Sound Horizon『Moira』神名・人名・地名の考察:ギリシャ神話でのモデルと由来
※元は9年前に中国語でWeiboに投稿された記事です。GPTによる翻訳を基に加筆修正を行いました。
日本語ノンネイティブでGPTを利用しているため、不自然な表現や読みづらい箇所が多々あると思います。
中国語版は一応Noteにも置いてありますが、こちらです。
『Moira』の世界観のスケールは、サンホラ作品の中でも類を見ないと言えるでしょう。数年前にまとめサイトで『Moira』キャラクターの項目作成のため一通り考察をしましたが予想を超える規模となって、せっかくなのですべての神名・人名・地名の考察を一つにまとめる形で本記事を書き上げました。
本記事で調べた内容は、サンホラ中国語Wiki『白之預言書』サイト内のキャラクター・地名項目にもまとめてあります。
I. 概説
『Moira』に登場する神々の名前はすべて、ギリシャ語で彼らの司る概念に基づいています。たとえば運命の女神の名前は「運命」、風神の名前は「風」といった具合です。
ギリシャ神話自体も似た命名方法が採用されており、事象を神格化したり、神の名前が事象そのものの名称になったりしています。そのため、『Moira』の神々の多くは、ギリシャ神話におけるモデルや同名・同権能の神々に関連しています。両者は同じ語源を共有しているからです。
神の名前を設定する際には、『Moira』の物語設定に合わせて、語尾の単複数や性別変化が施されることがあります。たとえば、-osで終わる男性名詞が女性名に変えられる際は、-osを-aに改変することがありました。
また、作中の一部の神は明らかにギリシャ神話に登場する神々の権能を参考にしています。たとえば、冥王タナトスは、名前の由来はギリシャ神話の死神タナトスですが、その権能は冥王ハデスにより近いです。また、母なる者ミラは、ギリシャ神話の運命の三女神モイライと大地母神ガイアを融合した存在であり、権能はモイライ、位置付けはガイアから引き継がれています。
ギリシャ神話と異なる点として、『Moira』では、すべての設定が創造主Revoによって構築され、物語のなかでも唯一の叙事詩の中で描かれているため、同じ事象を司る複数の神が登場するような多元的な構造はありません。たとえば、海を司る神は海原女神一柱だけであり、ギリシャ神話のようにティーターン神族の海神たちやポセイドン、その他無数の川や海の神々は存在しません。太陽神も同様で、ティーターン神族のヘリオスからオリュンポス十二神のアポロンへと継承されるような構造はなく、一柱だけに統一されています。
このため、『Moira』ではギリシャ神話における分散的な神の権能が、一柱に統合される形となっています。
全体を見渡すと、『Moira』の神話体系はギリシャ神話の命名や権能分担のルールを参考にしつつ、独自の体系を構築しています。ギリシャ神話の特徴(たとえば冥府や運命の糸紡ぎなど)を保持しつつ、ギリシャ神話全体を解体・再構築した新たな世界観が生まれています。また、国家勢力も独自の定義に基づいて再編成されています。
設定集が欲しい……。
II. 創世神
『神話』に登場し、創世神話として語られています。
Μοιρα (Moira)
モイラ/ミラ
古代ギリシャ語発音が「モイラ」、現代ギリシャ語発音が「ミラ」。
運命の女神であり、万物の母。
名前の由来はギリシャ語【μοῖρα】で、元々は「割り当て」を意味し、そこから派生して「運命」を表します。
ミロスによれば、リスモスが「ミラ」と呼ぶのは「κοινό(koino)」、すなわち共通語であり、メロスが「モイラ」と呼ぶのは「ἀρχαῖον(archaion)」、すなわち古代語であるとのことです。
『Moira』の中で特に存在感のある神の一柱です。
ギリシャ神話におけるモデルは二つあります。一つ目は同名の運命の三女神モイライ(Moirae, Fates)です。モイライは三姉妹の女神であり、それぞれが運命を紡ぐ糸を担当します。一人が糸を紡ぎ、一人が糸の長さを測り、一人が糸を切る役割を担っています。彼女たちはミラほど高い地位ではないものの、神々を含むすべての存在の運命を左右する力を持っています。
『Moira』では、この三姉妹の仕事がミラ一柱に集約されているため、名前も単数形の「Moira」が使用されています。ただし、作中で強調されている権能は「糸を紡ぐこと」のみです。
ギリシャ神話における運命の糸紡ぎという概念は、『Moira』の中でしっかりと受け継がれ、一貫して描かれています。
もう一つのモデルは創世の母神ガイアです。ガイアはカオス(混沌)から誕生し、自ら天空神ウラノスを生み出し、彼と共に原初の神々や万物を創造しました。『Moira』では、ミラも原初の混沌から目覚め、三楽神を創造し、その後天空双神を生み出し、人類を創造する流れが描かれています。
また、冥王タナトスがミラを「母上」と呼んでいるため、ミラは冥王の母でもあります。
Rhythmos (Ρυθμος)
リスモス
創世の三楽神の一柱で、長兄神。
「リズム」を司り、名前はギリシャ語【ῥυθμός】に由来し、「規則的な動き」を意味します。そこから派生して「リズム、韻律」となります。この単語は英語の"rhythm(リズム)"や"rhyme(韻)"の語源でもあります。
末妹との間に朝神と夜女神を生み出しました。
Melos (Μελος)
メロス
創世の三楽神の一柱で、次兄神。
「メロディー」を司り、名前はギリシャ語【μέλος】に由来し、「旋律、曲調」を意味します。この単語は英語の"melody(メロディー)"の語源でもあります。
末妹との間に太陽神と月女神を生み出しました。
Harmonia (Ἁρμονια)
ハルモニア
創世の三楽神の一柱で、末妹神。
「ハーモニー」を司り、名前はギリシャ語【ἁρμονία】に由来し、「調和」を意味し、そこから派生して「和音」を表します。この単語は英語の"harmony(ハーモニー)"の語源でもあります。
長兄との間に朝神と夜女神を、次兄との間に太陽神と月女神を生み出しました。
創世の三楽神
三柱の神々はそれぞれ音楽を構成する要素である「リズム」、「メロディー」、「ハーモニー」を表しています。その名前はそれぞれリズム(rhythm)、メロディー(melody)、ハーモニー(harmony)の語源となる単語です。
作中の英語ナレーションでは、創世の三楽神には二つの英語名があり、「The Genesis」と「Muse」が使われています("They are the Genesis. They were gods we called Muse.”)。「The Genesis」は「創世」を意味し、「Muse」は「楽神」を指します。これらの言葉の語源もまたギリシャ語に由来します。「The Genesis」の語源「γένεσις」がギリシャ語で「起源」を意味し、「Muse」はmusic(音楽)の語源でもあるムーサを指しています。
三柱は基本的に『Moira』のオリジナルキャラクターであり、ギリシャ神話に直接のモデルはありません。地位的には天空神ウラノスに相当する存在と考えられます。ただし、末妹のハルモニアは、ギリシャ神話に同名の女神が存在し、彼女も調和の女神です。
以下の神々は、上述の創世の三楽神の子孫であり、その地位はギリシャ神話におけるティーターン神族に近い存在と考えられます。ティーターンは自然現象を神格化した神々が多く、名前も事象そのものを表す場合が多いですが、以下の神々もそれに倣っています。
