2.背番号99おたまちゃん誕生
夕方、豚汁を作っていた。
我ながら何人家族やねん、とツッコミたくなるほど大量に作り過ぎてしまった。昔は大家族だったから、この量が1日で無くなっていたんだよな、と懐かしみつつグルグルと出来上がる寸前の豚汁を混ぜていたところ、ふと気付く。
このおたま、ずっと我が家にあるな。
アルミ100%で出来たそのおたまは持ち手までアルミで出来ており、うっかり鍋に入れたままにしようものなら掴んだ手がたちまち火傷してしまう。
当たり前のように我が家に存在し気にかけた事もなかったが、考えたら私が物心ついた時からこのおたまは我が家にある。
幼い頃、鍋をした時にこのおたまは熱くなるから触ったらあかんでと祖母に言われた記憶もある。
母にいつから使っているのか聞いてみたら、知らんと言われた。
姉達にも聞いてみたら、昔からあったと。みんな記憶が曖昧なのである。
私の記憶だけの話をすれば40年以上は我が家で使われている。
ただこのおたまは3軍だった。1軍おたまは持ち手がオレンジ色で熱を通さないいわゆる普通の使い勝手の良いおたま。2軍おたまはすくう部分が通常より大きめのカレーによく使われたおたま。3軍のこのおたまは祖母や母からしたら一応使う時もあるから置いとこか、のおたまだったはずだ。
私が2年間だけ埼玉でひとり暮らしした時も実家からこの3軍おたまを持ち出した。なので、私は40年以上生きて来て自分でおたまを選び買ったことが無い、という事になる。
数年前に父が亡くなり、実家毎断捨離した。私が使うものと不要な物を選別したのだか、このおたまは私の中で当たり前に使うものとして選ばれた。2軍おたまはいつの間にか母が処分しており、1軍おたまは持ち手が割れていた為私がその場で処分した。
40年以上の間、我が家を見守ってくれたこのおたま。今や我が家の1軍だ。遅咲きの生え抜き選手、背番号99おたまちゃん誕生である。
そう思うとなんだか、愛おしい存在に思えてくる。
いつかその時が来たら棺桶におたまちゃんを入れてほしい、とさえ思う(出来るか知らんけど)
我が人生に一柄のおたま有り
私は出来上がった豚汁を混ぜ終わり、一生大切にこのおたまちゃんを使い続けると心に誓った。
追伸:実はこの子も生え抜き選手だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?