「イベント」が育むもの
この記事は2023/11/24に配信を行なったメルマガの転載です。
皆さん、こんにちは。
株式会社エスノグラファーの神谷俊です。
ちょうど、あと1か月でクリスマスですね。
我が家は毎年この時期、フィンランドにいるサンタクロースへ手紙を出しています(有料サービス)。心温まるお返事をくれる優しいサンタクロースです。
ただし、昨年あたりから年長さんになる娘が、
「手紙なのに、なんで手書きじゃないのかな?」
「最初の方の文章、前回とまったく一緒じゃない?」
と、手紙の背後にある「大人のルール」に勘づき始めたので、
今年はどうしようかと作戦を検討しているところです。
皆さんは、いかがお過ごしでしょうか。
さて、今回のテーマですが「イベント」に注目をしたいと思います。
「イベント」とは
本日、このコラムで取り上げる「イベント」について、ちょっと説明をしておきましょう。
ここで言う「イベント」とは、一般的に「大舞台」「晴れ舞台」と呼ばれるような自分の力量を存分に発揮することが求められるような機会を意味します。リーダーシップ開発や学習論では「発達的挑戦」や「修羅場経験・一皮むけた経験」などと表現されますね。
「イベント」は次のような特徴を持っています。
・今の自分にとっては、難易度が高めである。
・でも成功すると大きな充実感を味わえる。
・そのために、準備や練習の重要性が高い。
このような特徴を持っているからこそ、私たちはこの「イベント」の前後で飛躍的な成長を遂げると言われています。学術的には、以下のような効果が生まれると言われています。
・自己効力感の高まり:自信がつく
・視座・視野の拡張:より高い視座から物事を考える
・学習効果の向上:多くの情報・知識を収集する
・リーダーシップの発揮:周囲に対する影響力の知覚・働きかけ
少し堅い説明から入りましたが、私が「イベント」の重要性について改めて強く感じたのは、最近の娘の変化を目にしたことがきっかけです。
魔法使いが、監督になった話
年長の娘には、もうすぐ学習発表会がやってきます。
娘の幼稚園では、年長さんは劇をやるんですね。
娘のクラスでは「シンデレラ」をやります。
娘の配役は、魔法使い。
なんとこの魔法使いですが、「1番セリフが多い難しい役」なのだそうです。主役のシンデレラも王子様も5人ずついるなかで、魔法使いは1人だけです。
先生から「魔法使いは、一番大変な役だよー」と言われて、「思わず手を挙げてしまった」ために配役が決まったとのこと。うちの娘は、昔からちょっと背伸びしたがるところがあります。
そこからは、後悔する気持ちと挑戦する気持ちがコロコロと入れ替わる日々でした。
「手を挙げなきゃ良かった」と涙目になったかと思えば、カーテンに隠れて演技のブツブツと練習をしていたり。「いいこと考えた!」と言って、舞台の立ち位置や他の配役のセリフなどをノートに書き出してみたものの「覚えらんない!」と紙をくしゃくしゃにしてみたり。
責任感と無力感が交錯する日々のなかで、ある頃から変化が見られるようになりました。
「自分が上手くできるだろうか?」という不安・心配のコメントが全く無くなりました。代わりに増えたのは、次のようなコメントです。
「〇〇の場面、皆もっと早く入れ替わったほうがいいと思うんだけどね」
「うちのクラス、エンディングのダンス結構うまくなったよ」
「本番は、パパやママにちゃんと声届くのかな。マイク使うよね?」
さらに、先生からの連絡帳には、こんなことが書かれるようになりました。
「劇の流れをぜんぶ把握しているようで、他の子たちの出番やセリフを教えてあげています。小さな映画監督のようでとっても可愛いです。いつも助かっています」
いろいろな不安や葛藤があったのかと思いますが、練習を重ねるなかでどうやら乗り越えたようです。練習量が自信をつくり、その自信が「自分が劇を成功させる」というところまで彼女の目線を高めている。これには驚きました。
全力で挑戦し、与えられた役割を遂げながら、「自分は変わっていける」という可能性を体感的に学ぶ機会を早くにいただけたこと。とても良い機会を与えていただいたなぁと感謝しています。
「イベント」を数える
さて、このような子供の奮闘を見ると「親である自分はどうなのか?」と考えてしまいます。自分における「イベント」は、この1年のあいだどれくらいあっただろうか?
私たち大人は多様な役割を担っているために、「イベント」に投資できるリソースも限られています。また自分の得意な領域が分かっていたり、何をすれば評価されるのかを把握していたりする。だからこそ「上手くいくか分からないイベント」よりも「成果される日常」を選択してしまいがちです。
2023年も間もなく終わりです。
この1年のスケジュールを見直しながら、自分を跳躍させる「イベント」が何個あったのか?を数えてみるのも良いかもしれません。そして、来年が今年以上に「イベント」に溢れる1年になるために、今から何をすればいいのか。
私は、そんなことを考えながら年末への歩みを進めていこうと思います。
今回は、以上です。
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