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糖尿病専門医試験受験のススメ③

どーもみなさん、えとえんです。

さて今回は糖尿病専門医試験の一次審査(書類審査)についてお話しようと思います。
糖尿病専門医試験には書類審査である一次審査と、筆記・口頭試験である二次審査に分かれています。

一次審査で落ちたという事例を聞いたことはありませんが、審査はかなりねちっこ厳しく、再々提出もありえますので(私だ)、気合を入れて書くことをおすすめします。

専門医試験の書類は早めに入手しよう

専門医試験の申請書類は糖尿病学会のホームページから入手できます。毎年書類の内容は更新されているので、前年度をそっくりそのままコピペはできません。とはいえ、症例報告と症例記録の必要症例については大幅に変わることはないため、受験する前年度から症例を集めておくことをオススメします。
2021年度は4月7日にお知らせが掲載されていました。提出期限は4月1日から6月30日で、おおよそ3ヶ月の猶予があります。(実際はすでに1週間経過していましたが)

申請書類の内容は、
a. 専門医申請書
b. 履歴書
c. 業績目録
d. 教育施設研修終了証明書
e. 研修指導医の推薦書
f. 症例報告
g. 症例記録
h. 糖尿病患者教育活動に関する報告書
i. 医師免許証のコピー
j. 認定内科医証or総合内科専門医証 (小児の場合は小児科専門医証)
k. 受験票発送用封筒・受験票用の写真1枚
l. 研修カリキュラムチェックリスト
となっています。
新専門医制度が始まっているため、2022年度は少し変更があるかもしれませんが、すでに専門医制度の先生方も受験されていることからして、大筋は変わりないでしょう。

書類は多めにはなっていますが、自前で準備できるものが多いので、そこまで申請のハードルは高くありません。が、d.教育施設研修修了証明書、e.研修指導医の推薦書、g.症例記録、l.研修カリキュラムチェックリストは指導医のサインが必要なので、早めに準備しておきましょう。私は出向中だったため、同期にお願いしてサインをもらいました。

症例報告はpdfファイルとの戦い

症例報告と症例記録。この2つ、わかりにくいですよね。ざっくりいうと症例報告が外来で担当した30症例で文献考察が不要な短いレポート、症例記録が入院中に担当した10症例で文献考察が必要なちょっと長めなレポートです。

症例報告は申請時に主治医として診療しているか、申請から6ヶ月以内に診療した症例の縛りがあります。30症例のうち10症例については6ヶ月以上前でも使用可能です。

症例の内容についての縛りはゆるく、内科の場合は1型糖尿病増殖前網膜症以上の糖尿病網膜症3期以上の糖尿病性腎症合併例が1症例以上あれば問題ありません。

注意事項にあるように、病像は多岐にわたって記載することが望ましいと考えられます。1型、2型、妊娠、膵性、高度肥満、透析、二次性糖尿病など多種多様な症例を折り込みましょう。

「複数施設の症例であることも望ましい」とまことしやかに噂されていましたが、学会に問い合わせたところ、単一施設でも問題ないとの回答でしたので、施設数は問題にならないようです。とはいえ、単一施設で提出する勇気はなかったので2つの施設で提出しました。(それでも〇〇病院の症例が多いね、と突っ込まれましたが)

書類は入力機能付きのpdfファイルに入力していくのですが、これがまたちょっと使いにくいんですよ。記載する部分は細かく別れているのですが、薬剤名は8文字以内という謎ルールがあり、最近の薬剤にフィットしてないのです。例えば「エンパグリフロジン」と入力しようとすると、文字数が足りなくて「エンパグリフロジ」になってしまい、GLP-1受容体作動薬で週1製剤仕様のため、セマグルチド0.5mg/週と入力しようとすると、「セマグルチド0.5m」となってしまうという、なんとも情けない表示に。注意事項には適宜省略するようにと記載はありますが、さすがにエンパとか、セマグルとかの省略は心苦しいので、足りない部分は手書きで記載しました。特に指摘されることもなかったので、もしお困りの方は手書きにしてみてください。

脂質異常症や腎症については結構突っ込まれます。あと、アルコール由来の膵性糖尿病はよほどの精査をしていないと証明ができないため、記載するときは細心の注意が必要です。インスリン依存・非依存についても厳しくチェックされるので、明らかに依存だと自信を持っていえないときは依存とするのは控えたほうが好ましいです。

30症例と聞くと、ちょっと身構えるかもしれませんが、記載する部分は限られており、意外とすんなり終わります。むしろ病態について100-200文字でまとめる部分が大抵オーバーするので、あまり複雑な症例を選ばないほうが無難です。

症例記録は毎年マイナーアップデートがされている

「レポートなんざ過去レポ使えばええんやで」という皆さんの希望を打ち砕くために作られているんでしょう。症例記録のフォーマットは毎年更新されています。

2019年まではA4が2枚で済んでいたのに、2020年では3枚になり、2021年では文字サイズが変更されました。

そのため、過去レポをそのまま移植することはできません。ちゃんと自分で書く必要があります。とはいえ、考察の行数はそこまで多くないため、考察の記載を埋めることはそこまで時間がかかりません。使用する文献も平均3編程度、多くても5編くらいなので、本気でやれば一ヶ月程度で終わります。

