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アラ古希ジイさんの人生、みんな夢ん中 フィリピン編⑥ 雨季と乾季
さて、今回は熱帯の雨季と乾季のお話し。
改めて、調べてみると、自分も知らないほど、細分化して、国や地方によって違っているが、概ね、
比較的緯度の高いフィリピン・ベトナム・タイ・ミャンマー雨季: 6~10月
赤道に近いマレーシア・シンガポール・インドネシア 雨季:10~4月
であるらしい。フィリピンでもマニラ等西海岸と東海岸、ミンダナオ島と分かれるようだが、他は全く知らないので、西海岸に限定して話を進める。
自分が赴任したのは、1997年7月なので、既に雨季に入っていて、この年の日本の梅雨明けが7月中旬だったということで、日本の梅雨からそのままフィリピンの雨季に行ったことになる。日本の梅雨のように前線が停滞して、雨が降り続くことも少なく、カーッと照りつけて熱せられた水蒸気が雲をつくり、午後からスコールのパターンが多い。
ただでさえ、高温多湿で、赴任直後は食べ物もまだ慣れない中、早速マニラから現場サイトへ移動、顔合わせ会等もあり、腹の調子も悪く、精神的に落ち込み気味で赴任当初はきつかった。(深田祐介「炎熱商人」には、フィリピンに来て、まず当たるのは、炒め物等に使われるココナッツオイルで、ヒドイ下痢ではなく、緩やかに続く、とあり、全くその状態であった。-自分の感覚では「渋り腹」)2週間くらいで、何とか体調も回復してくると、仕事も上手く行き出すものである。
そして、マニラで3か月過ごした後、現場サイトへみんなで引越し。妻帯者は所長と若手1名のみで、この2名はマニラに家族を残し、金帰・月来。他の6名くらいの半数ずつ、2週間に1回週末のマニラ行が与えられる。
サイトへ引っ越し、1か月もすると、乾季が来て、ほとんど雨が降らなくなる。日本では梅雨とその他の降雨量の比が4~5倍に対して、熱帯の雨季と乾季は20倍くらい違うという。大体1年中、日中の最高は30℃を超えるが、日本のように40℃ということはない。一番暑いのが、太陽が近い3~5月ころで、35℃近くになる。逆に12月~1月のほんのわずかな期間、熱帯夜を免れて、最低が22~23℃となり、朝は本当に爽やかで、ホッとする。しかし、すぐまた暑くなるのである。
1年目は、雨季への突入を経験しなかったので、2年目の5月下旬だったか、雨期に入った時、驚くことがいくつかあった。何と、生き物たちも半年以上ほとんど雨がなかったので、めっちゃ嬉しいらしいのである。まず、「その夜」は羽アリの大群がやって来る。刺したり毒はないので、実害はないが、ドアや窓の隙間から、大量に入って来る。翌朝はその死骸の多さにビックリである。
更に、街に出ると、驚くものが道路のそこかしこに見られる。「大きなカエル煎餅(せんべい)」である。雨が嬉しくて嬉しくて、濡れて気持ち良くなって、つい道路に出て来てしまい、車やバイクに轢かれるのである。夜の間は内臓が破裂して惨たらしいかもしれないが、自分たちが見るのは、翌日干からびて、煎餅になった姿であり、可哀そうというより、そんなに嬉しかったのか?と苦笑いしてしまうのである。
他にもヤモリも雨季を喜ぶのだろう。ヤモリは昭和30年代、自分の家の天井にも居たような気がする。しかし、よくお目にかかったのは、沖縄である。昭和60年から3年半赴任した時、よくその鳴き声 丁度「チェッ!」と舌で上顎を弾いて音を出すのを連続して、「チェッチェッチェッチェッ・・・」とやるとヤモリの鳴き声そのもので、フィリピンにも多く居た。赤腹のイモリと違って、家を守ってくれ、害虫を始末してくれるので益虫なのである(虫というよりは爬虫類か)。
沖縄では、至る所の草藪には「ハブ」がいて、民家の戸を開けておくと、靴の中に潜んで、足を入れた瞬間に咬まれる、という話を聞いたから、草が生い茂っているころにはまず近づけなかったが、フィリピンはそういう怖いものはほとんど居ないので、安心である。現場サイト付近の子供(10歳未満)がコモドドラゴンのような、尻尾まで入れて全長50㎝以上のオオトカゲを片手に持って、木々の間から出て来るのを見たことがある。多分食うのだろうけど、逞(たくま)しいこと、さすがであった。
また、現場サイト付近で、2度くらい、ヤンバルクイナにそっくりな、羽根がほとんどない鳥を見たことがある。沖縄本島北部にしかいないと言われているが、自分は、あれはヤンバルクイナに間違いない、それを知っているのは世界に俺だけだと確信している。(ネットで調べると、ムナオビクイナという似た鳥がいるらしいが、飛翔力があり、ちょっと灰色っぽい。しかし、自分の見た鳥は、羽根が全くなく、茶色っぽかった。)
最後に、忘れてはいけないものは、カラバオ(水牛)である。沖縄にも、石垣島等には同じ種類と思われる水牛がいる。カラバオというが、よく川で水浴びしている姿をみた。農作業に主に使われていると思うが、それは見たことはなかった。堂々たる体躯で、やはりフィリピンでは代表格であろう。
熱帯は、生物活動が誠に活発で、面白い。
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久しぶりに歌を何首か。
たとえば君 ガサッと落ち葉すくふやうに 私をさらって行ってはくれぬか 河野裕子
みちのくの母のいのちを一目見ん 一目見んとぞ ただにいそげる
のど赤き つばくらめ(玄鳥)ふたつ はり(屋梁)にいて 垂乳根の母は死にたまふなり 齋藤茂吉
茜さす むらさき野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る 額田王
会わぬのが 親孝行となる日々に 藤井聡太の切り抜き送る
寒いねと話しかければ 寒いねと 答える人のいる あたたかさ 俵 万智