Heos (Ἑως)
ヘオス
朝神
名前の由来はギリシャ語【ἕως】で「夜明け」を意味します。
ギリシャ神話では同じく「暁」を司るティーターンの女神エオス(Eos)がモデルです。エオスは暁の神格化で、ローマ神話では「アウローラ(Aurora)」として知られています。
Heosはアッティカ方言からの転写で、一般的な転写(Eos)では粗気符(h音を表す符号)がありませんが、『Moira』では粗気符付きの形を採用しています。
Nyx (Νυξ)
ニュクス
夜女神
名前の由来はギリシャ語【νύξ】で「夜」を意味します。この単語は英語の"night(夜)"の語源でもあります。
ギリシャ神話では、同名の原初神ニュクス(Nyx)がモデルで、夜の神格化として重要な役割を担っていました。ニュクスは暗黒の神エレボス(Erebus)とともに輝く上空の神アイテール(Aether)や昼の女神ヘメラ(Hemera)を生み、さらに運命の三女神をはじめ、ほとんどすべての負の概念や争いの神々を創造しました。その中でも特に有名なのは、眠りの神ヒュプノス、死の神タナトス、争いの女神エリスです(彼女は黄金のリンゴを投げ込み三女神の争いを引き起こし、最終的にトロイア戦争を誘発したことで知られています)。
補足として、暗黒の神エレボスは『Moira』には登場しませんが、日食に関する予言の中で「erebus」という単語が使用されています。この言葉は「暗闇」を意味し、元々のギリシャ語の意味そのままです。
この二柱は長兄神リスモスと末妹神ハルモニアの子で、互いに交わり、大地女神の眷属を生みました。
Elios (Ηλιος)
エリオス
太陽神
名前の由来はギリシャ語【ήλιος】で「太陽」を意味します。
ギリシャ神話では同じく太陽を司るティーターン神族のヘリオス(Helios)がモデルです。ヘリオスは太陽の神格化で、その名前もまた古代ギリシャ語で「太陽」を意味しています。
Phengari (Φεγγαρι)
フェンガリ
月女神
名前の由来はギリシャ語【φεγγάρι】で「月」を意味します。
ギリシャ神話では、太陽神ヘリオスの妹であるティーターン神族のセレネ(Selene)という同権能の神が存在し、月の神格化であります。その名前Seleneも古代ギリシャ語で「月」を意味します。
この二柱は次兄神メロスと末妹神ハルモニアの子の子で、互いに交わり、海原女神の眷属を生みました。
Ge(Γη)
ゲー
大地女神
唯一、遠古の創世神との関係が示唆され、かつ眷属国を持つ神です。
このゲーと眷属国を持つゲーが同一かどうか、確信は持てません。ただ、『Moira』では神の権能が重複しないことを踏まえると、私は同一であると解釈しています。
設定集が欲しい(2回目)。
名前の由来はギリシャ語【γη】で、「大地、地球」を意味します。
ギリシャ神話における大地の女神は地母神ガイアであり、「Gaia」は「Ge」の変形です。ガイアの創世神としての権能は『Moira』ではミラに引き継がれ、大地を司る権能はゲーに残されたと考えられます。
Thalassa(Θαλασσα)
タラッサ
海原女神
名前の由来はギリシャ語【θάλασσα】で、「海」を意味します。
ギリシャ神話には同名の女神がおり、彼女もまた海の女神です。ただし、『Moira』のタラッサは地位的にティーターンのオケアノス(Oceanus)やテテュス(Tethys)に近い存在かもしれません。オケアノスとテテュスは三千の河川と海を生み出しました。
『Moira』には他の海の神々は登場せず、ギリシャ神話のように数多くの海洋神が存在するわけではありません。海に関するあらゆる事象はタラッサが司っており、水神ヒュドルと分担しているのではないかと考えられます。彼女は海を、ヒュドルは内陸の水を主に担当していると思います。
大地女神の眷属と海原女神の眷属は、それぞれ朝夜神と日月神という二組の兄妹/姉弟によって生み出されました。
Ouranoi(Ουρανοι)
ウラノイ
天空双神
名前の由来はギリシャ語【ουρανός】で、「天空」を意味します。【ουρανοί】は複数形であり、「双神」を表すために複数形が使用されています。
ギリシャ神話における同名の神は天空神ウラノスで、原初神の一柱です。その地位はガイアと同等であり、彼もまた「天空」の神格化として描かれています。
天空双神の眷属はミラが直接生み出しました。
なぜ「双神」になっているのか、個人的には「二つの空」、映像から察するに、おそらく夜空と昼間の空をそれぞれ司っていると考えています。
「H」の有無から見る古代語と共通語の混用
朝神と太陽神の名前には興味深い点があります。モデルである暁の女神は粗気符なしで「Eos」、太陽神は粗気符ありで「Helios」と転写されますが、『Moira』ではこれが逆転しています。太陽神は「Helios」から粗気符のない「Elios」に、朝神は「Eos」から粗気符のある「Heos」に変更されています。
ギリシャ語では、「H」に該当する文字がなく、粗気符という記号で表されます。元音に粗気符が付くと、元音の前に「H」の音が加わります。そのため、粗気符の有無にかかわらず使用される文字は同じですが、ラテン文字に転写する際に粗気符がある場合は「H」を追加します。
この二柱の神の名前は、『Moira』において古代ギリシャ語と現代ギリシャ語が混用されていることを反映していると考えられます。「太陽」を意味する言葉は現代ギリシャ語ではH音のない「Elios」として一般的であり、「暁」を意味する言葉は古代ギリシャ語でなら粗気符付きの「Heos」と記される場合があります。
ギリシャ神話では、古代ギリシャ語の一般的な用法に基づき、太陽神が「Helios」、黎明の女神が「Eos」とされています。『Moira』では、「H」の有無こそが逆転していますが、語源も同様にすべて逆転して共通語に基づいているわけではなく、古代語と共通語が混用された形になっています。
設定上、『Moira』に登場するすべての神々の名前は、ズヴォリンが手にした『エレフセイア』に記されているものとされています。『エレフセイア』の著者であるミロスは「暗誦詩人」とされており、ホメロスの叙事詩と同様に、当時は口伝のみで語られ、文字記録は存在しませんでした。文字記録は後世になって整理されたものと考えられます。
叙事詩に記された時代背景から、エレフの時代は青銅器時代末期と推定されます。遺跡が発掘されるまでの間に、少なくとも三千年が経過しており、その間、叙事詩は口頭伝承から文字記録、さらに複数世代にわたる翻訳や抄録を経たものです。この過程では、使用される言語の変遷や語彙の進化、さらには内容の加筆修正などが避けられなかったでしょう。加えて、ズヴォリンが手にしたのはロシア語訳であり、伝承の過程に加えて翻訳による変化も生じています。
こうした古代語と現代語の混用は、意図的なものか、あるいは黒眼鏡の創造主自身が参照した資料の言語によるものかは定かではありません。しかし、その結果として、『エレフセイア』が辿ったであろう変遷に見事に合致する形となっています。
「物語音楽」視点の創世神話
ギリシャ神話など、数千年前という古の時代から伝わる神話の原型は、いわば当時の人々が自然を理解しようとする試みや、世界の誕生を想像する中で描き出されたものです。
カオス(混沌)から大地、大地から天空、天と地の二柱からティーターン神族が生まれて、次代のティーターンには太陽や月などを司る神々が誕生する、という流れがあります。当時の人々はこのような感覚で世界を捉えていたと考えられます。
