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(そこそこ)簡単 ホチキス&ブックフィルム式自家製本術
もしあなたが、自分で書いた文章を本にしたいと思った時。そして周りの友人なんかに渡す分なんかで、年間せいぜい10冊程度を作るつもりであれば。悪いことはいいませんので、自家製本ではなく印刷所のオンデマンド印刷を使いましょう。最安だと、一冊送料込み800円(製本直送.com)くらいで出来ます。
あるいは、もしあなたがその本を文学フリマで売るとか、Booth等で販売しようと考えて、例えば50冊とか100冊以上の部数を作成するつもりであれば。悪いことはいいませんので、自家製本ではなく印刷所のオフセット印刷を使いましょう。刷る部数によりますが、一冊当たりで500円とかになるはずです。
以上です。解散。
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……あるいは、まあそんな人はあまりいないと思いますが、❶これからコンスタントに年間20冊程度の本を作成したいと考えてて、若干面倒な作業にひるまないこと。あるいは、❷大型ホチキス・裁断機・レーザープリンターのいずれかを所持し初期投資を押さえられる ❸印刷所に出すと時間がかかるので、作りたいと思ったときにすぐ欲しい ❹どうしても自分自身の手で本が作りたい ……のどれかに当てはまる方は、ようこそ。以下は私がやっている自家製本の解説です。
❶はじめにQ&A
Q1:どういう製本方法なのか簡単に教えて?
A1:大型のホチキスで表紙ごと本文ページを止めます。この際本体には背表紙はありません。これにカバーをかぶせて、ブックコートフィルム=図書館の本にかけられてる透明なフィルムでカバーと本を接着します。見た目は図書館のソフトカバーの本に近くなります。
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Q2:「自家製本」で調べると色々出てくるけど、それと違うの?
A2:私の知る限り、同じ方法で製本しているものは見当たりませんでした。一般的な方法は、ボンド、グルー、糊などを使うくるみ製本=無線綴じですが、ここではホチキスを利用します。
Q3:他の方法に比べたメリットとデメリットは?
A3:まず、中綴じのいわゆる「コピー本」に比べると、圧倒的に市販の本に近いクオリティになります。図書館のフィルムが貼られた本をイメージしてください。
のりを使うくるみ製本を試したことのある方は分かると思いますが、きれいに、長期間ページがはずれないように製本するにはかなりの技術が必要で、液体を使う関係上汚れや失敗も増えます。糸でかがる方法もありますがこっちは手間がすごい。ホチキスだとページが落ちる心配はなく、時間も手間もかなり短縮されます。
デメリットは、まず本体の背表紙が無いこと。ただ、図書館の本を想像してもらえば分かる通り、カバーが本体に接着されているため、見ようとしない限り気にならない位置にあります。(画像参照)また、触らないと分かりませんが、カバーの下にホチキスの凹凸があります。
![](https://assets.st-note.com/img/1653134502750-EpS6rDUFQJ.png?width=1200)
ブックフィルムを貼るにはある程度の技術が必要です。ただし、のりを使う方式に比べれば、比較的簡単と思われます。私は4回目くらいで綺麗に貼れるようになりました。
また、くるみ製本にページ数の限界がないのに対し(ただしページが多いとさらに製本の難易度があがる)、この方法で扱えるページ数はホチキスの能力と紙の薄さに依存します。比較的安価なものとして、Vaimo80(4000円程度)があります。薄手の紙なら90枚くらい → 180ページ程のものが制作できます。
Q5:初期投資はどれくらい必要ですか? また、一冊いくらくらいで作れますか?
A5:必須のものは、大量のページを留められるホチキス(上記Vaimoが4000円)です。印刷はレーザープリンターを推奨しますがインクジェットでも可。(価格はピンキリ)、裁断機(5000-10000程度)があると作業が早いですが、時間をかければカッターでもできます。
一冊あたりの値段は用紙の値段に依存しますが、安く作ろうと思えば、印刷費もろもろ込みで300円弱くらいになります。知る限り最安値のオンデマンド印刷、製本直送.com で似た仕様のものを頼んだところ800円ほどになったので、だいぶ安くなりました。1冊のみの印刷を頼みたい場合、大抵は2000円近くなるのですが、製本直送.comだけはものすごく安いです。製本直送.comさえなければ、もっとこの製本方法の優位性を主張出来るのに……おそるべき製本直送.com。(回し者ではありません)なお、その製本直送.comとの比較も後半にのせます。
❷製本方法
1 本編です。説明文は簡潔に書きますので、細かいところは画像で補完してください。
2 ここではB6サイズの本を制作します。A6(文庫)や新書サイズも同様に出来ますが、A5サイズにしたい場合、プリンターによってはカバーを印刷できないかもしれません。確認してみてください。
3 B5の本文用紙を半分(→B6)に裁断します。A6ならA5を半分に、A5ならA4を切っても良いですが、最初からA5のパックもあるのでそっちが楽。
![](https://assets.st-note.com/img/1653133907676-cUYB5vpJiA.png?width=1200)
4 表紙は厚紙を推奨。これもB5のものを半分に裁断します。私の場合はホチキスのガイドと中央線を一緒に印刷しカットしています。
![](https://assets.st-note.com/img/1653133970238-FLQXLn1r9Y.png?width=1200)
5 カバー画像を作成→印刷。「作りたいサイズの倍よりも一回り大きな紙」を使います。
B6 →倍のB5より大きなA4
A6 →倍のA5より大きなB5
A5 →倍のA4より大きなB4 ※B4の縦幅をA4サイズまで切り落とせば、普通のプリンターにも通ると思いますが、印刷できるかはプリンターによると思うので確認推奨
