らむね。紙芝居シアター「雨宿り」
ある梅雨の日。外から帰ってきたら玄関に蜂がいて。傘を置いたら、傘にくっついて、しばらくそこにいたんです。その蜂をヒントに考えたお話です。
それでは、はじまり、はじまり~
「雨宿り」
毎日、雨が降るので、うさぎちゃんは新しい傘を買ってもらいました。
「かわいい傘!嬉しいな!これで、雨の中のお散歩が楽しくなるわ!」
「うさぎちゃん」
「あら、ママ、なぁに?」
「ちょっとお買い物を頼めるかしら?そうそう。そろそろ、蜂さんたちが元気に活動をし始めるから、外に出るときは気をつけてね。こないだ、果物屋のお猿さんが、蜂にびっくりして、手で払おうとしたら刺されちゃって。腫れちゃったらしいわ」
「まぁ、大変だったのね。」
「今日は雨だから大丈夫だと思うけどね。蜂さんは雨が苦手なんですって。でもね、晴れいても、蜂さんは、こちらが何もしなければ刺したり、襲ってきたりしないから、もし蜂さんがいても、騒がず、慌てず、そっとしておいてあげてね。」
「うん。ママ、わかったわ!」
うさちちゃんは、新しい傘をさして出かけました。途中、雨の中でイキイキしている紫陽花を眺めたり、紫陽花の葉っぱで遊んでいるカタツムリさんに挨拶をしたり、雨の日のお散歩も楽しんでいました。
「新しい傘のおかげで、雨の日のお買い物も、とっても楽しいわ!」
そして、家に着いたうさぎちゃんが玄関を開けようとしたとき・・・。
ブーーーーーーーーーーン
大きな蜂さんがフワリと現われました。
うさぎちゃんはビックリしましたが、ママが言っていたことを思い出しました。
「そうだわ。あたしが騒いだら、蜂さんをビックリさせてしまって、刺されちゃうかもしれないわ。騒がず、慌てず、そっとしておく!」
ふわふわと飛んでいた蜂さんは、うさぎちゃんのおうちの玄関にとまりました。しばらくの間、うさぎちゃんは蜂さんを見守っていましたが、蜂さんはじーっとして動きません。
「困ったわ。おうちに入ることができないわ。蜂さん、どうしたのかしら?」
いつまで待っても、蜂さんは動こうとしません。
「あ、そうだわ!蜂さんは雨が苦手だって、ママが言ってたわ!きっと、雨宿りをしているのね。」
うさぎちゃんは蜂さんが飛んで行くのをじっと待っていましたが、だんだん、お買い物袋を持っている手が疲れてきました。もし、玄関をそっと開けたとしても、蜂さんが家の中に入ってきてしまうかもしれない、と思うと、うさぎちゃんは玄関を開けることができません。
「どうしたらいいのかしら?あ、そうだわ!」
うさぎちゃんはお庭に行きました。お庭には、たくさんの可愛い花が咲いています。その花を一輪、摘み取って玄関に戻りました。そして、うさぎちゃんの傘を地面に置いて、傘の下に摘んできた花を置きました。
「蜂さん、あたし、お家の中に入りたいの。この傘を貸してあげるわ。傘の下で、お花の蜜を食べながら、雨が上がるのを待つのはいかが?」
すると、蜂さんがフワリと傘の下に飛んでいきました。
うさぎちゃんは家の中に入りました。それから、ママとランチをしたり、おしゃべりをしたりして、そろそろ蜂さんはどこかに行ったかしら?と様子を見に行きました。
玄関をそっと開けて、傘を見てみると・・・。まだ蜂さんがいます。
「あら、あたしの新しい傘。蜂さんも気に入ったのかしら?」
うさぎちゃんは、もうしばらく蜂さんに傘を貸してあげることにしました。
夕方になっても、まだ雨は降り続いています。うさぎちゃんは玄関をそっと開けて、傘を見てみました。
「あら、蜂さん、まだいるわ!でも、雨がずっと降っているもの。雨宿りしたいわよね。」
うさぎちゃんは、そっと玄関を閉めました。
翌朝、雨が上がっていました。
久しぶりに広がる青い空!うさぎちゃんは、そっと玄関を開けて傘を見てみました。
「蜂さん、いないわ!きっと雨が上がったから、どこかに飛んでいったのね!」
うさぎちゃんは傘を持って、くるくると回しました。
「あたしの可愛い新しい傘。蜂さんのお役に立てて良かったわ!さ。今日は晴れたし、公園に行って、みんなでティータイムをしましょ♫ そうね。今日はヨーグルトにしようかしら」
うさぎちゃんはヨーグルトを持って、公園へと行きました。公園に行くと、リス君とタヌキ君もやってきました。
「今日は、ヨーグルトを持ってきたの。はい、タヌキ君」
「わーい!ヨーグルト!はちみつをたっぷり、かけたいなぁ。」
「リス君もどうぞ」
「ぼくも、はちみつ、大好きなんだぁ~!はちみつ、あるの?」
「あら。はちみつは、持ってきていないわ」
その時!
ブーーーーーーーーーーン
フワリと蜂さんが現われました。
蜂さんは、なにやら大きな包みを抱えています。蜂さんは、その包みをうさぎちゃんに渡しました。うさぎちゃんが包みを開けると・・・。
蜂の巣の素材でできた大きなボトルに入った蜂蜜でした。
「え?蜂さん、この蜂蜜を、あたしたちにくれるの?」
蜂さんは、その場をくるくると回りました。
「蜂さん、ありがとう!」
みんなで声を揃えてお礼を言うと、蜂さんはフワリと飛んでいきました。
それから、森の仲良し3人組は、新鮮な蜂蜜をかけた美味しいヨーグルトを食べながら、楽しいティータイムを過ごしました。
おしまい