『Moira』では、同じく混沌から始まりますが、そこから目覚めるのは運命。そして運命が最初に創り出すものは音楽。音楽から朝と夜、日と月が生まれます。
天地の誕生ではなく、まずは運命と音楽から始まります。この世界の捉え方は、いわゆる物語音楽の創世神話、物語音楽の視点から見た世界誕生の図だと思います。
この創世の図では、天地や万物、自然現象よりも先に、「物語」と「音楽」、そして物語音楽の核となる概念が生まれます。
「運命」とは紡ぎ手、紡がれた軌跡、すなわち物語そのものだと捉えられます。
形なき混沌から物語が出現し、その物語を伝えるために音楽が創られます。これは黒眼鏡の創造主の創作論からも常に感じられます。音楽は物語のためにあると。
そして物語「音楽」から、朝と夜、日と月という二組の象徴が生まれます。
これによって、「物語」「音楽」と「象徴たる概念」が形作られます。
もっと具体的に言うと、リズムのハーモニーから朝と夜が生まれ、メロディーのハーモニーから太陽と月が生まれます。
なんとなく感覚的に理解できる気がします。
次に、朝と夜から大地が、日と月から海原が生まれ、運命からは天空が生まれます。
大地と海と空。これらが揃ったことで、地平線が生まれます。
この辺りはミラコンの映像からも地平線のイメージが視覚的に強く感じられます。
そして運命が人を作ります。
つまり物語が必要とする人々が地平線の上に配置されます。
物語、音楽、朝と夜などコアの概念、地平線、そしてその地平線にいる人々。
こうして物語音楽の世界が完成します。
最初から「物語音楽の概念で神話を作ろう」という意図があったのか、それとも黒眼鏡の創造主が「自分が創世神ならこうして世界を構築する」と進めた結果、この形になったのかは分かりません。
ただ、結果として『Moira』の創世神話が「物語音楽」の創世記、物語音楽の視点から見る世界の誕生になっています。
III. 眷属国を持つ神々とその眷属たちの王国
『神話』の最後に登場します。『神話』では、これらの神々と創世神との関係については、ゲー以外特に説明されていません。
設定集が欲しい(3回目)。
私の解釈では、彼らはオリュンポス十二神に近い存在とみなされます。
彼らの眷属がそれぞれ王国を築き上げました。
Anemos(Ανεμος)
アネモス
風神
名前の由来はギリシャ語【άνεμος (anemos)】で、「風」を意味します。
ギリシャ神話では【Ἄνεμοι (Anemoi, Winds)】、東西南北の四風神が存在し、「Anemoi」は「Anemos」の複数形です。
『Moira』の世界でも非常に存在感の強い神で、彼自身や神官、眷属国、そして都を巡るエピソードの中で、多くの重要な事件が展開されています。彼は非常に身内びいきで、自分の神域に属する者が善人か悪人かを問わず、すべて庇護します。彼の神官が刺された際に彼は理不尽に怒りを爆発させ、雨女神と交わり嵐を引き起こし、この嵐によって再会したばかりの双子が引き離され、生きて再び会うことがありませんでした。
眷属国はアナトリア(Anatolia)です。
Ανατολια(Anatolia)
アナトリアは、オリオンが武術大会で優勝を果たした地です。オリンピックに似た競技会なのでしょうか。
また、アナトリアは東方防衛同盟を主導する国だと考えられ、アルカディアと同盟を結んでいます。
「風の都」イリオンはアナトリアに位置し、風神の神殿がある都市として描かれており、そこの変態神官ネストルも物語の中で印象的な役割を担っています。
現実のアナトリアは、現在のトルコ全土にほぼ相当します。ギリシャ神話では、この地域は「小アジア」と呼ばれていました。イリオンのモデルトロイアは、確かに小アジア沿岸に存在しています。
東夷(アナトリアのさらに東、恐らくヒッタイト人の地域)から戻る途中で、エレフはまずアナトリアを経由してイリオンを攻め落とし、その後アルカディアへ進軍しました。
Ιλιον(Ilion)
風の都
イリオンはトロイアの別名として知られています。
青銅器時代末期、ギリシャ人はここを攻めるのに10年を費やしましたが、『Moira』では、アメテュストス将軍が奴隷軍を率いて迅速にイリオンを陥落させました。
トロイアはかつて架空の都市と考えられていましたが、1871年の発掘により実在が証明されました。『Moira』の遺跡発掘エピソードも、この歴史的事件を参考にしたものであると、ミラコンのメモリアルイッシュでほぼ明言されています。
Μακη(Makhe)
マケ
戦女神
名前の由来はギリシャ語【μάχη】で、「戦い、戦争」を意味します。『Moira』では、ギリシャ語の「χ」を「κ」に変更した独自の綴りが採用されています。
ギリシャ神話で権能が近いのは戦神アレス(Ares)でしょう。同時に、争いの女神エリス(Eris)の子孫には戦争の女神たち(Μάχαι, Makhai)が含まれます。英語では複数形で記されることが多いですが、日本語では単数形のマケーとして記されることが一般的です。
さらに、DVDのクイズによると、マケはアマゾン女王アレクサンドラの母でもあります。
眷属国はトラキア(Thracia)です。
Θρακια(Thracia)
トラキアは、現在のギリシャ、トルコ、ブルガリアの国境にまたがる地域です。
『Moira』に登場する眷属国の中で、最北端に位置しています。
実際、最初に「ヨーロッパ」と呼ばれた地域は、このトラキアだったと言われています。
Φοτια(Photia)
フォーティア
火女神
名前の由来はギリシャ語【φωτιά】で、「火」を意味します。
ギリシャ神話で権能が近いのは、火と鍛冶の神ヘーパイストス(Hephaestus)でしょう。
眷属国はマケドニア(Macedonia)です。
Μακεδονια(Macedonia)
マケドニアはバルカン半島南部に位置し、現在では複数の地域に分かれています。一部は北マケドニア共和国として、一部はギリシャ国内にあります。
古代マケドニアはギリシャ北部の王国で、時代とともにその版図が変化してきました。青銅器時代末期(トロイア戦争の時代)には、現在のギリシャのマケドニア地方に近い範囲を占めていたと考えられます。その後、フィリッポス2世の治世に勢力を拡大し、ギリシャ全土を征服しました。さらに、彼の後継者であるアレクサンドロス大王は、広大な帝国を築きました。このエピソードは非常に有名です。
Ge(Γη)
ゲー
地女神
名前の由来はギリシャ語【γη】で、「大地、地球」を意味します。
ギリシャ神話における大地の女神は地母神ガイアであり、「Gaia」は「Ge」の変形です。ガイアの創世神としての権能は『Moira』ではミラに引き継がれ、大地を司る権能はゲーに残されたと考えられます。
眷属国はテッサリア(Thessalia)です。
Θεσσαλια(Thessalia)
テッサリアは、現在のギリシャ中央部に位置する地域で、北側はオリンポス山に接しています(オリンポス山はテッサリアとマケドニアの境界にあります)。
古代には、ここで多くの神話的事件が起こりました。たとえば、「ティーターノマキアー」こと、オリュンポスの神々とティーターン神族の戦いなど。
Phos(Φως)
フォス
光神
名前の由来はギリシャ語【φως】で、「光」を意味します。
