6.ヘラヘラするな
ウソのようなホンマの話である。
小3から始めたバレーボール。
中学生の頃、顧問の先生によく
『ヘラヘラするな!』
と注意を受けた。
ふざけた学生だったな、と今となっても思う。
私は高校卒業後2年間短大に通う為埼玉に住んでいた事がある。
これは受験に合格し、あとは高校卒業を待つだけの1番伸び伸びした時期の話だったと記憶している。
旅立つ私に中学時代の部活仲間達が集まり送別会を開いてくれた。
ご飯を食べてカラオケに行って。
締めは、近所の銭湯に行ってひとっ風呂浴びて家路に着こう!という流れ。
寒い冬、夜の銭湯はほぼ貸切状態だった。私たちは各々好きなお風呂に入り、最後は自然とみんな露天風呂へ集まって行った。
その頃からサウナ好きで、出遅れた私はヘラヘラとみんなが集まる露天風呂へ足を進めた。
『もー遅いって!主役やのにー!』
『ごめんごめん(ヘラヘラ)』
私はヘラヘラしながら、石畳の露天風呂の階段を降りた。
露天風呂全体が石造りで、歩く地面はゴツゴツしており天然温泉の水質かツルツルと滑りやすくなっていた。
露天風呂の1番奥、みんなの元へ
急ぎ足で歩みを進めていると
ツルン!
えっっっ!!
バッシャーーーンッ!!!
足を滑らせ、私はヘラヘラしながら水中深くに沈んでいった。
よく覚えていないが、もがきにもがきまくった感覚はあった。
ギャハハハハハハ!
遠くで笑い声が聞こえる…
立ちあがろうにも石畳がツルツルで手に力が入らない。
息がっ、息が出来ない!
私は水中ブレイクダンスをしているかのごとくクルクルとスピンをかまし、なんとか石の出っ張りを手で掴む事が出来た。
ヘラヘラしていた私は消え去り、やっとこさ体勢を整え、必死の形相で水面から顔を上げた。
『しっ死ぬがど思〝っだ…』
鼻に水が入りフガフガした。
ギャハハハハハハ!
みんなの笑いが止まらない。
それを見た私も笑いが止まらずフガフガ言いながらまたヘラヘラした。
『何やっとんよ!笑笑笑』
『体張り過ぎ!!笑笑笑』
『最後になんでそんな事なるん!』
『ひとりシンクロなってたやん!』
『いや、犬神家の一族になっとったで!』
そのひとことで、部活仲間も私もまたひっくり返りそうになるくらい笑った。
水中でもがきまくった私のその姿は、足だけ水面から出ていたらしくその様子はさながら犬神家の一族を彷彿とさせたようだった。
ヘラヘラしながら露天風呂に入った結果、犬神家の一族になった私。学生時代の先生の教えは守るに越した事はないな、と思う。
が、20年以上経った今もまたヘラヘラしながらコレを書いている。