重症脳梗塞からの回復記6ー外で食べること①
昨日の出来事
真冬の階段騒ぎもおさまり(重症脳梗塞からの回復記録2を見てくださいね)、日常が少し活動的になりました。暖かい日は、できるだけ外に出るようにしています。昨日は近くにあるショッピングセンターに出かけました。中に入っているファミリーレストランのランチがお目当てです。
土曜日なので、たくさんの人で賑わっているようです。駐車場に入ったら、入り口にすでに「満」の文字が出ていました。この駐車場は、エレベーターの近くに身障者用のスペースがあります。そこはどうかなと思って入ってみたら、きちんと空いてました。たくさんの車が空いてるところを探して通り過ぎて行きますが、身障者用スペースは大事にしてくれているようです。いい時代になった、としみじみと思いました。
私たちが住んでいるところはそれほど都会ではないので、14年前に発症した時、身障者が街に出ること自体があまりなかったように思います。だから、身障者用スペースも普通に使われていることは多々ありました。街を歩くと、じろじろみられることも少なくなく、当時高校生だった娘が父親を車椅子に乗せて押して行った時、上から下までじろじろとみられた、といって悔しそうに帰ってきたこともありました。娘は、悲しかったのだと思います。
今は車椅子で出かけても、じろじろみられたり、みないフリをされることはなくなりました。日常の景色の一つに入り込んでいるのかなと思うと、嬉しくなります。
みなさんが身障者用スペースを尊重してくれているおかげで、私たちは今回も満車の駐車場の中で苦労せずに車を止めることができました。
お手伝いしましょうか?
車椅子を下ろして、ドアを開けて、車椅子に移乗しようとしたときのことです。男の子を二人つれた男性が、その様子をチラッとみて通り過ぎました。「さ、ちょっと立ってね。私につかまっていいからね」と声をかけながら、ヨイショッと夫を立たせようとしたときに、「お手伝いしましょうか?」と聞こえました。振り返ると、さっきの男性が戻ってきていました。
「え?」と嬉しいながらも戸惑った私にニコニコしながら、「大丈夫ですよ、さ、私につかまってください」と夫に声をかけました。夫の両足の間に自分の足を入れ、肩につかまらせて夫を立たせるその動作は、もしかしたらプロの方かもしれないと思うほどに上手でした。体の細い私とは勝手が違うので、夫は安心して体を預けて、無事に車椅子に移りました。一瞬のことでした。「ありがとうございますー!」とただありがたくてお礼を言う私に、「いやいや」とその男性はニコニコしています。その時、男の子二人が、「すげー」「さすが園長先生」と嬉しそうに言ってました。
園長先生、だったんですね。子供さんたちにとっても、彼の行動はとても心に残るものだったんじゃないかと思います。「ありがとうございます」としか言えなくて、どこのどなたかを訊こうとしたときには、彼はササッと子供たちをつれて行ってしまいました。この出来事で、心はふんわりほっこりです。
街の中にある思いやり
今はいい時代になったなと思います。身障者用駐車場が空いているだけで、嬉しいと思うのに、さっと手伝ってくれるその自然さと思いやり。こういうことを日常で多々経験するようになりました。段差があって、車椅子を押し上げるのに苦労していた時、力持ちそうな男性が手伝ってくれたこともありました。街の中に出て、ちょっと困った時見渡すと、「何かお手伝いできます?」という温かい目線で見ていただけることも少なくありません。ありがたいことです。
社会の中で食べる美味しさ
そんなわけで、安心して車椅子に乗り移り、ファミリーレストランに行きました。たくさんの人で賑わっているフードコートの中で、夫はカツ丼を、私は久しぶりに天丼を注文しました。車椅子を押していくときも、人々がさりげなくよけたり、座っている椅子を邪魔にならないように動かしたりしてくれます。「ありがとうございますー」と言いながら、人混みの中をスイスイ動きます。そうして見つけた空いてる席で食べるカツ丼や天丼は、とてもおいしいです。テイクアウトで持ってくることもできるし、もちろん自分でも料理します。けど、人の中に出て行って、景色の中の一部となって食べると言うことが、この病気をした人間には大事なんじゃないかと思います。たぶん、単に食べること、だけではなく、それ以上に、大きな障害を背負っていても社会の一部である、ということを、思い出させてくれるからじゃないかな、と思ってます。