ギリシャ神話で権能が近いのは、おそらくアイテール(Aether、輝く上空)です。興味深いことに、ギリシャ神話ではアイテールとヘメラ(Hemera、昼)がエレボス(Erebus、闇)とニュクス(Nyx、夜)から生まれています。
眷属国はアイトリア(Aethria)です。
Αιθρια(Aethria)
アイトリアは現実の地名ではありません。この単語【αιθρία】は「晴れ渡った空」という意味です。
しかし、これは実際にはある場所の別名とされています。その場所は「ロドス島(Rhodes)」です。ロドス島は現在のギリシャ最東端の島です。
一部の考察では、アイトリアが別の地域(エトリア、Aetolia)が関連付けられています。特に、地図上でアイトリアが地女神の眷属国(テッサリア)の下に配置する場合、アイトリアをエトリアと同一視したことになります。これは発音だけに基づく見当違いだと思います。アイトリアの語源はアイテールと同様に"aether"であり、"aether"の語根は"aeth-"ですが、エトリア(Aetolia)にはそのような関連はありません。
この単語自体の意味や、現実の地名ではないことを踏まえると、個人的に光神の眷属国が地上ではなく、空中にある「晴空の国」であるという解釈を推しています。
Dynamis(Δυναμις)
デュナミス
智女神
名前の由来はギリシャ語【δύναμις】で、「力、能力」を意味します。この言葉は「dynamic」などの語源でもあります。
ギリシャ神話で権能が近いのはアテナ(Athena、知恵と戦略の女神)でしょう。
眷属国はボイオティア(Boeotia)です。
Βοιοτια(Boeotia)
現在のボイオティア地方はギリシャの州の一つです。
ギリシャ神話では、この地で多くの事件が発生しました。たとえば、ムーサたちが住むヘリコン山もこの地域にあります。
Hydor(Ὑδωρ)
ヒュドル
水神
名前の由来はギリシャ語【ύδωρ】で、「水」を意味します。
ギリシャ神話では、川の神々が数多く存在し、特定のモデルはありません。『Moira』では、海原女神が担当する海洋を除き、内陸の水域全体をヒュドルが司っていると思います。
『Moira』の中でも非常に存在感のある神の一柱です。彼はなんと生贄を要求する神であり、しかもその生贄に対する要求はかなり高かったようです。明言はされていませんが、スコルピオスが遥々星女神の神域まで出向き、星女神の巫女を生贄に捧げたのは、おそらく水神の神託によるものだったのでしょう。もしスコルピオスが彼に盾を求めた際に彼が生贄の要求をしなければ、ミーシャが命を落とすこともなかったはずです。
眷属国はラコニア(Laconia)です。
Λακωνια(Laconia)
現在のラコニア地方もギリシャの州の一つです。
古代ではスパルタがこの地に存在し、「ラケダイモン(Lacedaemon)」という別名で知られています。
ラコニアはアルカディアと隣接しており、『Moira』に登場する眷属国の中で、ペロポネソス半島に位置しているのはこの二国だけです。そのため、『雷神域の英雄』でラコニアとアルカディアが戦争をしているのも納得です。
現実のスパルタ軍は非常に戦闘力が高く、ペロポネソス戦争ではアテナイ軍に勝利しましたが、『Moira』ではラコニア軍がアルカディア軍に敗れる描写があります。
Brontes(Βροντης)
ブロンテス
雷神
名前の由来はギリシャ語【βροντή】で、「雷」を意味します。
ギリシャ神話には、同名のキュクロープス(単眼の巨人)が登場しますが、『Moira』の雷神のモデルは、ゼウス(Zeus、雷と天空の神)である可能性が高いです。歌詞でも「雷を制す者世界を統べる王と成る」という神託が語られており、雷神の地位が非常に高いことが示唆されています。
眷属国については明言されていませんが、アルカディアであることは間違いないでしょう。曲のタイトルも「雷神域」であり、雷神の眷属たちもすべてこの国に集まっています。
Arcadia(Αρκαδία)
アルカディアは現代のギリシャでは州の一つですが、ギリシャ神話では牧神パーンの住む地として知られています。多くの山岳地帯を持ち、静謐な田園生活に適していることから、理想郷や避世の地として象徴されてきました。ウェルギリウスの『牧歌』やヨーロッパ中世からルネサンス期にかけての文学作品(例:ダンテの『神曲』)では、「アルカディア」という名前はしばしばユートピアの代名詞として用いられています。そのため、『運命の双子』の冒頭でも「後の世に楽園と謳われる詩情溢れるアルカディアの山々」と表現されています。
しかし、『Moira』におけるアルカディアは、決して平和な地ではありません。
英語版やギリシャ語版ウィキペディアでは、アルカディアの語源は英雄アルカス(Arcas)の名前に由来するとされています。
地図で説明するエレフの旅路
以下は地図を用いた説明です。この地図では『Moira』に登場する各眷属国を大まかに示しています。国境の区分は複数の地図を参考にしています。ただし、地図の年代が統一されておらず、版図にも変遷があるため、大まかな位置は問題ないと思いますが境界については厳密ではありません。
光神の眷属国については、アイトリア=ロドス島という仮説に基づき、ロドス島の位置に描かれています。
紫色で縁取られた部分は主要な出来事が発生した三つの場所を示しています。風の都イリオンの位置は神殿のアイコンで示されています。
設定集が欲しい(4回目)。
![](https://assets.st-note.com/img/1736518409-Nuw6msAGJOo2Uitz5cSHR9fC.jpg?width=1200)
エレフは養父母の墓参りをするため一度アルカディアに帰省し、アルカディアでミロスと別れた後、ミーシャを探す旅を始めたと考えられます。そこからレスボスへ向かう際、陸路を使うと確かにマケドニア、トラキアを経由することになります。ミロスの語る危険な情勢のため、エレフは海路を選び、その過程で海賊のエピソードが展開された可能性が高いと推測されます。尺の都合でカットされましたが。
『雷神域の英雄』には「青き銅よりも強かな 鉄を鎧う獣が 風の楯をも喰い破り 流る星を背に 運命に牙を剥く」という神託があります。この神託の前半はいわば「青銅を凌ぐ鉄の鎧を纏った狼が、風の城壁を打ち破る」と、エレフがイリオンの城壁を陥落させたことを語っています。また、『奴隷達の英雄』のラストに「東方より来る足音」という描写があり、この神託に繋がる場面ともなっています。
最も東に位置するアナトリアからさらに東へ進むとヒッタイトが存在します。青銅器時代後期に鉄器の生産技術を所有していたのはヒッタイト人のみでした。さらに、DVDのクイズには「エレフの二番目の恩人」という問題があり、この問題の選択肢には海賊ダモンの名前が登場しましたが、正解は別の選択肢である「鍛冶師Μυρσιλι(Mursili)」でした。「Mursili」という名前は、紀元前1500年頃および紀元前1300年頃のヒッタイト帝国の国王の名前と一致しています。そのため、『奴隷達の英雄』などで描かれる「異民族が統べる鉄器の国(バルバロイ、東夷)」はヒッタイトが該当すると考えられます。
ミーシャを失ったエレフは、各地で奴隷を解放しながら彼らを率いてアナトリアのさらに東へ向かい、そこで鉄の製錬技術を発展させたヒッタイト人と出会い、神託どおり鉄を鎧う獣と化しました。
