ブロードウェイミュージカル『Come From Away』で英会話
2001年9月11日、同時多発テロ事件発生で米国は全空域を閉鎖。これにより迂回を命じられた38機の旅客機と7千人の乗員乗客を受け入れたのは、カナダ北東部のニューファンドランド島にあるガンダー国際空港でした。
ガンダーは人口1万人足らずの小さな町です。突然、町の人口とほぼ同数の訪問客を迎えることになったわけですから、7千人が宿泊できるホテルも、利用できる交通手段もありません。
しかし、機知にとんだガンダーの人々の前向きで素早い行動により、遠来の人々を温かく迎えるための準備が進められました。
全ての公共施設は避難宿泊所となりました。7千人の来訪者を運んだのはスクールバスでした。空港を何度も往復もして彼らを運びました。
人種も宗教も食生活も異なる様々な人がガンダーの町に集まりました。言葉の問題もありました。
バプテスト教会は、モルドバから来た40名の乗客を受け入れました。彼らはロシア語しか話すことができず、不安でいっぱいでした。その時、ガンダーの人にこんなアイディアが思い浮かびました。
ロシア語も英語も聖書には同じ番号がふられています。聖書をめくり同じ聖句を読んだモルドバ人の表情に初めて笑顔が浮かびました。
もともとニューファンドランドに定住していた人々は、裕福でも教養があったわけでもありません。彼らは魚を求めてやってきたのです。イングランド南部の海岸沿いの町、プリマスやブリストル、プール、そしてアイルランドの西海岸、バリーバニオンやウォーターヴィル、ゴールウェイなどの出身です。ボートに乗り大西洋を横断し最初に辿り着いたのが、ニューファンドランド島でした。
彼らは厳しい天候に見舞われながら、生き残るために隣人と隣人が助け合うことを学んできました。荒涼とした、しかし美しい島で生き残る唯一の方法は、お互いに協力することでした。最初の入植者たちがこの地に到達して以来、この精神は何世紀にもわたって培われてきました。
ニューファンドランドの人々が好んで話すエピソードがあります。1942年2月18日、アメリカの駆逐艦USSとその補給艦ポルックス号は、激しい嵐に見舞われ、ニューファンドランド島南岸にあるビュリン半島の崖下で座礁しました。両船は大破し193人の船員が溺死しました。他方、島の人々は身の危険を顧みず、氷に閉ざされた崖を下り、救助を試み186人の船員の命を救いました。
ニューファンドランド島の人々は、何世紀にもわたり、労働者階級の英語とアイルランド語を混ぜ合わせたような、独自のスタイルと言語を作り上げてきました。”Dictionary of Newfoundland English”と言う辞書があることからも、その特殊さが分かります。
※”Dictionary of Newfoundland English”
実は、この"Newfoundland"の発音も難しいとのこと。"New Found Land "のように3つの異なる単語であるかのように発音されることはありません。また、スカンジナビアの"New Finland "のように発音されることもありません。これは正しくは、"Newfin-land "です。
"Newfoundland"の発音で重要なのは、とても速く言うことだそうです。発音のヒントになるのは、 "Understand Newfoundland."(ニューファンドランドを理解しよう)というフレーズ。"Understand"と"Newfoundland"という2つの単語は韻を踏んでおり、発音も似ているそうです。
このニューファンドランド島の人々の9.11での行動を題材にしたブロードウェイ・ミュージカル『カムフロムアウェイ』(Come From Away)が、日本で初めて公演されます。ご興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
ブロードウェイミュージカル
(*)関連リンク
参考図書
『The Day the World Came to Town: 9/11 in Gander, Newfoundland』 (Jim DeFede 著)
カナダドキュメンタリー映画『You Are Here: A Come from Away Story』
ミュージカルのブロードウェイ版はApple TVで視聴することができます。
(会員登録要、1週間無料視聴あり)
ブロードウェイミュージカル カム フロム アウェイ