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マレーシアでの路上ビジネスについて

 コロナのパンデミック以降、クランタン州コタバルでは信号待ちの車に対して飲食物を売る人の姿が増えました。パンデミック以前はまったくなかった風景なのですが、この前この人たちをみていてふと考えてしまったので、ちょっとまとめます。

 マレーシアという国は経済的にもそこそここれまで安定してきて、インドネシアのようにどこもかしこも物乞いや路上販売をする人をほとんどみかけません。

 ところが、マレーシア全州で最もGDPが低いクランタン州ではこれがあちこちでみられるのです。特にコタバルの大通りの交差点には必ずといっていいほどいます。といってもインドネシアのような危険さはありません。

 売る商品はさまざま。冷たいココナッツシェイクなどのジュース類やチキンの唐揚げなどが多いです。ジュースは交差点の近くに車を止めて、そこで作ってカップに入れて準備します。食べ物はたいがいが商店が近くにあって、そこから若い男の子数人がビニールや紙袋に入れた唐揚げを歩いて売ります。金額は3~5リンギあたりです。

 ただ、これら路上販売は法律で禁じられており、捕まると罰金刑になるのですが、警察はまったく取り締まる気配はありません。まあ、仕事がなくなってほかにすることがないからものを売っている若い子が多く、警察も目をつぶっているのでしょう。

 さて、その路上販売をみていてふと思ったのですが、ココナッツシェイクは100台中どのくらいの人が買うのでしょうか。僕が会社の帰りがけによく止まる信号での待ち時間はだいたい3分ほど。この間に買う人はときおり買っているのをみますが、そう頻繁ではありません。

 そもそもこの交差点ではココナッツシェイクを売っている人しか見ないのです。ときおり食べ物を売っている人もいますが、あまり見かけません。なぜなんでしょうか。この交差点ではココナッツシェイクが一番売れるのでしょうか。

 ビジネスは需要があるものを売らないと成立しません。毎日この交差点で信号待ちをしたとしてもココナッツシェイクをどうしても飲みたいと思う人はどれだけいるのか。

 不思議なのは1人1種類だけを売っているようで、ココナッツシェイク担当の人はそれだけ売っている。いろんな交差点でいろんな人がいろんなものを売るのですが、僕がよく止まる交差点はココナッツシェイクのみ。

 一番気になるのは、この人たちはいったいいくら稼げるのでしょうか。朝から晩までやっている気配はなく、だいたい12時ぐらいから夕方ぐらいまで。特に夕方のラッシュアワーは稼ぎ時のようです。1本5リンギとして、両手にもっても10本ほどのココナッツシェイクしか持てません。練り歩いて数時間かけて売っても50リンギ(1200円ほど)。ここから経費があるわけで、さて、この売っている人たちは1本あたりの利益はいくらになるのか。1リンギにも満たないかもしれない。

 しかし、このココナッツシェイクには氷が入っているはずで、何時間も売れ残ったのを売るわけにはいかないので、途中で氷を追加したりしているのでしょうか。その可能性はありますが、非常に効率が悪いと思うのです。

 一方で、家の近くで朝によく見るおじさんがやっている「ナシ・レマ」があります。これはココナッツミルク煮をした白米に煮干しや豆、卵、きゅうりを入れた食べ物で、国民食と呼ばれているものですが、このおじさんが売っているのはなんと1リンギ。包に入れて売っているのですが、50個ほどを毎朝売っているようです。

 朝食向けなので、数時間やって完売しても50リンギ。1個あたりの利益はどのくらいなのか。ビジネスではバックエンドとフロントエンドというのがありますが、この人のビジネスはフロントエンドで終わりのようです。連絡先もまったくなく、ただ車のトランクを見せ代わりにして売っている。それも走っている車向けに売っているようで、なかなか駐車もできないそんなところで、なぜ売っているのか。。。しばらくやっているので、まあ、そこそこ売れてはいると思われますが、そもそも1リンギとは。。。

 こういったケースを見ていると、どうも「なんか売れば売れるかも」ぐらいでビジネスをやっているような気がします。そもそもビジネスとは大きな需要がないと難しいわけで、細々と小遣い稼ぎでやっても、この程度の金額以上のビジネスはほかにもできるとは思うのですが、そこまでの発想にどうも至らないのかもしれません。

 いずれにしても、クランタンでは仕事がないので、他の州に出稼ぎに行くか、こういったあまり儲からないとみられるスモールビジネスをやらざるを得ないのが現状なのです。

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