その後、先進的な鉄器技術を駆使して、東方から旅路を遡る形でまずアナトリアを陥落させ、まだ青銅を使用していた各国を次々に打ち破っていきました。銅の鎧を纏った英雄達を一人ひとり倒し、最後にアルカディアに戻り、物語の幕を下ろしました。
よこやん絵やコンサートの衣装からも鎧の色違いが確認できます。
かの英雄達の戦いは、神託を成就させただけでなく、青銅器時代から鉄器時代への移行を促す結果ともなりました。
出離の目的地から逆の道を辿って帰還するHero's Journeyは、神話から派生したの様式美でもあります。
IV. 詩女神六姉妹
Ιωνια(Ionia)
イオニア
詩女神六姉妹の長女。
名前は中世音楽のイオニア旋法(Ionian Mode)に由来します。この旋法は古代の地名であり部族名でもあるイオニアにちなんでいます。イオニアは古代ギリシャにおいてアナトリア半島中部の沿岸地域を指し、イオニア人という部族名が元になっています。イオニア人はギリシャ四大部族の一つです。
Δωρια(Doria)
ドリア
詩女神六姉妹の次女。
名前は中世音楽のドリア旋法(Dorian Mode)に由来します。この旋法は古代ギリシャの部族であるドリア人にちなんで名付けられました。ドリア人はペロポネソス半島に拠点を置き、スパルタやコリントスなどの都市を建設しました。
Φρυγια(Phrygia)
フリギア
詩女神六姉妹の三女。
名前は中世音楽のフリギア旋法(Phrygian Mode)に由来します。この旋法の名前は小アジア(アナトリア)にかつて存在した古代王国フリギアにちなんでいます。ギリシャ神話では、フリギアにまつわる伝説が多く存在し、「触れるものすべてを金に変える」ミダス王の物語が特に有名です。
Λυδια(Lydia)
リディア
詩女神六姉妹の四女。
名前は中世音楽のリディア旋法(Lydian Mode)に由来します。この旋法は小アジアの古代王国リディアにちなんで名付けられました。リディア王国はイオニアの東側に位置し、最盛期にはアナトリア西部全域を支配しました。
Αιορια(Aeoria)
エオリア
詩女神六姉妹の五女。
名前は中世音楽のエオリア旋法(Aeolian Mode)に由来します。この旋法は古代ギリシャの部族名であり、地名でもあるエオリアに由来します。エオリア人はギリシャ四大部族の一つであり、テッサリア(ゲーの眷属国)の古称でもあります。エオリア人が後に移住したアナトリア西北部の定住地も同名で呼ばれます。
Ροκρια(Rocria)
ロクリア
詩女神六姉妹の六女。
名前は中世音楽のロクリア旋法(Locrian Mode)に由来します。この旋法は古代ギリシャ中部の地名ロクリスにちなんで名付けられました。ロクリスは古代ギリシャにおいてロクリス人の居住地域として知られています。
詩女神六姉妹
六姉妹はまとめて「ハルモニアス(Harmonias)」あるいは「ティスハルモニア(Tis Harmonia)」と呼ばれます。
それぞれが中世音楽の教会旋法の一つを象徴しています。教会旋法は現在の長調・短調の先駆けにあたり、六姉妹はそれぞれ以下の旋法を表しています:
Ionia(イオニア旋法):自然長調(Cメジャースケール)
Doria(ドリア旋法):長調2度音階に基づく旋法
Phrygia(フリギア旋法):長調3度音階に基づく旋法
Lydia(リディア旋法):長調4度音階に基づく旋法
Aeoria(エオリア旋法):自然短調(Aマイナースケール)
Rocria(ロクリア旋法):長調7度音階に基づく旋法
簡単に説明すると、例えばCを主音としたイオニア旋法(C Ionian)は:
C Ionian(イオニア旋法):C D E F G A B(1 2 3 4 5 6 7)→ 自然長調
以降は同様に:
D Dorian(ドリア旋法):D E F G A B C
E Phrygian(フリギア旋法):E F G A B C D
F Lydia(リディア旋法):F G A B C D E
A Aeolia(エオリア旋法):A B C D E F G → 自然短調
B Locrian(ロクリア旋法):B C D E F G A
教会旋法の名称はすべて、古代ギリシャや小アジアの地名や部族名に由来しています。そのため、六姉妹の名前もそれぞれ対応する旋法に基づいています。
これらの旋法名が何のために使われるのかというと、六姉妹それぞれの旋法が『神話』の中での独唱部分の旋律を構成する基礎となっています。たとえば、イオニアが歌うパートはイオニア旋法で、ドリアが歌うパートはドリア旋法で作られています。
教会旋法には、六姉妹以外に「ミクソリディア旋法(Mixolydian Mode)」がありますが、この旋法名はキャラクターの名前として採用されていません。原因は、ミクソリディア旋法は他の旋法の変形であり、独立した基本旋法ではないからと考えられます。教会旋法の基本名は六つであり、六姉妹はこの構造と完全に一致しています。第六の地平線、六柱の女神。
六姉妹の代表色は虹の七色から最初の六色を割り当てられ、最後の紫色は冥王に与えられています。
彼女たちのモデルはギリシャ神話のムーサ(音楽や詩など、技芸を司る九姉妹)であり、役割もほぼ一致しています。ムーサは古典詩や物語の語り手として登場し、詩人がムーサの言葉を記録する形で詩が構成されるという設定が一般的です。
『Moira』においても、詩女神六姉妹は叙事詩の語り手を務めています。叙事詩の作者はミロスですが、物語内では六姉妹が叙事詩を語る形となっており、ミロス自身も「詩女神の言葉を記録したにすぎない」と述べている可能性が高いです。
そのため、コミカライズ版『Moira』冒頭では、ホメロスの『イリアス』の冒頭を引用して「歌え詩女神よ、あの男の怒りを」(原文では「怒りを歌え、女神よ、ペレウスの子アキレウスの」)と表現しています。
六姉妹の五女Aeoria(エオリア)と六女Rocria(ロクリア)の名前の綴りが原典の旋法名と異なり、地名や旋法名に含まれる「L」が「R」に置き換えられています。ネット上では従来、彼女たちの名前が旋法名に倣って「Aeolia」や「Locria」と表記しているのはしばしば見られますが、歌詞カードにおけるギリシャ語の転写に基づく表記の方が適切だと考えます。彼女たち以外にも、出典と異なる綴りが使われている名前が『Moira』ではいくつかありますので。
V. その他の神々
Astra(Αστρα)
アストラ
星女神
名前の由来はギリシャ語【άστρο】で、「星」を意味します。推測するに、"astro"を女性名詞形の"astra"に変えたのではないかと思われます。また、"astra"は"astro"の複数形でもあります。
"astr-"は「星」に関連する語根となっています。asterisk などの単語で馴染みのある方も多いでしょう。
ギリシャ神話上の明確なモデルは特にありませんが、同じ語源を持つ神々がいくつか存在します。比較的に近い存在として、ティーターン神族の星空の神アストライオス(Astraeus)が挙げられます。占星術も彼の権能に含まれていたという説があります。
『Moira』の中でも非常に存在感のある神の一柱です。彼女と彼女の巫女については皆さんもよくご存知でしょうから、ここでは説明は省きます。ミーシャが命を落としたために、彼女は弓矢をオリオンに授けて復讐を託しました。もっとも、『愛咎』ではミーシャは命を落とさなかったにもかかわらず、やはりオリオンに弓矢を授けています……。
初めて登場したのは『星女神の巫女』です。
Brokhe(Βροχη)
