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企業のTikTok参入はまだ遅くない。TikTokで今有名になるには?
TikTokといえばローティーン女子がダンスをアップするイメージが強かったが、ここ数年で急激にビジネス活用が進んでいる。TikTokなら今から参入しても遅くはなく、十分なマーケティング効果を見込める。ただTikTokで有名になるにはコツがある。本記事ではTikTokのトップクリエイター・Ryutricksに、TikTokで今有名になる方法をTikTokマーケティングを手がけるOASIZ代表の江藤優が話を聞いた。
(話者プロフィール)
▼江藤優
2019年よりByteDance社のインターンとして、クリエイターパートナーシップ部門に従事。クリエイターとともに投稿コンテンツの制作、広告案件などを行う。100以上のアカウントを担当した後に独立し、現在200万フォロワーを有するクリエイターとOASIZを創業し、国内外の膨大なリサーチに基づいた制作のもと、企業の継続的なバズと質の高いエンゲージを提供する同社の代表取締役を務める。
▼RyuTricks
1996年生まれ 早稲田大学社会科学部卒。フリースタイルフットボールというマイナー競技のパフォーマーから、現在SNS総フォロワー200万人のクリエイターとなる。独自性ある動画スタイルは世界的に評価されており、Instagtam、 Nike、 FIFA、オリンピックを始め世界的企業や団体とタイアップを行う。その中で培った独自のノウハウを個人・企業に伝えるSNSコンサルタントとしても活躍し、これまで数百人のアカウントを指導。
TikTokが2017年日本にやってきて、そこからどのように変化したか。
江藤優(以下Yuu):TikTokが日本に参入したのは2017年ごろ。当時は若者をターゲットにした誰でも気軽に音楽に乗せてダンスムービーを投稿できるプラットフォームだった。今はこのときと比べてユーザーの裾野も広がったけど、まだ日本ではこのイメージが根強いよね。
RyuTricks:今TikTokを始めている人たちは知らないと思うけど、TikTokの前身は「Musical.ly(ミュージカリー)」というダンスアプリ。
それをTikTokを運営する中国のバイトダンスが買収してTikTokを始めたので、TikTokの初期フェーズがダンスアプリだったのは間違いがない。
自分がTikTokを始めたのは2018年ごろだったけど、当時は「何でダンスアプリにリフティング動画上げてるの? 自慢乙!」みたいなコメントがたくさん来た(笑)
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Yuu:そんなダンスアプリだったTikTokは、それを強く打ち出して広告をどんどん出してたけど次第に過疎ってきた。そこでもっとダンス以外のジャンルのコンテンツを充実させようと考えたんだよね。
VTuberをはじめ他のプラットフォームですでに活躍しているクリエイターを次々とスカウトして、幅広くコンテンツを展開してクリエイターをショートムービーに馴染ませた。そして徐々にそれらのコンテンツがユーザーに評価されてユーザー層も広がって、「TikTokに来れば面白いことができるよね」という空気感を作り上げたのは上手かったよな。
RyuTricks:うん。自分もバイトダンスから「あなたのようなスポーツ系のクリエイターを押し出して、TikTokのイメージを変えていきたい」みたいな話が来て、彼らと一緒にスポーツのジャンルを盛り上げるムーブメントに関わったし。
Yuu:今TikTokは次のフェーズとして、企業を巻き込むのに力を入れているよね。日本の大企業のTikTokアカウントをTikTok主導で作ったりしている。そうすることで、TikTokへの信頼度が上がって「TikTok売れ」という言葉も出てきた。
すると企業もTikTokは認知の媒体であるだけではなくて、商品やサービスが売れる媒体なんじゃないかと気づき始めて、実際さまざまな企業が次々と参入している。
RyuTricks:TikTokは意図的に自身のイメージを変えるのが上手いよね。2018年に自分がTikTokを始めてから今にかけて、TikTokは本当に変わったと思う。今リフティング動画を投稿しても誰も疑問を持たないし。いろんなジャンルのクリエイターが活躍している。
Yuu:そうやって上手くイメージを変えていけたのは、バイトダンスの組織力の強さが大きいと思う。実際のところ、世界中で流行っている中国のアプリってTikTokだけだし。
自分がバイトダンスでインターンしていたときも、それをひしひしと感じた。例えば、目標設定も「絶対に達成できないものを作ってね」と言われる。でも月の終わりに見直しがあると「何でこの目標設定を達成できていないの?」って詰められる(笑)
そういう限界突破させるマネジメントや物事をスピーディーに動かすオペレーションが、バイトダンスにはある。だから、TikTokのイメージを変えようとなったときも、さまざまな仕掛けを次々と成功させていったんだと思う。
RyuTricks:TikTokのアルゴリズムは、めちゃくちゃ優れていると思う。毎日投稿する身としては、「Instagramに動画を投稿する」ときと「TikTokに動画を投稿する」ときの感触が明らかに違う。
Instagramもアルゴリズムには力を入れていて毎日のようにアップデートしているにも関わらず、TikTokには絶対に勝てていないような気がするんだよね。
Yuu:具体的にどういう点が一番優れていると思う?
