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復活祭とカーニバルと子羊のお菓子

復活祭は移動祝日で、春分後の最初の満月の次の日である。
今年の復活祭は、4/12だと聞いたが、このコロナ騒ぎでヨーロッパはそれどころではない。本来なら、ショコラチエやパティスリーに卵やウサギ型のショコラが賑やかに並んでいるのに。

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かつてフランスなどでは、復活祭に向けてカーニバルを行なっていた。カーニバルとは、そもそも復活祭(Paques)に関係する行事で、中世では仮装した庶民が屋外で踊ったり食べたりして騒いでいたという。復活祭に入る前の46日間をカレーム(Careme、日本語で4句節)というのだが、この46日間(日曜日を除いて)人々は断食をしなければならなかった。だから、その前の1週間は思いっきり食べて騒ごうということで、この時期がカーニバルに設定されたのである(その最終日をMardi Gras、肉食火曜日という)。カーニバルは、フランスの古語Carne-levareに由来し、「肉を断つ」という意味らしい。中世の時代、カーニバルで食べられていたお菓子は、揚げ菓子、ワッフル、クレープなどだ。これら3種類のお菓子に共通したあることを私は発見した。それは、オーブンを使わないで作ることが出来るお菓子だということである。人々が屋外で、焚き火にフライパンをかざして作っていたにちがいない。たぶん、焚き火に届くように、長い柄の大きなフライパンやワッフル型を使って、一度にたくさんのお菓子を作っていたとのではないかと想像する。

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これら3種類のお菓子は、今では地方別に作られている。たとえば、ワッフル(gaufre)は、主に北フランスで作られ、少なくとも3種類のワッフルが作られている。(3/24note投稿生地に詳しく解説)ベルギー風、リエージュ風、そしてゴーフル・フーレ(goufre fouree)と言われる格子模様が細かくて、ワッフルの中にクリームを詰めたものだ。これは東京の尾山台のパティスリー「オー・ボン・ヴュー・タン」で作っているが、この店では「タンピ」(Tanpis)という名前で売っている。どうしてか?シェフは最初、ゴーフルという名前で売ろうとしたが、これがすでに商標登録されていることを知る。それではしょうがない、というわけで、仕方ない、の意味の「タンピ」なのだそうだ・・・!

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(リエージュ風ワッフル)

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(ゴーフル フーレ)
また、揚げ菓子は、南フランスでは日常でもよく見かける。こちらも3種類あり、オレイエット(oreillette)、メルヴェイユ(merveille)、そしてビューニュと発酵生地のもの、そうでないものと分かれる。

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(オレイエット)

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(ビューニュ)

また、クレープは、もともとは12世紀に十字軍がそばをブルターニュにもたらしたのがきっかけでそば粉のクレープをつくるようになったことが始まりだ。その後、小麦粉のデザートのクレープができる。また、クレープは2月2日の「マリア様のお清めの日」(Chandeleur)に、全国でいっせいに食べるお菓子でもある。

現代では、復活祭には復活を示す前述の卵、又はそれを探そうとするウサギを模したチョコレートを作る。(それらは、主に子供たちに与えられるのだが)

しかし、アルザスやロレーヌ地方では、ちょっと変わったお菓子を食べる風習がある。アニュー・パスカル(AgneuPascal)と呼ぶ子羊の形をしたお菓子だ。パスカルは復活祭という意味。なぜ子羊かというと、ふたつの説がある。一つはユダヤ教におけるアブラハムの犠牲の話に由来する話。ある日、神がアブラハムに、神への犠牲として自分の息子を差し出すように試したとき、アブラハムは素直にそれに従ったのである。が、結局は神の慈悲を受け、代わりに子羊を殺させたという。もう一つの説は、世の中から罪を取り除く神の子羊を唱える聖書に従って、キリストの復活を祝うときには、その子羊の形をしたお菓子を食べるようになったという説である。アルザスのスフランハイムという村で作られる仔羊型で作るこの焼き菓子は、なんとも愛しい。食べる時どこからカットひていいものやら?食べるのがかわいそうだが、食べたら食べたで、そんなことは忘れてしまうのだが。

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(我が家にあるアニョー型とそのお菓子。アニョー型は、アルザスのブーランジェの方から譲り受けた100年使っていたという古い型です。お菓子はコーンスターチが入るビスキュイです。家に型を飾っておくと皆さんがこれは何?と質問するので、作ったお菓子をずっと冷凍しておき、質問があるたびに出して、このお菓子を作るの、これはね、、という感じで説明を始めます。笑。)

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