#sailormoonredraw は無断転載か?【海外の視点】
※前回記事「#sailormoonredrawは無断転載か?」の補足記事です。
まず、先日の記事が、多くの方にとって「スクショのアップ」について考えるきっかけになったようで、とても嬉しく思います。記事をご覧いただいたり、議論に参加していただいた皆様、ありがとうございます。
前回と同じくヘッダー画像は「美少女戦士セーラームーンS 第36話「輝く流星! サターンそして救世主」よりお借りしています。
今回は、前回記事に対してTwitterでいただいたご質問なかでも、特に大事だと感じた以下のご質問に答える補足記事になっています。
結論を最初に書きますね。
アメリカの法律が適用されますが、日本での考え方とほぼ同じでOK。そして、アメリカには「フェアユース(公正使用)」という考え方があり、今回の場合、やはり著作権的にもセーフになる可能性が高い。
「忙しいので結論だけ知りたい」という方はここまで読んでいただければ大丈夫です。前回記事で著作権に興味をお持ちいただいた方や、時間に余裕がある方は是非、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
前回のおさらい
まず、前回の記事を簡単におさらいです。
①#salormoonredraw の投稿でイラストの元となるスクショをアップしている投稿は「無断転載」にあたるものが多い。
②スクショをアップするときは「引用」の5条件を満たそう!特に抜けがちなのは「出典の明記」
③「無断転載」だけど、著作権者(版元)にはお目こぼしいただけそう。
④「無断転載」に対してアウトを出すのは版元。正しい知識と純粋な気持ちをもって作品と付き合おう。
それを踏まえたうえで、いただいた質問に回答していきます。
Twitter上ではアメリカの法律が適用される?
改めて頂いたご質問を掲載しますが、Twitterの本社はアメリカ合衆国カリフォルニア州にあるのでごもっともな質問です。
池上彰なら「いい質問ですね!」と言ってると思いますし、僕もそう思ったので取り上げさせていただきました。
作品の著作権は海外でも保護される
まず前提として、日本の作品の著作権は海外でも保護されています。日本やアメリカを含む多くの国々は、色々な条約を締結して互いに著作物を保護しあってるんですね。詳しく知りたい方はコチラなどをご参照ください。
アメリカの法律はどうなってる?
次は早速アメリカの著作権法を見ていきま……せん。その前にTwitterの規約を見てみましょう。その中にアメリカの法律に触れる部分があります。
大事なところだけを抜粋すると、
①著作権侵害の申し立てがあった場合、DMCA:デジタルミレニアム著作権法に則って対応するよ。
②アメリカには「フェアユース(公正使用)」の考え方があるから、著作権侵害と認められない場合があるよ。
と書いてあります。次はこれらを個別に説明しますね。
DMCAで削除依頼を出せる!
DMCA"デジタル ミレニアム コピーライト アクト"は、2000年に制定(だからミレニアム)されました。これはアメリカの著作権法をデジタル化社会へ適応させるためのアップデートパッチみたいなものです。
これにより、アメリカに本社をおく企業が提供するGoogle、Twitterなどのサービス上に著作権を侵害する違法なコンテンツがアップされた場合、申し立てをして受理されればそのコンテンツを消し去ることができるようになりました。やったね!
日本国内に置き換えた場合も基本的には考え方は同じで、違法なコンテンツがアップされたサービスやサーバーを運営している会社か、アップロードした本人に申し立てを行う流れになります。
【Twitterの著作権侵害報告フォーム】
申し立てができるのは著作権者と代理人だけ!