RyuTricks:一番優れていると思うのは、「言語識別能力」かな。例えば、日本語喋ったら日本人にだけ届く。外国語を喋ったら、外国人にも届く。誰に届けるかに関しては、Instagramと比べて断然優れていると思う。狙っているユーザーにドンピシャで届くのは楽しいよね。
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Yuu:それはあるね。あと、TikTokで面白いのは、フォロワーが少ないクリエイターにもチャンスがあるってところ。自分がバイトダンスにいた頃は、10回に1回ぐらいは「ゼロいいね」の投稿が届くようになっていた。だからクリエイティブが良かったら、フォロワーが少ない人でもバズる可能性がある。
これってYoutubeでは考えられないこと。Youtubeは「能動的」なプラットフォームなんだよ。例えば、サッカーの動画を見たかったら、「サッカー スーパープレー」って検索して見る。
一方、TikTokは「受動的」でいい。自分のフィードを見ているだけで、自分の嗜好性とマッチする動画をAIが勝手に判別して届けてくれる。背後で動くアルゴリズムが本当に秀逸だと思う。
TikTokのアルゴリズムを制覇すれば、YoutubeでもInstagramでもバズれる。
Yuu:TikTokは全ての業種・職種の人が自分のビジネスに使えると個人的には思っているんだけど、RyuはどんなビジネスシーンでTikTokが一番活きると思う?
RyuTricks:企業に一番使って欲しいシーンは新卒採用かな。就職活動中の学生は企業の情報がたくさん欲しいのにも関わらず、公開されている情報は表面的なものばかり。OB訪問をしてもその会社の社風・文化の中身はなかなかわからない。
企業が「弊社の社風・文化はこんな感じです!」と自己開示する場としてTikTokを活用すれば、学生に対しても訴求力があるし、商品・サービスの認知にも繋がるから、効果は大きいと思うんだよね。
自己開示している企業って意外と少なくて。だから、企業の日常的な光景を公開するだけでもバズる可能性は高い。「TikTokは自分とは関係ない」と考える上の世代の人たちほど意外性があってバズりやすいから、むしろチャンスなんだよ。
Yuu:TikTokをやった方がいい理由としてあるのが、TikTokのショートムービーで成功すると他のSNSもハックできること。
Youtubeを運営しているGoogleとInstagramを運営しているメタ。彼らはTikTokに勝とうと必死にアルゴリズムを改良して戦ってた。でも結果として、「TikTokのアルゴリズムを真似しないとダメ」となって、今YouTubeショートもInstagramのリールも、アルゴリズムがTikTokにすごく寄っている。
つまり、TikTokでバズった動画をそのままYoutubeやInstagramに上げれば、バズる確率はすごく高いってこと。だからTikTokをメインにショートムービー制作をするのは合理的なんだよね。
RyuTricks:TikTokの最大の特徴は、浅く広く知ってもらう認知の媒体としての役割が強いことかな。YoutubeやInstagramは、興味・関心を深めるのには優れていると思うけど、企業もまずは自社の商品・サービスを知ってもらうことにお金を使いたいはず。TikTokは圧倒的にYoutubeやInstagramよりバイラルしやすいから、企業としてもニーズは大きいと思う。
TikTokを今から始めて有名になるには「ニッチ戦略」が大切
Yuu:TikTokで有名になるには何が大切だと思う?
Ryutricks:「ニッチ戦略」が大事かなと思う。TikTokはニッチで勝負するものだから。
今からTikTokを始めるデイワンの人に具体的にアドバイスするなら、まず「自分のジャンルを決める」こと。次に「そのジャンルのTOP20人を国内外問わず見つけてフォローする」こと。そして「フォローしたTOP20人の投稿を毎日見て、1日1本同じようなコンテンツを作って投稿する」こと。
恐らく全体の95%くらいの人がこの手順を踏めなくて上手くいっていないので、これらができるだけで頭ひとつ抜けられるよね。
Yuu:ちなみにRyuは、自分がトップクリエイターになって感じたメリットはある?
RyuTricks:自分が新しいことに挑戦したときに応援してくれる人たちができたというのは大きいと思う。それはある意味で自由なライフスタイルを手に入れたということでもあるから。TikTokでトップクリエイターに誰もがなれるわけではないけど、挑戦してみる価値はあるんじゃないかな。
Yuu:これからTikTokはどんどんビジネスにも活用されていくと思う。企業の人たちにもアドバイスはある?
RyuTricks:そうだね。アカウント運用を丸投げしちゃうのは良くないかなと。いくらフォロワーが集まっても、ノウハウを持った人たちがいなくなったら必ず困るじゃん。ある意味TikTokはフォロワーじゃなくてノウハウを獲得するゲームなんだよ。だからOASIZとしては運用をお手伝いしながら、一緒に学んでいくことがベストだと考えているよね。
Yuu:企業のブランディングでも商品・サービスのプロモーションでも、どちらのことも一番知っているのは企業の人たち自身だしな。それに加えて、TikTokのノウハウも手に入れたら最強だと思うので、そのお手伝いがしたい気持ちは強い。
TikTokを始めるタイミングとしては、今でも全然遅くはない。むしろ早い方かもしれない。これからTikTokもいろいろ機能も増えて、マネタイズしやすいアプリになっていくと思う。だから、先行者利益を得るためにも、この記事を読んだ人はぜひTikTokでショートムービー制作に挑戦して欲しいと思う。
取材・文:師田賢人