ブロケ
雨女神
名前の由来はギリシャ語【βροχή】で、「雨」を意味します。
彼女は風神アネモスとの間に娘テュエラを生み、エレミシャを引き裂いたあの嵐を引き起こしました。
『死と嘆きと風の都』の最後に登場します。
Thýella(Θυελλα)
テュエラ
嵐女神
名前の由来はギリシャ語【θύελλα】で、「暴風雨」「嵐」「ハリケーン」を意味します。
雨女神と風神の娘であり、エレミシャを引き裂いた張本人です。
『死と嘆きと風の都』の最後に登場し、『奴隷達の英雄』でも少しだけ姿を見せます。
Kalla(Καλλα)
カッラ
美女神
名前の由来はギリシャ語【κάλλος】で、「美」を意味します。"kallos"を女性名詞形の "kalla"に変え、女神名として使用したのではないかと推測されます。
レスボス島は彼女と海原女神、太陽神の聖域であると語られています。
おそらくアフロディーテ(ローマ神話のヴィーナス)がモデルでしょう。
『聖なる詩人の島』で登場します。
VI. 冥王とその眷属
Θανατος(Thanatos)
タナトス
冥王
名前の由来はギリシャ語【θάνατος】で、「死」を意味します。
モデルは二柱あります。一つ目は、同名の死神タナトスです。タナトスは「死」という概念を神格化した存在であり、この名前や言葉は後にフロイトが提唱した「死の本能(タナトス)」の概念の由来にもなりました(対になる「愛の本能」は愛の神エロス(Eros、ローマ神話のクピド)に由来します)。2ndアルバムのタイトル『Thanatos』は、この「死の本能」に近い概念を表していると考えられます。
もう一つは冥王ハデスです。ギリシャ神話における冥府の支配者であり、冥府も彼の名前で「Hades」と呼ばれます。ただし、『Moira』においては「Hades」は冥府を指すのみで、冥王の名前は他の神々と同様、その権能を表す「死」という言葉が用いられています。
実際のところ、冥王タナトスの権能や地位はハデスに近いものと考えられます。ギリシャ神話において死神タナトスは、死期を迎えた人間の魂を冥府へ連れて行く役割を担っていました。この役割は『Moira』において骸骨の死神たちが担当しているようです。
ただし、死神のタナトスにはギリシャ神話の中で他の神々から忌み嫌われていたという特徴がありますが、これはハデスとは異なります。
したがって、『Moira』における冥王タナトスの設定は、これら二柱(死神タナトスと冥王ハデス)の要素を融合したものと考えられます。
冥王タナトスご本人は、ギリシャ文字の「θ」に該当します。
μ(Mu)
冥王の右手側の従者です。名前はラテン文字の「m」に該当します。
φ(Phi)
冥王の左手側の従者です。名前はラテン文字の「ph」に該当します。
γ(Gamma)
冥王の前で旗を掲げる従者の一柱です。名前はラテン文字の「g」に該当します。
δ(Delta)
冥王の前で旗を掲げる従者の一柱です。名前はラテン文字の「d」に該当します。
λ(Lambda)
冥王の前で旗を掲げる従者の一柱です。名前はラテン文字の「l」に該当します。
σ(Sigma)
冥王の前で旗を掲げる従者の一柱です。名前はラテン文字の「s」に該当します。
大惨事ではマニピュレーター坂知学の似て非なる存在であり、名字「Saka」が「S」で始まることからこの文字が割り当てられました。
τ(Tau)
冥王の前で旗を掲げる従者の一柱です。名前はラテン文字の「t」に該当します。
ω(Omega)
冥王の前で旗を掲げる従者の一柱です。名前はラテン文字の「o」に該当します
これらは『Moira』のコンサートに登場した6人のダンサーであると考えられます。それぞれの中の人については明らかにされていませんが。
ζ(Zeta)
冥王の前でギターを弾く従者です。名前はラテン文字の「z」に該当します。
Jakeの似て非なる存在であり、名前が「J」で始まることからこの文字が割り当てられました(ギリシャ文字には「J」が存在しません)。
α(Alpha)
冥王の前でベースを弾く従者です。名前はラテン文字の「a」に該当します。
あっちゃんの似て非なる存在であり、名前が「A」で始まることからこの文字が割り当てられました。
κ(Kappa)
冥王の前でドラムを叩く従者です。名前はラテン文字の「k」に該当します。
Ken☆Kenの似て非なる存在であり、名前が「K」で始まることからこの文字が割り当てられました。
ε(Epsilon)
冥王の前でキーボードを弾く従者です。名前はラテン文字の「e」に該当します。
えーちゃんの似て非なる存在であり、名前が「E」で始まることからこの文字が割り当てられました。
ν(Nu)
冥王の前でバイオリンを弾く従者の一柱です。名前はラテン文字の「n」に該当します。
石亀協子さんの似て非なる存在であります。
π(Pi)
冥王の前でバイオリンを弾く従者の一柱です。名前はラテン文字の「p」に該当します。
岡部磨知さんの似て非なる存在であります。
ξ(Xi)
冥王の前でヴィオラを弾く従者です。名前はラテン文字の「x」に該当します。
若松美緒さんの似て非なる存在であります。
ψ(Psi)
冥王の前でチェロを弾く従者です。名前はラテン文字の「ps」に該当します。
佐藤万衣子さんの似て非なる存在であります。
ι(Iota)
冥王の前で朗読する従者です。名前はラテン文字の「i」に該当します。
Ikeの似て非なる存在であり、名前が「I」で始まることからこの文字が割り当てられました。
冥王の眷属には公演の観客全員も含まれます。
VII. 人間
英雄たちの生涯については詳細を割愛します。あまりにも膨大なため、ここでは名前の由来のみに絞ります。多くは一般的な人名ですが、一部はギリシャ神話をモデルとするものも含まれます。
Ελευσευς(Elefseus)
エレフセウス
主人公
名前はギリシャ語【Ελευθερία(Elefthería)】に由来し、「自由」を意味します。名前の後半部分に付いている"-seus"は人名化の接尾辞であると考えられ、ホメロスの英雄オデュッセウスの名前に見られる「~の子」という解釈が一般的です。したがって、Elefseusは「自由の子」と解釈できるのではないかと推測されます。
古代ギリシャ語の発音に基づけば「Eleuseus」と転写されるはずで、『奴隷達の英雄』の英タイトルも『Eleuseus』となっていますが、作中では現代ギリシャ語の発音に従い「f」の音が使われています。
作中にある「自由か死か(Freedom or Death)」というフレーズは、ギリシャ語では「Ελευθερία ή θάνατος(Eleftheria i thanatos)」と書かれ、今もギリシャのモットーとなっています。字面では「Eleftheria or Thanatos」とも解釈できます。このフレーズは『奴隷達の英雄』に使われており、物語のテーマに合うだけでなく、エレフと冥王を結びつける言葉として二重の意味を持っています。
別名Amethystosはギリシャ語【ἀμέθυστος】に由来し、「紫水晶」「酔い覚まし薬」を意味します。
Αρτεμισια(Artemisia)
アルテミシア
主人公
名前はギリシャ神話の月と狩猟の女神アルテミス(Artemis)に由来します。アルテミスは太陽神アポロンの妹でもあります。
エレフセウスとアルテミシアはA/Eのペアとなっています。
Λεωντιυς(Leontius)
レオンティウス
主人公(主要な脇役?)
