チームでアセスメントを共有すること ソーシャルワーカーのための「面接技術」Plus Ultra 17
【実践編】
第3章 チームでアセスメントを共有すること
「体制」としてのアウトリーチ
これまで【基盤篇】として、ソーシャルワーカーのポジショニングなど、「面接技術」の土台となる事柄について述べてきた。次に、第二部として【実践編】である。第一部を文字どおり基盤とした上で、面接におけるアセスメントや面接のやり取り、そして細やかな技法について紹介したい。
さて、第2章でみた「ソーシャルワークの展開過程」には、①アウトリーチ(ニーズの発見、掘り起し)があった。筆者はこれまで、「自分からSOSを出せない人々」や、「相談窓口で待っているだけでは拾えないニーズを抱えている人々」がいる――言い方を変えれば、「待っているだけではつながれない人がいる」――と考えて、アウトリーチ実践を大切にしてきた。
例えば、一軒一軒インターフォンを鳴らして「何かお困りごとはないですか?」「いつでも何でも、まずはご相談ください」と訪問してまわったこともあった。
しかし、個人で、全ての家へ訪問することは難しいだろう。時間帯によっては、家にいないこともあり、平日の日中だけの「アウトリーチ活動」だけでは限界がある。
そこで、体制としてのアウトリーチが求められる。これは、言い換えれば“何らかの形で表明された「SOS」を、行政職員も、専門職も、地域住民も見逃さない”ということである。
筆者自身の、決して長いとはいえない現場実践の中でも、「実は、数年前に行政には相談したんですが・・・」など、何らかの形で相談がなされてきた(しかし、適切な支援の提供には至らなかった)事例を残念ながら多々見聞きしてきた。
ここでも、アセスメントが重要となるのである。そして、本章のテーマでもある「チームでアセスメントを共有すること」によって、はじめてつながれる人もいるのである。
このことについて、普段筆者が講義などで使用している架空事例(倫理的配慮の観点から、実際の事例を複数組み合わせて創作した事例)を紹介したい。
介護を担うひきこもり事例から
地域住民のAさんから行政職員B氏へ「世間話の中で、次のような話を聞いた」「おせっかいかもしれないが・・・」と対応について相談があった。そしてその【相談内容】について、行政職員B氏からソーシャルワーカー(読者の皆さん)へも「情報共有」として話があった。その【相談内容】は、要約すると、以下のとおりである。
AさんからB氏への【相談内容】の概要
知人Cさん(50歳の男性)との世間話の中で、「うちも大変といえば大変なんだよね」と話を聞いた。70代後半の祖父、Cさん夫婦、20代前半の息子の4人暮らし。祖父の介護をひきこもり状態にある息子が担っているが、「1か月半ほど前に、祖父に末期(ステージⅣ)の癌が見つかった」。Cさん夫婦は共働き。祖父は介護保険サービスも利用していない様子である。
このような地域住民からの【相談内容】に対して、行政職員B氏は「Aさんへ『介護保険サービスの申請ができるということをCさんへ伝えてもらうよう』依頼」し、ソーシャルワーカーへ「そのうち介護保険サービスの申請に来ると思うので、“待ち”でいいですよね?」と話した。
さて、読者の皆さんは、このような事例(【相談内容】に対する行政職員からの「情報共有」)に対して、ソーシャルワーカーとしてどのようにアセスメントし、誰に、どのようにアプローチするだろうか。またそもそも“待ち”でいいのだろうか。
アウトリーチ「体制」の整備に向けて、一度考えていただきたい。
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