GOGOおっかけマン!
これは子が幼い頃、童話作って読んだものです。
歌も本も母さん作って歌う読む♪
「GO!GO!おっかけマン」
作 悦子
マンくんは今日から一人で寝ることになりました。
まだ夜がおわってないのに、おしっこがしたくなってトイレに行きました。
外は暗いのでちょっとこわいな、と思っておしっこをしていると、
窓からヘンテコな顔がのぞきました。
その顔はとってもまぶしくて、マンくんは「ワッ!」と目をつむってしまいました。でも、どんな顔なのか見たくなって、指のすきまからそ〜っと見ると、赤いまるい顔をした人でした。
「あなたはだれですか?」勇気を出してマンくんはきいてみました。
すると「え?忘れちゃったの?いつもキミの頭の上にいるのにさ」と
プリプリ怒りだしました。
マンくんが「あなたは帽子ですか?」ときくと、
赤いまるい顔の人は、「ざあ〜ん念でした。もっと高いところに、
いるもんね」とこたえました。
マンくんが「じゃあビルにいる人ですか?」ときくと、赤いまるい顔の人は「もっと高いとこ。ねえ時間がないんだから早く早く」といいました。
マンくんは「わかった、おひさまですね」というと、
赤いまるい顔の人は大喜び。「正解〜正解〜」。
でも不思議じゃありませんか。だって、ふだんは高いお空の上にいるのに、
なんでマンくんのお家のトイレの窓にいるのでしょう。
おひさまは、マンくんがへんな顔をしているので教えてくれました。
「おひさまたるもの、いつもいつもキミの頭の上にいるわけにはいかないんだ。まずこのトイレの窓からどんどんお空にのぼって、
まっ黒な夜のカーテンをあけていくのさ、エヘン」。
どうやってお空にのぼるのか知りたくて、
マンくんが「階段でもあるのですか」ときくと、
おひさまは「まあ、そんなもんだね。おっと、そうやってキョロキョロ探しても、階段は目にみえないよ。それにキミがのぼるのはムリムリ」。
それをきいてマンくんは、とてもがっかりしました。
あんまりがっかりしたので、おひさまはかわいそうに思って、
「じゃあ、もしキミが勇気のある子なら、夜のカーテンをあける旅に連れて行ってあげてもいいけど。でも急いでよ。もう行かなくちゃいけないんだから」
もちろんマンくんは勇気がある子どもです。オチンチンをパジャマのズボンにしまうと、ピョコンとおひさまの背中にとびのりました。
おひさまの背中はどういうかんじかというと、ちょっと熱いお風呂にはいっているようなモゾモゾするかんじです。
マンくんとおひさまはトイレの窓から、見えない階段を一段ずつのぼっていきました。
1。2。3。4。5。5段のぼると、レンちゃんの家の窓からレンちゃんがまだねむっているのが見えました。
6。7。8。9。10。10段のぼると保育園も園庭もぜんぶ見えました。
11。12。13。14。15。15段のぼると、このあいだおかあさんと
電車で行った遠いところと、その先まで見えてきました。
まだ行ったことのない町が見えてくると心がとってもウキウキしてきました。
マンくんがおひさまの顔をちらっと見ると、おひさまは赤い顔をもっと赤くして、何やらいっしょうけんめい歌っていました。
「ボンジョルノイタリア、カニョリ〜ノズバディ〜リョ」あれあれ、何の歌だろう。マンくんが不思議に思っていると、おひさまは得意そうにいいました。
「これはイタリアの歌さ。だってイタリアのお空の上にいるんだからね」
エ〜、そんなことってある?だってイタリアといったら、お父さんがお仕事で行った、あの遠い外国のことです。お父さんは、飛行機に長い長いことのって、ようやく行ったんだから。
マンくんはいいました。「イタリアにはイタリアのおひさまがいるはずです。そんな遠いところまで行くことないじゃない!」
「ウォホッホ。そうくると思った。いいかい、わしは一人しかいないないんだ。エジプトだって、アフリカだって、インドだって。みんなわしがお空の上で歌うのを待っているんだ」
ほんとうかなあ。マンくんは、そのときちょうど横を飛んでいた
わたり鳥にきいてみました。「おひさまは、世界に何人いるんですか?」
わたり鳥は、この子はそんなことも知らないのかという顔で、
「おひさまは、あんたがのっかっている、その人一人さ」と教えてくれました。
「へえ、すごい!世界にたった一人しかいないなんて」とさけぶと、
わたり鳥はすっかりあきれていいました。
「あんた!そこの小さい子供のあんただって、世界に一人しかいないんだよ。あたりまえじゃない、そんなの」そういわれると、マンくんは
何だか強くなった気がして、思わず歌いだしました。
「世界に一人、世界に一人。おひさまもぼくも世界に一人」。
わたり鳥がクワッカカとなきました。
おひさまも愉快そうにウォッホッホと笑うと、
こんどはアメリカの空の上で「ゴーゴーゴーイング、グッドモーニングアメリカ」とアメリカのことばで歌いはじめました。
さて、それからが大忙し。だって世界はひろいのです。みんな、おひさまがのぼって朝になるのを待っているのです。
それにこたえるようにおひさまは、ジャングルのお空でジャングルのことばで歌います。そうするとまっ暗だった森が、キラキラと輝きはじめるではありませんか。
それから海のお空では、おひさまが海のことばで歌います。そうすると、真っ青な波がザブザブゆれて、お魚がうれしそうにピチピチはねるのまで見えてきました。
こんなふうに世界の歌をすべて歌ってしまうと、おひさまはウ〜ンとのびをしました。
「さあ、そろそろ旅が終わるぞ」
マンくんもすっかり満足して、「明日もまた、おひさまの旅につれて行ってください」とたのみました。
ところがおひさまは真っ赤になって、怒ったようにいいました。「じょーだんじゃない!今日と同じ旅は二度とないんだ。明日は明日の旅を見つけることだね」
そういってから、ちょっとやさしい声になって
「でも大きな声で歌ったら、今日の旅は思い出せるさ」とウインクすると、
トイレの水の中にジュッと消えてしまいました。
またおしっこがしたくなったマンくんは、
おしっこの音にあわせてトイレの歌を歌ってみました。
「おはようオチンチン」ジョボジョボ。
「たくさんおしっこ」ジョボジョボ。
「おひさまが見てる」ジョボジョボ。
おひさまのいう通りそうやって歌うと、
からだがポカポカして、たのしい気分がもどってきました。