名前はギリシャ語で「獅子座」を意味する【Λέων(Leon)】に由来します。「-tius」という接尾辞は人名化するためのものです。
歴史上には「Leontius」という名前の人物が存在します。ただし、ギリシャ語では綴りが異なるため、直接の由来とは考えにくいです。
彼の二人の部下の名前も獅子座の恒星の名前に由来しています。
Scorpius(Σκορπιος)
スコルピオス
主人公(主要な脇役?)
名前は「蠍座」を意味するラテン語「Scorpius」に由来します。スコルピオスは「蠍」のラテン語です。
Οριον(Orion)
オリオン
主要な脇役
名前はオリオン座とそのモデルであるギリシャ神話の狩人オリオンに由来します。ただし、オリオン座のギリシャ語の綴りは【Ωρίων】で、『Moira』の名前では「ω」が「ο」に変更されています。
オリオンの神話には有名な二つの伝説があります。一つ目は、彼が女神アルテミス(ミーシャの名前の由来)に愛されていたものの、誤って彼女に殺されてしまったという話です。アルテミスは深く後悔し、オリオンを星座にしたとされています。なので星女神がオリオンにミーシャの仇討ちを託したのは、理にかなった展開です。
二つ目の伝説では、オリオンが「自分に狩れないものはない」と豪語したため、大地母神ガイア(別の説では女神ヘラ)が怒り、蠍を送り込んで彼を刺殺しました。この蠍は後に蠍座となり、オリオンとスコルピオスは「宿敵」として語られるようになりました。
星座としても、オリオンは冬の星座、スコルピオスは夏の星座で、一方が昇るともう一方が沈むため、決して同時に見えることはありません。このように常に一方が見えない状況が、二人の宿敵関係を象徴しています。
これは『Moira』および『愛咎』の両方にも反映されており、二人は宿敵として描かれています。また、出典と同様に、どちらの作品でもスコルピオスがオリオンを殺しています。
Δεμετριυς(Demetrius)
デメトリウス
アルカディアの王であり、エレミシャレオスコの父。
名前はギリシャ語の人名で、農業の女神デメテル(Demeter)に由来し、「デメテルに献身する者」を意味します。
Isadora(Ισιδωρα)
イサドラ
アルカディアの王妃であり、エレミシャレオの母。
名前は一般的な人名で、「イシスの贈り物」を意味します。
Castor(Καστωρ)
カストル
アルカディアの双璧勇者の一人。
名前はギリシャ神話の英雄カストル(Castor)に由来します。
Polydeuces(Πολυδευκης)
ポリュデウケス
アルカディアの双璧勇者の一人であり、エレミシアの養父。
名前はギリシャ神話の英雄ポリュデウケス(Polydeuces)に由来します。
カストルとポリュデウケスはギリシャ神話における双子の英雄で、双子座の由来とされています。双子座のα星とβ星も彼らにちなんで名付けられました。『Moira』でもこの二人は双子として描かれています。
Delphina(Δελφινα)
デルフィナ
エレミシャの養母。
名前はラテン語の人名で、「デルフォイの出身」という意味があります。デルフォイはアポロン神殿があったことで有名な場所です。
Regulus(Ρηγουλος)
レグルス
レオンの部下の一人。
名前は獅子座α星に由来します。全天で21番目に明るい恒星です。
Zosma(Ζωσμα)
ゾスマ
レオンの部下の一人。
名前は獅子座δ星に由来します。
レオンの部下二人の名前は、どちらも獅子座の恒星名に由来しています。
Sirius(Σειριος)
シリウス
アメテュストスの部下の一人。
名前は「全天で最も明るい恒星」に由来します。星名の語源はギリシャ語【σείριος】で、「熱烈、灼熱」を意味します。
Orph(Ορφ)
オルフ
アメテュストスの部下の一人。
名前はギリシャ神話の人名オルフェウス(Orpheus)に由来し、略称として使われています。"orph-"はオルフェウス関連の語に使われる接頭辞です。
オルフェウスは非常に有名な人物であり、その詳細についてはここでは省略します。
オルフの容姿や名前、ジャケットで明かされた竪琴のスキルに加えて、『神話の終焉』で冥府の扉が開かれる際に流れる『魔女とラフレンツェ』の旋律などから、彼と4thアルバムのオルフェウスを容易に結び付けて考えることができます。
Ilios(Ιλιος)
イリオス
イリオンを守る指揮官で風神の眷属。オリオンの死後にその役割を引き継ぎました。
シリウスとオルフからは「猪突猛進しか知らぬバカ」と評価されています。
名前はイリオンの別名である「イリオス」から来ています。イリオンとイリオスはどちらもトロイアの別称です。
Αλεχανδρα(Alexandra)
アレクサンドラ
アマゾンの女王で、レオンティウスを気に入っています。
名前は一般的な人名で、ギリシャ語【Ἀλέξανδρος(Alexandros)】に由来し、「人間を守る者」を意味します。
彼女は戦女神マケの娘でもあります。
Amazon(Αμαζων)
アマゾン
『Moira』では「北狄」または「女傑族」として描かれる、全員が女性の戦士部族。
ギリシャ神話におけるアマゾン人がモデルです。神話では、すべて女性で構成される戦士部族であり、女王ヒッポリュテに率いられていました。
Μιλος(Milos)
ミロス
エレフの師匠であり、叙事詩の作者。
名前の語源は明確ではありません(どう調べても「ミロス島」しか出てきませんが、直接的な語源とは考えにくいです)。
モデルとしてはホメロスが挙げられるでしょう。ホメロスは盲目の詩人として知られ、『イリアス』や『オデュッセイア』の作者とされています。『Moira』におけるミロスも盲目の詩人であり、彼が書いた叙事詩『Elefseya(エレフセイア)』のタイトルは、『オデュッセイア』を彷彿とさせるものです。
ミロスは歌詞カードで「暗誦詩人」と呼ばれ、古代ギリシャにおける口承詩人の伝統を示しています。ホメロスも同様で、古代ギリシャの詩人たちは口頭で詩を吟唱し、口承によって伝えられましたが、文字による記録は残されていませんでした。
Σοφια(Sophia)
ソフィア
詩を詠む聖女であり、ミーシャの師匠。
名前は一般的な人名で、ギリシャ語【σοφία】に由来し、「知識、技能」、さらには「智慧」を意味します。
モデルは古代ギリシャの詩人サッポー(Sappho)と考えられ、Sophiaの経歴はサッポーの生涯をほぼ反映しているといえます。サッポーはレスボス島出身で、高い名声を誇った女性詩人です。後世の記録では、彼女が女性同性愛者であったと伝えられており、レスボス島の名前が由来となって「lesbian(レズビアン)」という言葉が女性同性愛者を指すようになりました。また、サッポーの名前「Sappho」から派生した「sapphic」も、同様に女性同性愛に関連しています。
ただし、ソフィアがレスボス島出身であることからこの設定が生まれたのではなく、むしろその逆であり、モデルとなったサッポー自身がこの背景を持っていたため、自然にこのような設定が与えられたと考えられます。
Λεσβος(Lesbos)
レスボス島
エーゲ海にある島で、遺跡や美しい風景で知られていますが、最も有名なのはサッポーの存在とLGBTの聖地としての評価です。サッポーがレスボス島を象徴する人物であることが理由です。