気をつけなければならないのは、上の画像にもあるように、著作権侵害の申し立てをできるのは「著作権者自身」か「著作権者の正当な代理人(弁護士とか)」のみだということです。なので、善意の第三者が申し立てを行うことはできません。
※もちろん非親告罪化された悪質な著作権侵害は、著作権者がわざわざ申し立てを行うまでもなく取り締まられます。
ここまで述べたように、スクショのアップなどに関する日本とアメリカでの法律上の対応は一般レベルでは大きく変わりません。
もちろん著作権という大きな枠組みの中では違いがたくさんあるのですが、いち消費者・コンテンツファンのレベルではそこまで気にする必要はないと僕は考えています。
海外にサーバーを置いて漫画を違法にアップロードしていたサイトが潰されたように、重大な違反にはしっかりと各版元や国が対応してくれるはずです。
僕らが作品と楽しく付き合っていくために知っておくと良いこととして、次は「フェアユース」の解説をしますね。
日本とアメリカの違い ~「フェアユース」の考え方~
今回の記事の一番大事なところになります。アメリカには、日本と違い以下にあげる”4つの要素”にあてはめて考えたとき、公正に使われていれば版元の許可は必要ない(乱暴にいうと「無断転載もOK。版元がダメだと思ったら裁判してね」)という「フェアユース」という考え方があり、今回の #salormoonredraw もこの考えに基づいて起こったムーヴメントです。
Twitterの規約でも「フェアユース」について書かれていますので、 #salormoonredraw がその考え方に適っているかを見ていきましょう。
※初めに申し上げますが、これはアメリカでの考えであり、日本には浸透していませんのでご注意ください。また、前回に引き続き、無断転載を助長する意図は全くありません。
①利用の目的と性格
非営利かつ、著作物に何かしらの追加が行われていればフェアユースとして認められやすいです。セーラームーンの場合、この条件を満たしていると考えられます。
②複製された著作物の性質
使われた著作物がフィクションなどの創作物ではなく、歴史年表など「事実」をまとめたような著作物の場合、フェアユースに認められやすいです。今回あまり関係ないですね。
③複製された部分の量と実質性
使われたのは著作物全体のうちのどの程度の割合か。セーラームーンの場合、15~20分のアニメの1カットなので、フェアユースとして認められやすいと思われます。
④複製された著作物の価値に対する影響
#salormoonredraw でアップしたスクショや、作家陣が描いたイラストのせいで版元が得られる収益が下がるか。常識的に考えれば、おそらくそれはないので、フェアユースとして認められると判断されそうです。
これらを総合して考えると、#salormoonredrawは「フェアユース」にあたり、著作権的にセーフになる可能性が高いといえるでしょう。
※セーフと言い切らないのは、「フェアユース」だとしても最終的には裁判でジャッジされるからです。
ちなみに、Twitterのフェアユースポリシーのページですが、「フェアユース」に関する参考リンク4つのうち2つがリンク切れ、2つが英文、そのうち1つがWikipediaで、資料集めが難航したことを恨みがましくご報告いたします。
まとめ:著作物に国境はない
今回の記事ではアメリカの著作権法の一部と、フェアユースという考え方をかいつまんでお話ししました。もう一度、結論を書いておきます。
結論としてはアメリカの法律が適用されますが、日本での考え方とほぼ同じでOK。かつ、アメリカには「フェアユース(公正使用)」という考え方があり、今回の場合、やはり著作権的にもセーフになる可能性が高い。
特にフェアユースの考え方は、作品との付き合い方についての指標になることは間違いないので、著作権に関する関心が高まってきた日本にも根付くといいなと思っていますし、だからこそ紹介させていただきました。
法律はそれぞれの国で違いますが、根本には「作家の心や財産を守らなければならない」という共通した考え方があります。
日本の作品を海外ファンが楽しめたり、逆に海外の作品を僕たちが楽しめるのも、各国が努力・協力して作家や作品を守ってきたおかげです。
しかし、いまや個人が手軽に全世界に向けて作品を発信できる時代。
国や企業だけではなく、個人個人が著作権についての正しい知識を持つことができれば、作家さんたちは余計なストレスなく創作に勤しむことができ、それを受け取るファンも余計なノイズから解放されたコンテンツライフを送ることができるのでは…と思っています。
今後もできるだけわかりやすい形で著作権についての記事を書いていくので、好きな作家さんのため、ご自身のため、記事を読みにきていただけると嬉しいです。