”誰でもトイレ”から見える、本当の多様性
10月13.14日、私の在籍している大学で大学祭がありました。
私達”えとせとら”も研究室公開として出展させていただき、これまでの活動の展示やワークショップを行いました。
”えとせとら”は地方学生が運営するSOGIを広めるためのプロジェクトです。
そのワークショップの名は
ロゴマークを考えてみよう~みんなの「だれでもトイレ」~
「だれでもトイレ」
昔は「車椅子対応トイレ」という名前でした。
一見障害者の方に配慮され、バリアフリーが進んだトイレのように見えますが、
”障害のある方でないと使ってはいけない”
というタブーを作ってしまい、当事者自身も含め、使いづらさがありました。
そこ改良されたのが「だれでもトイレ」
「多機能トイレ」とも呼ばれたりします。
内装は「車椅子対応トイレ」と同じ場合が多いですが、マークが変わっている自治体や施設も存在します。
また、「ジェンダーフリートイレ」といったLGBTのニーズに沿ったトイレも存在します。
そこで、ぜひ来ていただいた方には、”「だれでもトイレ」のロゴマークを考えてもらおう”と言うのが今回の企画でした。
自治体や施設によってマークのバリエーションがあり、旅行の際に少し気にかけて見てみるといいかもしれませんね。
トランスジェンダーが抱える「トイレ事情」
2018年、TOTO調査におけるトランスジェンダーのトイレ使用に関するアンケート調査(複数回答可)においては
トイレに入る際の周囲の視線が気になる、が31.1%、
実際に指摘や注意を受けてことがある、が23.5%
男女別のトイレしかなく困る、が21.4%
男女別のトイレの場合、トランスジェンダーの方は”どちらのトイレを使うか”に迷ってしまうのです。
そこで、セクシャリティの指定がない「誰でもトイレ」は、使う側にとっても気兼ねなく使えるトイレなのです。
”だれでも使っていい”とは、もちろんトランスジェンダーも使用できます。
ジェンダーを超えた様々な多様性
たまにあるのが「全部がだれでもトイレになって、男女の境界がなくなれば良い」という意見があります。
本当にそうでしょうか。
新しい価値観だけを残し、従来の価値観をなくすことが”多様性”でしょうか。
とある小学校教員の取り組みを紹介します。(保育者 学校・病院で必ず役立つLGBTサポートブック はたさちこ 藤井ひろみ 桂木祥子 著者)
その方がセクシャルマイノリティの存在を知った時、トイレや更衣室といった”男女”に分けないといけない時、必ず「もう一つの場」を用意することを取り組みました。
中には「いるかいないか分からないから無駄なのでは?」という意見もありましたが、結果として「もう一つの更衣室」が誕生しました。
では、実際に「もう一つの更衣室」を利用したのは誰だったでしょう。。。
トランスジェンダーの子ども?
いいえ
それは、かつて心臓手術の傷跡を友達に見られ、”気持ち悪い”と言われた経験を持つ子どもでした。
その子の現状を知った友達は「そんなん言う子、おらへんで!おっても私たちが怒ったる!それにな、それ、頑張って手術した証やろ?気持ち悪いとか関係ないやん!」
と言ったそうです。
その翌日から、その子は「もう一つの更衣室」を使わずに、友達と一緒に着替えるようになったそうです。
そしてこのような学校の取り組みが子どもたちのカミングアウトに繋がることで
「もう一つの更衣室」を不要としたのです。
「誰が使うのか」ではなく「使うことができる」ことの大切さ
これを踏まえると、改めて
無くす、ではなく、選ぶことが出来ることの大切さ、がいかに大事かを暗示しています。
結果として「みんなの更衣室」がなくなると言う着地はかなり面白い事例ですが
生徒たちは学校の取り組みによって、「みんなの更衣室」と言う選択肢の一つから、子ども達自身が出会い直しを図り「みんなの更衣室」が不要だと”選んだ”のです。
男女別のトイレが存在することで、”安心”する方もいらっしゃいます。
どのトイレを”使わないといけない”ではなく、どのトイレを”使うことができるか”
その選択肢として「だれでもトイレ」が存在するのです。
これらを踏まえての、だれでもトイレとは一体なんなのでしょう?
トイレに限らず、みんなが使いやすい場とは何か、これらを各個人規模でも考慮し、実現できれば、”多様性”がより豊かになるのでは、と考えています。