![](https://assets.st-note.com/img/1653134014093-zGL4b1lv3g.png?width=1200)
6 プリンターで本文を印刷する。レーザープリンターだと紙が若干反るので、しばらく重しをおくと良い。温度を下げる設定などがあるなら使うと良いかも。なお時間が経つとある程度は戻ります。
7 表紙の厚紙と、本文の最初・最後のページの端っこ6mmほどを両面テープで止める。必須ではないですが強度が上がります。
8 紙を丁寧に揃え、クリップなどで固定。なおこれはかなり丁寧にやってもズレやすいので、今後も沢山作るのであればなんらかのガイドがあると良いかもしれません。私は100均の木材で自作しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1653134085105-t2dGYbcpkL.png?width=1200)
9 ホチキス打ち。狭い感覚で沢山打ちます。B6なら7箇所程。このとき、がちゃん、と強く打つと本が波打つので、なるべく静かに、そっと打ちます。反りを軽減するため、表と裏から互い違いに打つとベター。
10 マスキングテープを背表紙に貼って補強。
![](https://assets.st-note.com/img/1653134129800-wLVFXGoW9D.png?width=1200)
11 カバーの上下をカットし、本に合わせて折り目を付ける。
12 ブックコートフィルムを使って、カバーと表紙を接着します。この製本方法で最も難しいポイントです。これはフィルムを販売している会社さんがやり方の動画を作成しているので、こちらを参考にしてください。
13 きれいに貼れたら完成。印刷や、反り直しのための重しの時間を外せば、実際の作業時間は、慣れれば1冊できるまで15分くらいでしょうか。複数冊同時にやれば1冊あたりの時間はもっと早くなります。
![](https://assets.st-note.com/img/1653134284331-ODSxNcKevx.png?width=1200)
❸オンデマンド印刷との比較
「製本直送.com」を利用して比較してみました。価格は約180ページの本で(東京までの)送料込み、驚愕の800円。5冊、10冊となると送料もあって一冊あたりの値段は変わってきますが、1冊のみ注文の場合、調べた限りここが最安値でした。次に安いのが、「ちょこっと製本工房」の 1310円 + 送料500円 なので半額以下です。入稿もPDFで簡単。プロの仕事なので当然ながら印刷も製本もバッチリの仕上がり。
以下では、オンデマンド印刷と上で紹介した製本術を比較して、それぞれのメリットデメリットを考えてみます。
オンデマンド印刷の方が良い点
1. 製本・印刷がばっちり →自家製本も丁寧にやればそこそこ綺麗に出来ますが、プロには負けます。また、レーザープリンターの質に依存しますが、自家製本では印刷時に紙がそこそこたわみます。
![](https://assets.st-note.com/img/1653549860456-lBtegevZdD.png?width=1200)
2. 背表紙がある →当然ながら背があります。本記事の製本術は、簡略化のため背表紙の代わりにカバーを接着し、言ってみればごまかします。
3. 失敗が無い →当然ですが、自家製本の場合はミスする可能性があります
4.手間がかからない →自家製本はなんだかんだで15分作業+15分印刷待ち、くらいの時間と手間がかかります。ただし、オンデマンド印刷の場合もPDFデータのチェックや、入稿のアップロード等ある程度の追加作業は発生します。
自家製本の方が良い点
1. フィルムコーティング →「製本直送.com」は一冊注文の場合表紙のコーティング加工が出来ません。汚れや退色には比較すると弱い。ただし今回紹介したブックコートフィルムを貼れば解決。
2. 安い →自家製本の場合、どんな紙を使うかによりますが、そこそこのクリーム上質紙で300円弱になります。一冊当たり500円差ですね。製本直送.comさえなければ……(略
3. 時間がかからない → 今回「製本直送.com」に注文してから手元に届くまで14日=丸2週間かかりました(追加料金で早めるプランあり)。対して自家製本は作業時間さえあれば、一時間もかからず手元に本ができます。「3日後に友達と遊ぶことになって、本を渡したい」なんて思ったときに対応できるのは自家製本だけ。個人的にはここは結構大きく感じます。2週間は割と長く、本に振り向けてた意識がぶった切られる感じがしました。
4. やり直しが楽 →誤字や修正等したいとき気が楽。オンデマンドだとそのたび2週間待ち。
5. 好きな紙を好きなように使える → 1ページだけカラー入れたいとか、変形とか切り抜いたページとか袋とじとか、ホチキスが通るならなんでも化。値段はかかりますが、商業用の本で使われてる紙を使うことも出来ます。
6. 「自分の手で本を作った」という満足感が得られる。プライスレス。
※今回、自分が自家製本をやってるので、そっち寄りに話してるかもしれません。しかし実際のところ、値段もそこまで変わらないし、到着までの時間さえ気にならなければ、オンデマンド印刷の方がずっと楽で、クオリティもベターです。悪いことは言わないので、まずはオンデマンド印刷を先に試してみよう。
❹私の使ってる用紙とツール
用紙1 Paper Mallで購入した「オペラクリームHO 55kg」 →市販の本にも良く疲れているプロ仕様の書籍用紙。送料を考えると1冊400円くらい。質は最高。
用紙2 ペーパープラザいせの「淡クリーム書籍」の一番薄いもの → 「オペラ~」に比べるとめくりやすさなど若干負けますが、印刷の裏うつりも少なくて十分good。たぶん1冊分100円強。
表紙用紙 KOKUYO厚紙用紙
カバー用紙 EPSON スーパーファイン紙 マット
裁断機 カール事務器 裁断機 →小さい物やロータリーカッターも可
プリンター Brother Justio L3230CDW(カラーレーザープリンター)
カッターとはさみ OLFAカッター + CANARYボンドフリーハサミ(カッターだけでもOK)
両面テープ ニチバンナイスタック・強力タイプ
ホチキス Vaimo80
ブックコートフィルム ピッチン