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近代菓子の基礎を築いた偉大なパティシエ、アントナン・カレーム。5才で捨てられ、劣悪な厨房環境に悩まされたその生涯とは?

最近なんだかパリのピストロで、ヴォローヴァンが流行っていますね〜。19世紀の料理再来?
ヴォローヴァンとは、Vol au ventと書いて、風に飛ばされるくらい軽い食べ物ということで、折りパイ生地で器を作った中に、詰め物をする料理です。

パリのビストロのヴォローヴァン
(雑誌フィガロより)

フランス革命の6年前、1783年、その偉大なる菓子職人、アントナン・カレームは今のボン・マルシェあたりのバラックで生まれた。当時は革命の前で世の中が混乱していたし、なにしろ食べるパンもなかった。「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない。」とマリー・アントワネットは言い放ったというが、彼女が言った
というのは嘘です。まあ、そういう時代に生まれたので、親はマリー・アントワネットにあやかって、マリー•アントナン・カレームと名付ける。

24人中16番目の子として生まれ、不幸にも1792年に親に捨てられた。うろうろしている子供のアントナンを拾ってくれたのは、当時ガルゴティエというカテゴリーの肉料理屋。

どん底から這い上がるために必死で働いたアントナンは、もっと上を目指したかった。当時、貴族を真似する新興ブルジョワに人気だったのは、お菓子。アントナンは、パレ・ロワイヤルのそばのバイィの店で働くが、菓子を作る合間をぬって王立図書館に木曜と金曜に通い、建築と版画の本をむさぼるように読む(読み書きも独学?)

バイィの店は著名人が注文に来る店だった。政治家タレーランに気に入られた若干17歳のアントナンは、その後、ナポレオンの親族、ロシア皇帝、イギリス王太子、ロスチャイルド家などに仕えるフリーランスとして生きるのだが、彼が最も得意としたのは、金持ちが招待客をあっと驚かせる(ほとんど食べられない)ピエス・モンテ。その他、絞り袋やトック帽を考案。シュー菓子を今にような形に完成させ、シャルロットやヴォローヴァンも作った。


下段が当時のヴォローヴァン
同時代のジュール・グッフェの著書から

しかし、厨房での木炭による有毒な一酸化炭素が健康を害し、薄暗さは視力低下、蒸気と隙間風はリューマチを引き起こし、未殺菌の牛乳で腸結核になり、病の床に。一連の著作の印税で高いお金を払って医者に診てもらうが、1833年1月その50年の生涯を閉じる。

著書:
「Patissier pitoresque華麗なる菓子職人」1815

「Patissier royal parisienパリの宮廷菓子職人」1825

「Maitre d’hotel francais」フランスの給仕長」1822

「Art de la cuisine au XIX siècle」19世紀のフランス料理述1~3巻」1833(未完だったが、弟子のプリュム
が4.5巻を出版

2枚目の写真。下段がVol au ventヴォローヴァン。上段は当時のパテ。

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