道頓堀ものがたり
藤山直美さんが病気から復活して関西では2作目の上演。
直美ちゃんを囲むキャストは『笑う門には福来たる』の仲良しキャストに新派緑郎さんは引き続き、今回は雪之丞さんも歌舞伎役者のお役で登場。林与一さんは二人の師匠役。
劇中劇で成駒家型の『封印切』鴈治郎御襲名でも見物したが、我慢の限界を越えても我慢してるうちに封印が切れてしまう。所謂封印切れの型だ。鴈治郎さんより明確に封印が切れる型を観られたのは貴重。
林与一さんの曾祖父は道頓堀を歩くとがんじろはんと贔屓の女性が群がったと言われる二枚目歌舞伎役者初代鴈治郎。
歌舞伎役者としても活躍したことがあるそうだが、私は映画やテレビで二枚目俳優としての活躍、美空ひばりさんとの恋の噂があった二枚目俳優のイメージ。現在77才になられているがTwitterもされて劇中劇とはいえ素晴らしい上方の歌舞伎を演じてくださるのはありがたい。八右衛門は緑郎さん、封印切等歌舞伎俳優時代は演じた事あるのかな?梅川は雪之丞さん。二人の歌舞伎俳優ぶりを僅かでも観られるのはこの上ない喜び。
大正から昭和にかけての芝居町道頓堀の中で芝居にかける人々の愛憎やすれ違う心の悲喜こもごも。直美ちゃんはひょんな事から歌舞伎役者尾野川菊之助(緑郎)の妻となり、菊之助が歌舞伎に邁進できない中、期限付きで喜劇をやらされる事になる。菊之助は喜劇に喜びを見いだすのだがその精進が認められ歌舞伎に呼び戻され歌舞伎の名跡を襲名する話も出るが、そんな時菊之助は病に…
命の期限を切られてから歌舞伎より喜劇をやりたいと最期の命を燃やして回りの助けを借りて中座の華として短い生涯を閉じる。
芝居茶屋の女将さん役の三林京子さんの大きな芝居。菊之助の病気を診察して医者として支える鈴木杏樹さんの口跡の良さ。興行師のお嬢さん役の春本由香ちゃんはベテラン俳優や直美ちゃん相手の芝居でも見劣りしない華やかなお嬢さまぶり。花形新派の役者さん達の活躍は直美ちゃんのお芝居に欠かせない。
松村雄基さんは後の松竹を築く?興行界のプリンス。適材適所とはまさにこの配役だ。
喜劇だと思って油断すると涙腺崩壊の人間ドラマ。来年は藤山寛美さんの追善が行われるが、直美ちゃんも体調を万全にして臨んで欲しい。破壊的な爆笑女王藤山直美はまだ八分目くらいの出来。泣かせる芝居は天下一品だが、共演者を笑いで破壊するまでの体力気力はまだの様。
松竹座なら二度三度と通ってしまったかもしれない程笑えて泣ける芝居。古き良き道頓堀の人情を見事に描いている。子供の頃、祖母に手を引かれて行った芝居小屋を思いだす。子供心に芝居茶屋の前を通りながらここは何?って思った事も思いだす。最期の芝居茶屋はいつまであったのだろう。大人になったある日、道頓堀を歩くと芝居茶屋がいつの間にか消えていた。
気がつけば道頓堀を歩かなくなった。
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