黄色~横断旗と少女を背負って歩いた通学路~
黄色
黄色は目立つ色。危険を知らせる色でもある。
でも、希望を抱かせたり、知性が刺激される色でもある。
黄色は、私にとってあまり縁がない色だ。せめて言うなら、一年くらい前に『おそ松さん』を見ていて、その時に好きだった十四松のイメージカラーが黄色だったくらい。
ヒマワリも黄色だけど、夏が苦手だからヒマワリの思い出も特にない。何かないものか。色々考えて、ようやく浮かんだのは横断旗だった。
私が小学生の頃は、近所に住む子ども達が集まり、集団で登校をする形だった。その集団は登校班と呼ばれ、その班の最高学年の一人が班長として黄色の横断旗を持って登校をする。
私のいた班は、全ての学年がそれぞれ1~3人の班だった。私の同級生も男子が2人いた。最高学年になった時、男子2人は面倒だと思ったのか私に班長を押し付けた。その男子達からはいじめられていたわけではなかったけれど、断ったらいじめが悪化するのではないかという不安、いじめられ疎まれているような存在の私に役割が与えられたちょっとした幸せ、その二つが入り混ざり、私は班長を引き受けた。
3学期は完全に不登校になっていたから、実質、班長をしたのは1~2学期だけだったけれど。
下の学年の子達は、私が同級生からどのような扱いを受けている存在なのかを知らないからか懐いてくれて、登校中はよく下級生の子達と話をしながら登校をしていた。
そんなある日、1年生の女の子が転んでしまい、大泣きをし始めた。見た感じ、擦りむいてはいないようだったけれど、足が痛いと言って泣いていたから、私は子どもながらに考え、捻挫の可能性を予想した。
だけど、その子が転んだのは、集合場所と学校のちょうど中間地点。学校の保健室まで連れて行った方が早い。そう思って、私は自分のランドセルを他の子に預け、学校までの道程をその女の子をおぶって歩いた。そして、保健室に送り届けた。
私は、その出来事は言う必要もないと思っていたから、自分の家族には話さなかった。だが、それから数日後、家族に知られることとなった。転んだ女の子が帰宅してから、何があったのかを家族に話し、女の子のご両親が私の家にお礼に訪れたからだ。
その時、私の家族が何を話していたのかは知らないけれど、女の子のご両親が帰ると、私は祖母から怒られた。
「助けたい気持ちも大切やけど、あんたも成長期なんや。そんなことしとったら体を壊してまうやろ」
両親は困った顔をしていた。私は腹は立たなかったけれど、怒られる意味は解らなかった。だって、捻挫をしているかもしれない小さな子を無理に歩かせるわけにもいかない。
それに、同級生からは罵声を浴びせかけ続けられているような私なのに、あの子達は私に救いを求めてくれた。それに、どうせ蔑まれるような私なんだ、私の体がどうなろうとどうでもよかった。
横断旗を思い出したら、その出来事を思い出した。
ちなみに、私の歩いていた通学路は横断する場所なんて車がほとんど通らない道の1か所だけ。横断旗は私のランドセルに刺さっているだけのようなものだった。