも考えパンフレットを前に母に相談した。
『画面が大きい方がええわ!推しのYouTube観たいねん!』
とあっさり私のiPhoneを母が使う事になった。
機械音痴の母に使いこなせるだろうか…と一抹の不安がよぎりつつ。
iPhoneを手にした母。
基本的な使い方を教えるだけでも一苦労…
やのに、推しのYouTubeが観たい!だの、推しのブログが読みたい!だのハードルを自身でどんどん上げていく。
横について毎日操作方法を教えた。
何回言うても広告をタップしてしまう日々…
『ちゃうねん、この広告押したらあかんねん』
『広告て何よ、チラシかいな』
そうやな、母からしたら広告は新聞広告の事やな。
今まで私が説明する広告をなんやと思って聞いていたんや…
そっからの説明である。
YouTubeのCMが流れてもスキップをタップ出来ず動画毎静止させてしまう。
『このCMは右下のスキップ押したら飛ばせるから』
『へー!コマーシャル(なんで言い換えるん…)流れるんやねぇ。こんな小さい字で書かんともっと大きい字にせなあかんわなぁ!』
おっおう……
お母さん、それじゃCMの意味ないねんよぅ…
だが推しの力は凄い。
あれよあれよと私がいなくても1人で使いこなせるまでになった。
iPhoneの使い手になった母は、寝る間も惜しんでiPhoneの世界にのめり込んだ。
早朝私が起きてきたら、爆音で推しの曲を流しながら一緒に歌い、ご機嫌で皿洗いをしている。
母がiPhoneを持つ少し前、持病の喘息が悪化して3キロも痩せてしまった。
その母が今やご機嫌に歌を歌っている。
推しの力は偉大だ。
今まで家族のためだけに生きてきた分、今後は思う存分推し活に専念して欲しい。
推しは生きる活力になる。
皿洗いをする母の後ろ姿をみつめながら
iPhoneにして大・成・功!
心でドッキリカメラの大成功看板を掲げた。
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