異次元世界のマレーシア~凧が上がる~
マレーシアのシンボルは3つあります。ハイビスカス、マレー伝統の短刀クリス、そして伝統凧ワウ。きょうはこのワウについてお話します。凧が国のシンボルになっている国はほかにはあまりないのではないでしょうか。
ワウはマレー半島東海岸のクランタン州やトレンガヌ州のマレー人の伝統凧。日本の凧は三角形をしていますが、マレーシアの凧は鳥のような独特の形をしています。さまざまな形状があるようですが、なかでも「ワウ·ブラン」がよくみられます。(上記写真)
「ワウ」はアラビア文字の「ワウ」(数字の9のような形)に似ていることからこの名称がついたといわれていますが、この凧は空に飛ばすと音を発するため、その音から名付けられたとの説もあります。
ワウの大きさは大きいもので縦の長さは1メートル以上、横幅は3メートル以上。竹をフレームにして作り、そこにさまざまな色紙を貼り付けていきます。色紙上にいろいろな美しいモチーフを描かれるのですが、ここが職人の腕の見せ所。ワウは手作りで、注文を受けてから作り始めます。小さいものでも完成まで約2週間、大きいワウだと1カ月以上もかかります。金額も値が張り、一枚あたり数千円~で高いものは数万円~。
最近は遊び用というより飾り用として購入する人が多く、クアラルンプールではお土産としても売られています。東海岸のほとんどのホテルのロビーにはワウが飾られ、お土産屋ではこれをモチーフにしたものもあります。
この伝統凧が首都圏で飛ばされているのはあまり見られません。しかし、クランタン州やトレンガヌ州では天気の良い日にときおりワウが飛んでいるのを見かけます。
クランタン州コタバルでは年に一度に凧大会が開かれ、国内外から参加した色彩形状豊かな凧が舞い上がります。コタバル郊外のトゥンパットには大きくはありませんがワウ博物館もあります。
このワウの形は実はみなさんはよく見ています。それはマレーシア航空の赤と青のロゴ。このロゴはこのワウをモチーフにしています。
マレーシアのお札である1リンギ札や旧50セン·コインの裏側にもワウはひっそりと描かれており、マレー人にとっては大事なシンボルなのです。
日本ではあまり知られていませんが、これを知っているとマレーシア通にもなりますよ。