症例を書くこと自体よりも、症例を集めるほうがハードルが高いかもしれません。症例の内訳は、全身麻酔を使った手術症例、急性期における糖尿病管理症例、インスリン依存状態の1型糖尿病の3例に加えて、②DKA・HHSから1例、③妊娠・感染症・肝疾患・難治性高血圧・著明な脂質異常症・高度肥満症・高齢者・20歳未満から3例、④末期腎不全・糖尿病網膜症・糖尿病性神経障害・重症動脈硬化性疾患から2例、⑤二次性糖尿病・治療による低血糖症・10年以上の長期観察・自己管理困難から1例となっています。

特に⑤が一般市中病院ではなかなか見当たらないこともあるので、当てはまりそうな症例があれば早めのうちにキープしておくと良いでしょう。同一症例を複数の申請者が使用することはできないため、同じタイミング受ける先生方とどの症例を使用するのか、情報共有しておくことが大切です。

②〜⑤の症例についてはどれを使用してもよいです。先輩からは妊娠糖尿病や二次性糖尿病が書きやすいからとそれらの使用を勧められましたが、結局使いませんでした。

実際の経過はどうだったか

人によっては1年前から準備を始めるようですが、私は労働衛生コンサルタント試験が2月まであり、試験後は転居をしたことも重なって、実際に準備を始めたのは3月からでした。

3月は症例記録のための症例を集めることで精一杯でした。糖尿病治療は毎年新たな治療薬やガイドラインが出てくるため、2年以上前の症例では治療法が古くなっていることも考慮し、直近2年間の症例としました。幸い、入院症例は潤沢にあり、各種検査が抜かりなく行われていたため、症例に困ることはありませんでした。むしろ、症例の条件がオーバーラップしており、どの症例をどの分野に使うかについて迷う時間のほうが長かったように思います。

4月から症例記録を実際に書き始めました。とはいえ、職場が変わった影響もあり、本腰を入れることができたのは4月の後半からでした。とりあえず、一つの症例を書き上げて、先輩に添削してもらったところ、「遅くない?」と本気で心配されました。

5月から、「結構やばいのかも…」と思い始め、ペースアップ。症例のサマリを個人情報を抜いて大学から持ち帰ってましたが、大抵抜けがあるんですよ。その当時の自分を恨みながら、大学に戻ってデータを回収していました。ゴールデンウィークはほとんどレポートに費やしており、5月病になる暇さえ与えてくれなかったです。

その頑張りのおかげで5月中に症例記録は終わり、6月から症例報告に取り掛かることができました。症例記録は目についた症例を片っ端から入力し、1週間程度で無理やり終了。症例記録は上司に添削を依頼し、6月中旬には教授にサインをもらうことができました。有難いことに教授からもご添削いただき、最終的には6月末ギリギリになってしまったのですが…。封筒に「専門医書類在住」と朱書きし、提出。オレンジ色のペンで書いたため少し不安になりましたが、無事届いていたようです。

提出後、8月に一度目の再提出せよとの連絡が。このときはまだ「たいてい一回は再提出もなるよね〜」と余裕綽々でした。ちなみにA4用紙に査読者からの質問が1行程度のシンプルな形で書かれており、そこに対してワードなどで作成した返答と、加筆修正したレポートの提出を求められます。不幸なことに、ちょうどお盆の時期に被ってしまい、教授のサインをゲットするのが極めて困難な状況に追い込まれました。急いで学会に問い合わせし、サインは不要との返答があり、一安心。(自分の中では)完璧な回答を提出し、これで試験勉強に取りかかれると慢心していました。

8月末日、それは突然やってきました。糖尿病学会からメールが届き、再々提出せよと。添付ファイルを開くと、1回目とは打って変わって、何行にも渡るダメ出しが…。「あ、これもしかして書類落ち、ありうる」と血の気が引いたのを覚えています。

慌てふためきながら教授に連絡、半泣きになりながら指導を頂き、もはやほとんど教授が書いてんじゃないかというレベルの回答を作成。お祈りしながら再提出と相成りました。

再々提出後、勉強が全く手につかず、「これ、書類で落ちたら来年も落ちる気がする…」などとネガティブスパイラルに。今思えばそんな事考えずに勉強してればよかったです。そして9月中旬、家でだらけていたところ、突然書留が。見覚えのある自分で書いた封筒が帰ってきており、恐る恐る開封したところ、中には受験票が入っていました。受験票があまりにもちゃちくて「何やねんこれ」と思わずひとりごちました。

こうして、紆余曲折ありましたが、無事書類審査を突破することができました。再々提出になってしまった敗因としては、再提出時の質問に対して、①素直に間違いを認めなかったこと、②不必要なことまで記載したこと、この2点に尽きます。どこかで慢心があったのだと、その結果だと思いました。

今後受験をされる先生方に置かれましては、再提出になった場合は、素直に間違いを認めて、不必要な記載はしないよう、ぜひとも心がけてください。

長くなりましたが、以上が書類審査合格までです。
次回からは胃痛に苦しみながら戦い抜いた筆記試験の勉強内容について記載したいと思います。

それでは、このへんで。ではでは。

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