盆に帰る
仕事帰りに乗った電車は、何とかその日のうちに地元に着きそうだ。本来なら余裕を持って着くはずなのに、アイツが絡むといつもこうだ。
今回もアイツに会うため、と言えば語弊があるかもしれない。
そういえば、あの時もこんなふうに終電に乗ってたっけ。突然過ぎて、気づいたら電車に飛び乗っていたな。まぁ、今回は残業だから仕方ないけど。
てか、アレから5年だぜ?ケンジはこないだ結婚したし、ユミは子供が出来たって聞くし、デブのタケシは痩せて、モデルみたいな彼女が出来た。なのに俺は未だに独り身。嫌になるよ。愚痴るからお前、聞けよな。そのために地元に帰るんだから。
その為の盆休みだ。独り身の俺に感謝しろよ、とスマホの写真フォルダを開く。アイツと最後に撮った写真はいい顔をしている。
目線を夜の車窓に移す。窓に写った自分だけが老けていくのかと悲しくなった。
----------------------------------------------------------------
こちらは朗読用に書いたフリー台本です。
ご利用の際には以下のページを一読お願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?