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異世界へ召喚された女子高生の話-49-

▼父と子のorgyオージー

フィリップたちはようやくベルトラン村長の屋敷に到着し、リビングに通された。

そこでは、服を着崩しきくずしたオリバーがすでに座っており、申し訳なさそうな顔をしていた。
ベルトラン村長は上機嫌で、その隣には娘のアリアナが座っている。
昨日はほこりまみれで疲れた様子だったアリアナだが、今日はやけに髪を整えて艶々つやつやしていた。

「父さん、ここにいたのかよ?」
とレオンは父オリバーを見つけて一安心。

しかし、フィリップやエリナ、ケイリーは、オリバーとアリアナの様子から何となく状況を察し、場の空気が気まずくなる。

「おはよう、若い英雄たち。さあ、遠慮えんりょなく座ってくれ。」
と、ベルトラン村長が上機嫌で彼らを促すうながす

フィリップはレオンを父オリバーの隣に座らせ、自分はその隣に座る。
向かい側にはアリアナがいて、エリナがその隣に、ケイリーがさらにその隣に座った。
フィリップは困った様子のケイリーを気遣いきづかい、同じように苦笑いをしてみせると、ケイリーもそれに気づいて微笑ほほえんで返す。

エリナは2人の様子を見て咳払いせきばらいをして注意を促すうながすが、逆に空気がさらに気まずくなり、内心で
(そんなことしたら余計に気まずいじゃないのっ!)
呟くつぶやく

「レオン君、私がオリバーさんを引きめていましたの。お借りしてしまってごめんなさいね。」
と、アリアナがびるように笑顔でレオンに話しかける。

「うちの父さんは、商品のリストには入ってませんよ。父さんも勝手に行動しないで、一言ひとこと言ってくれよ。」
と、レオンは少し怒りを感じている。

「すまない…まだ何と言っていいか、悩んでいてな。」
とオリバーが困惑した様子で言うが、場の雰囲気がメロドラマのようになりかけたところで、ケイリーが話題を変えた。

「村長、黒鴉くろがらすの戦団の話はどうなっていますか?」
と尋ねると、ベルトラン村長は、オリバーとアリアナを夫婦にする話を切り出そうとしていた矢先やさきだったため、驚きおどろきながら答えた。

「あ、ああ、黒鴉くろがらすの戦団のことか。わが村はカラドール領に属している。早朝に早馬を飛ばして、領主のエドワード伯爵はくしゃくに報告した。罪人の引き渡しをするつもりだ。申し訳ないが、皆様にはそれまでの4、5日間、引き続き逗留とうりゅうしていただきたい。」
と、言う。

フィリップは
「僕らは、なるべく早く遠くへ行きたかったので、ちょっと困りましたね。」
と、計画が頓挫とんざしたことを憂ううれう

エリナは
「一度エルヴァーナに戻る?」
と提案するが、フィリップは
「残念だけど、僕とケイリーさんは離れられないよ。でも、ロバート長老を怒らせたらマズイしね。エリナはファルキーに乗って、レオンに送ってもらいなよ。」
と、答える。

フィリップはどうやってケイリーを追っ手から守るかだけを考えていて、オリバーとアリアナのメロドラマには関心がない。
「どうかお幸せにしてくれ。」
と心の中で呟くつぶやくが、村民に人気のあるケイリーを奪いにくる状況は、フィリップにとって好機でもあった。

この村の状況を利用する方が、ケイリーの安全を確保できると判断したのだ。

村長宅を後にして、エリナは宿の裏手の馬屋から、レオンの操るあやつるファルキーでエルヴァーナの集落に報告に戻ることになった。

フィリップとケイリーも、その見送りに来ていた。
ケイリーは、フィリップを独占できる状況を喜んでいるかのように見えた。

(私の不安がそう思わせるのかな?…フィリップ、信じてるわよ。)

とエリナは心の中でつぶやき
「じゃあ、行くけどっ!すぐ戻ってくるわよっ!」
と、念を押してファルキーに乗り込む。

「そんなに焦らあせらなくていいから、お父さんを安心させて来なよ。」
と、フィリップはロバートに後で殴られたくないので、エリナに時間をかけて落ち着いて戻ってきて欲しかった。

ファルキーの速度なら飛ばせば、昼過ぎにはエルヴァーナに到着するだろう。

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えとん
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