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初めての国際映画祭で気付いた豊かさについて (ベルリン)

2015年2月、ちょうど一年前、僕はベルリンにいた。三週間ほどの滞在は一種の仕事のようなものであったけれど、会社に属していない僕に与えられた自由はとても多く、要は自分のやりたいことを思う存分やってこい、といったようなものだった。

僕はそこで過ごしたベルリンの街並み、空気、生活がどうしても忘れられず、今ここに当時の思い出を記している。

書き始めたら長くなりそうだったので、今回はベルリン国際映画祭について触れてみようと思う。

僕がベルリンに滞在していた時期は、ちょうどベルリナーレと呼ばれる国際映画祭が開催される時期で、舞台挨拶のため世界各国から著名な俳優が集まるなど、一年間を通して活気付いている時期の一つだ。

ベルリナーレで上映される映画は100本以上あり、それぞれがベルリン市内のそれぞれの映画館で上映される。チケットはインターネットでも買えるが、インターネット上で購入できるチケットには数に限りがあり、その多くは店頭にて販売される。それぞれの映画は上映日の2,3日前に購入できるため、期間中毎日何かしらを見たい人は毎日並ぶ必要がある。とても面倒なシステムだが、並ぶという行為もベルリナーレの楽しみの1つかもしれないと思う。

みんな並んでる間は、ベルリナーレのパンフレットとにらめっこし、自分の好みの映画に検討をつける。その光景はまるでレストランで食べたい料理を選ぶかのようで、そんな風に映画を選んだことがなかったこともあり、パンフレットを眺めてること自体が特別な体験だった。レストランで料理を注文する時に、その料理がどういうストーリーを経て作られるかなどを連想するのは難しいが、もちろん映画にはストーリーやテーマがあるわけで、自分好みの映画を選ぶ必要がある。

これがまた難しい。自分の好みの映画を探すということは自分について考えることなのかもしれない。そして、それぞれが考えていること、日々感じていることは違う中で、同じ作品を選び、映画館でそれを分かち合う。今まで考えもしなかったが、映画を観るという行為は、とても豊かな事なんだと思う。

ベルリナーレは各作品が何かしらのカテゴリでノミネートされているので、作品を選ぶ方法としてカテゴリから選ぶのも一つの手かもしれない。ただ、僕はそこまで英語が堪能ではないので日本映画を2つ観た。「ワンダフルワールドエンド」と「天の茶助」。

「ワンダフルワールドエンド」は10代向けの映画のカテゴリだった事もあり、観客は10代の子たちが多かった。10代の頃から友達同士で国際映画祭を楽しむとは、なんとも贅沢だなぁと思った。でも、こちらではそれが自然な事なんだろう。この作品は、現在の日本のアイドル文化やLINEを使ったコミュニケーション文化、女の子同士の友情をテーマにした作品で、こういったテーマを海外の人が楽しそうに見ているのが本当に嬉しかった。監督はクリープハイプのミュージックビデオを撮っている監督さんでその監督さんの舞台インタビューなども観れた。

ベルリナーレは、作品を観た後に監督さんや役者さんが登壇し、インタビュアや観客の質問に答えたりする。日本では、映画の試写会などに行かない限り、こういったものはなかなか見れないだろう。作品を観て、ここはどういう意味だろう?と思った点を直接監督に聞ける素晴らしい機会で、理系で普段研究をしている僕からしたら、学会発表みたいでいいなと思った。

「天の茶助」は松山ケンイチさん主演の映画で、会場も大きく、お客さんもたくさん入っていた。日本人の姿もチラホラ見かけたが、多くは欧米の方々で何だか嬉しく思う。劇場の字幕は実際喋っている日本語と比べたら説明不足な気もしたが、同じタイミングで笑ったりして楽しかった。この作品は日本では半年後くらいに上映される作品で、先行すぎるくらいで、そういう意味でも特別だった。

先ほども言ったようにベルリナーレには幾つかカテゴリがある。中でも面白いのが、映画のテーマにあった創作料理のコースが振舞われるカテゴリだ。(名前は思い出せない)ミシュランシェフが手がけることもあり、値段は少々お高めだが(1万5千円程度)間違いなく特別な体験になるだろう。

ベルリンの街中が映画一色に染まる。
とても心が豊かになる一年に一度のイベント。
またいつかベルリン映画祭を楽しめるよう、豊かな自分でありたいと切に願う。

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