オイラと浅野忠信の物語　～progress～

妻と息子がテレビを見ていた・・・。
途中からやって来た私には何の番組かはよく判らない・・・。

また、一人だけ仲間外れだ・・・。
寂しいな・・・。
何か話題が無いかな・・・。

そう思っていると、CMが始まった。

やった！

私は心の中で小さくガッツポーズをした！
テレビのCMには「浅野忠信」が映っていたのだ！

私「浅野忠信、オイラと生年月日同じなんだよね・・・」

おもむろに息子の顔を見ると、キラキラした目をしている。
やった！
私はそう思って話を続けた。

私「そうなんだよ！彼とオイラは同じ日に生まれたんだよ！つまり、彼とオイラは同じ日にスタートを切ったんだよ！」

私の頭の中で、スガシカオがprogressを唄っている・・・。

やった！
興味を惹き付けることに成功したぞ！

そう思っていると、息子がとんでもない一言を言い放った・・・

息子「そうニャン？でも、ゴールはかなり違うニャンね！ちちの負けニャン！」

妻「(爆笑)」

一応解説しておこう。
息子は霊長類ネコ科である。
ネコのように行動し、語尾に「ニャン」を付けて会話をする。
しかし、それは家の中でのみ行われる行動であり、学校や公共の場では一切そのような事をしないし言わない。
少しひねくれた内弁慶のようなものである。

話を戻そう。

息子の一言と妻の爆笑で、私は一瞬言葉を失ってしまった。

私は頭の中の膨大な量の情報の海から、息子に答えるべき言葉を検索した。
そして、何とか言葉を見つけ出し、絞り出すように返答した。

私「まだ生きてるから、ゴールした訳じゃないよ！」

情けない・・・。
今まで膨大な量の情報を収集したにも関わらず、絞り出したのは子供のケンカのような返答だ・・・。
そして、妻が決定的な一言を繰り出した・・・。

妻「アンタは一生、浅野忠信には敵わないよ！勝負にもならん！」
息子「ニャンニャン！」

私「！？」

何も返せなかった・・・。
言葉にならない・・・。

CMが終わった・・・。
また私は一人ぼっちだ・・・。

頭の中では、まだスガシカオがprogressを唄っている・・・。

「あと一歩だけ前に進もう・・・。」

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