Phyllis(Φυλλις)
フィリス
最初はソフィアのそばに仕え、その後ミーシャと共に星女神殿に居る人物。
名前はギリシャ神話の人物フィリスに由来し、その名前はギリシャ語【φύλλον】(葉)に由来します。
神話において、フィリスはアーモンドの木に関連した伝説を持つ人物です。
Κατια(Katia)
カティア
星女神殿に仕える女性の一人。
名前はギリシャ語の名前【Αικατερινη(Aikaterine)】から縮約され、英語の「Catherine」を含む一連の名前と同じ語源を持ち、ギリシャ語【καθαρός】に由来しています。この言葉は「清潔」や「純粋」を意味します。
Λενα(Lena)
レナ
星女神殿に仕える女性の一人。
名前はギリシャ語の名前【Ἑλένη(Helenē、ヘレネ)】に由来し、「火の光」や「松明」という意味があります。
Κασσανδρα(Cassandra)
カッサンドラ
高級遊女の一人。
名前はギリシャ語の人名に由来し、一説には【κεκασμαι(kekasmai、照らす)】と【ανηρ(aner、人)】の組み合わせで「人々を照らす」という意味を持つとされています。
神話では、カッサンドラは予言者として知られるトロイアの王女です。
Μελλισα(Mellisa)
メリッサ
高級遊女の一人。
名前はギリシャ語【μέλισσα(mélissa)】に由来し、「蜂」を意味します。
神話では、この名前を持つニンフが登場し、蜂や蜂蜜に関連する存在とされています。
Νεστορ(Nestor)
ネストル
一度しか登場しないものの、非常に印象的な変態神官。
名前の綴りはDVDのクイズにて示されました。ギリシャ語の人名であり、【νέομαι】(帰還する)と【νόστος】(帰郷)を組み合わせた意味を持つとされています。
神話では同名の人物が登場し、知恵深い老人として描かれることが多いですが、『Moira』のネストルとはまるで正反対…。
Δαμον(Damon)
ダモン
エレフと知り合う海賊。
『Moira』本編には登場しませんが、設定上は存在しており、『Nein』で正式に登場を果たしました。
設定集が欲しい(5回目)。
『Moira』コンサートのメモリアルイッシュでは、エレフが海賊だった時期があったものの、尺の都合でカットされたと明かされています。その後、DVDのクイズで「エレフの二番目の恩人」という問題があり、その選択肢の中に海賊Δαμονの名前が含まれており、ここで彼の名前の綴りが提示されました。
名前はギリシャ語の人名であり、語源は【δαμάζειν】(征服する、制御する)に由来します。
ギリシャ神話上の人物ではありませんが、この名前の持ち主には「ダモンとピュティアス」という友情に関する有名な伝説があります。この伝説では、ダモンが親友ピュティアスの代わりに命を差し出そうとする姿が描かれており、英語では『Damon and Pythias』として、深い友情を表す慣用句となっていて、海賊が関与する要素も含まれています。
ダモンの名前はこの伝説の登場人物の義侠心や海賊要素から着想を得た可能性があります。
VIII. 神話の外側にいる人物
Алэксэй Романович Зволинский(Aleksey Romanovich Zvolinsky)
アレクセイ・ロマノヴィチ・ズヴォリンスキー
「ハラショー、ハラショー!」
名前「Aleksey」はギリシャ語の名前【Αλεξις】に由来し、「助ける者、守護者」という意味があります。
「Romanovich」は父称であり、彼の父が「Romanov」という姓であることを意味します。「Romanov」は「Romanの子」を意味します。また、Romanovはロシアの最後の皇室の姓でもあります。
姓「Zvolinsky」は日本語の「ずぼり」や「好き」の発音に近い響きを持ち、「好き」を指す言葉の代わりに彼が使うことも多いです。
ズヴォリンは、トロイア遺跡を発見した考古学者ハインリヒ・シュリーマンをモデルとしていると、メモリアルイッシュでほぼ明言されました。シュリーマンは幼少期から神話に強く惹かれ、商人として成功した後、トロイアの発掘に着手しました。ズヴォリンの経歴には、シュリーマンの人生と共通する部分が見受けられます。
Ειρηνη(Eirene)
エイレーネ
ズヴォリンの妻。ギリシャ語の名前から、ギリシャ系である可能性があります。
名前はギリシャ神話のホライ(季節の女神)の一柱であるエイレーネに由来し、「平和」を意味します。
彼女もまたシュリーマンの妻ソフィアをモデルとしていると考えられます。アレクセイとエイレーネもA/Eのペアとなっています。
だから生まれてくる子供の名は、遠い昔にもう決めてあるのも納得ですね。
Arthur Michel Renfrew
アーサー・ミシェル・レンフルー
隠しトラックの謎解きに登場する英国の考古学者。
ロシア人から石板を譲り受け、その石板に詩句が記されていました。彼の死後、妻が彼のメモを発見し、その内容と石板の詩句を組み合わせることで『神の光』への手がかりとなります。
この名前から、彼はミノア文明の遺跡を発掘した考古学者アーサー・ジョン・エヴァンズがモデルである可能性があります。エヴァンズはシュリーマンの影響を受けた後継者でもあります。
姓「Renfrew」はスコットランドの都市レンフルーから取られている可能性があります。
ミドルネーム「Michel」は、ミシェル(Michèle)と同源であり、ミカエル(Michael)に由来します。
Elys
エリス
アーサー・レンフルーの妻。公式でエリスの名前の綴りが最初に示されたのはここ。
名前は「Elysia」の変形であり、ギリシャ語【Ἠλύσιον】に由来します。これは「エリュシオン」を意味します。
この二人もA/Eのペアで、うち一人の名前が「Elys」であり、一人のミドルネームが「Michel」である点も興味深いです。
Хроника Романовна Михайлова(Chronica Romanovna Mikhailova)
クロニカ・ロマノヴナ・ミハイロヴァ
叙事詩のロシア語訳版の翻訳者。
名前「Chronica」は、皆大好きな黒の予言書の意志であるニカ様です。「Chronica」はラテン語であり、「年代記(chronicle)」を意味します。
「Romanovna」は女性形の父称であり、彼女の父が「Romanov」という姓を持つことを意味します。上述の通り、「Romanov」は「Romanの子」を意味し、ロシアの最後の皇室の姓でもあります。
姓「Mikhailova」は「Mikhailov」の女性形であり、「Mikhail(ミカエル=Michael)の子」を意味します。
またしてもミカエル(Michael)ことミシェル(Michèle)と関連していますね。
以上で、『Moira』に登場するすべての名前に触れられたと思います。
こんなにも多くの神々や人間、勢力について考察するだけでも相当な時間がかかるのに、あの黒眼鏡の創造主がこれをひとりで考え出したとは……しかもこれの数倍の設定が彼の頭の中に詰まっていると思うと、感嘆せざるを得ません。
設定集が欲しい……!(6回目)
もし誤りや抜けが見つかった場合は、ぜひご指摘ください。