入らずの森の梟の王②
その入らずの森に、今一人の人間が入ってきました。その姿はボロボロで、まるで獣の様でもあります。
その者が獣に見えたのは何も身なりからではありません。よたよたと歩く姿が人間の歩行よりも猿かなにかが馴れない二足歩行をしているようにフラフラと歩き、時には四つん這いで這うように動いています。
しばらくしてその者が大きな木の幹に体を預けるように、太くてしっかりした木の根に寄り添うようにその場で動かなくなってしまいました。
それを見ていたのは森の生き物たち。とりわけ、厳しい目で見ていたのがその森に住む狼でした。その狼は灰色の体をしていて、青い瞳を爛々と輝かせ、そして静かに何かを伺っている様子です。
小さな小さなその獣の様な人間はもう虫の息で、ただ小さく浅い呼吸をして、なにかその時が来るのを静かに待っている様でした。それが狼に伝わったのか、狼は一気にその小さき人間に襲いかかろうとした。
その時、ホー、ホー、とどこからか静かに、そして力強い梟の声が聞こえてきました。その声を聞いて、灰色狼はなにか悔しげに一声唸り、森の闇に消えていきます。そして、そのホー、ホー、と響く声は一晩中、人間を守るように森の中を響き続けました。
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