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ゲーム雑誌が休刊になるとイラストレーターが死ぬ?

 昨日3/28をもって「電撃PlayStation」が休刊となった。幾年にも渡りゲーム文化を伝え育ててきた功績は計り知れない。子供のころ、そして社会人になったあとも、新作ゲームの情報にはいつも心躍らせたものだ。本当にお疲れ様でした。

 話は変わって、最近職場で2Dイラストを担当している20代前半のデザイナーから「かっこいいキャライラストを描きたいがポーズをつけられない」という相談を受けた。それと「電プレ」休刊の話題がどうリンクするのかは1分後にわかるので、記事を読み進めてほしい。


 僕に相談をくれた子は「何かを見ながらポージングを模写することはできても、0から描き起こすとなると全く手が動かなくなる」らしい。なるほど、同じ悩みを抱えているイラストレーターも多そうだ。

 とりあえず参考にと手持ちの「ヴァンパイア」シリーズの画集を渡し「ペルソナ3,4,5」のダンスシリーズの公式サイトURLを送付した。どちらも、キャラ立ち絵のポージングやアングルが頭抜けてかっこいい作品だ。


 ちなみに2Dデザインの子は「ヴァンパイア」、「ペルソナ」を見たことがなかったらしく、キャラ性が際立ったポージングや大胆なアングルに衝撃を受けていた。

 この時点ですでに世代の断絶を感じた僕は「そういえば最近緑茶をおいしく感じるな」などと一瞬意識が飛びそうになる。


 気を取り直してその子に話を聞くと、普段はスマホアプリやブラウザゲームのイラストを見たりしているらしい。なるほど、ポーズや構図の引き出しが増えにくいのも頷ける。

 これらのゲームに描かれるイラストは基本的に「カード(UI)の枠のなかに収まることが前提」になっているため、カメラアングルやポージングのパターンが限定されがちなのだ。

 アイドル系スマホアプリの基本イラストなどを見てみると8人に1人は首を痛めていて、5人に1人は心臓病を患い、3人に1人はこちらに手を伸ばして助けを求めている。ウソだ。さすがに盛った。しかし「そういえば似たようなポーズが多いな」と感じてしまう人も多いのではなかろうか。

 スマホアプリやブラウザゲームが台頭し、日常的に目にするイラストがそういったものになると、ポージングの引き出しも枠にはまっていってしまうのかもしれない。

 「カードフレームが、自由な発想を妨げる要因になっているのではないか」というのは、この若いデザイナーと話していてはじめて感じたことだ。


 僕はコンシューマゲームで育った世代だが、思い返せばコンシューマゲームには「ゲームに実装されない広告用に描かれるイラスト」が大量にあった。

 大胆な構図やキャラクター性が表現されたポージングは、「どうやって背景のない1枚の立ち絵でキャラの魅力を表現するか」をクリエイターたちが脳に汗かき追い求めた結果だ。

 クリエイターたちはだいたい締切ギリギリまでイラストを練っている。なんなら締切を過ぎても練っている。それだけ広告用のキャラクターイラストというのは作品のプロモーションにおいて重要な存在だったのだ。

 今回、若いデザイナーが衝撃を受けたのも、そういった「枠を意識していないイラスト」の伸びやかで自由な発想や、「人に見てもらう」という目的に対する完成度の高さが刺激的だったのだろう。参考になったのであれば、勧めた自分としても大変嬉しい。

 しかし残念なことに、こういった刺激的なイラストは今後生まれにくくなる。下手をすると0になるかもしれない。その理由の一端は「雑誌媒体の衰退」だ。ここでようやく「電プレ休刊」に話がつながってくる。

 要はみんな「雑誌を見ていない」から休刊になってしまうのだ。するとメーカー側は「広告のためだけにイラスト描くのって費用対効果低いな…」と判断するようになり、「ゲーム内のイラスト素材」を広告に流用するようになる。

 コンシューマゲームはスマホアプリよりも自由度が高いとはいえ枠(UI)はあるしポージングは制限される。

 上に挙げた「ペルソナ」ダンスシリーズのイラストはゲーム内にも実装されているが、「キャラが逆立ちしている」、「バク宙している」など、普通では考えられないポージングが多数含まれている。それが許容されるUIデザインを作っているのがまたすごいのだが。

 そうでなくても最近のゲームは3Dが主流でキャライラストが作られなくなっている。例を上げるなら「新サクラ大戦」も広告用の2Dキャラ立ち絵は作られなかった。久保帯人のイラストを見たかったのでとても残念だ…。

 「でも公式サイトとか、WEB媒体でも立ち絵は使うでしょ?」という方もいらっしゃるかもしれないが、WEBなら動画を流せるのでイラストをわざわざ作るより単純にゲームの動画を流すほうが広告としては効果的なのだ。

 そういった理由もあり、いまの若い世代のイラストレーターがポージングの参考にできるようなイラストは各段に減ってきている。もちろん、実写の写真やポーズ集を模写するのも大事だが、完成度の高いキャライラストを見ることの重要性も減ることはあるまい。

 しかし、いまや広告のためだけにキャライラストを描けるほどメーカー側も余裕はないし、媒体側にもパワーがないのだ。「電プレ」の休刊によってさらにその傾向はさらに決定的なものになった。

 カードのフレームが若い世代のクリエイティブをジワジワと殺していくのかもしれない。

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