ソーシャルワーカーのための「面接技術」Plus Ultra 3

八百屋にやってきた「牛肉を買いたい」お客さんとその対応例 その1

 あなたは、ある商店街の八百屋に勤めているとしよう。そこに、きょろきょろしながらある女性のお客さんがやってきたとしよう。そして「すみません、牛肉を買いたいんですけど…」と尋ねられたとしたい。
 さて、八百屋のあなたは、どのように対応をするだろうか。少し考えてみてほしい。
 ちなみに、その商店街には、八百屋から30mほど歩いたところに赤い屋根の「加藤ミート」があるとしよう。

 先ほど「断らない相談」について考えた読者は、おそらく「うちは八百屋なんで、牛肉はありません」とだけ言い、それで終わりということはないだろう。

 さて、考えていただけただろうか。
 
 おそらく、次のようにこたえる読者が多いのではないだろうか。

「すみません、うちは八百屋なんで、牛肉はないんですよ。
ここから30mほど歩いたところに赤い屋根の加藤ミートさんがあるんで、行ってもらえますか?」

 
 このようなロールプレイを講義や研修などで行うと、多くの人がこのような回答をしてくれる。
 加えて、
「もしよければ、お肉屋さんまで一緒に歩いて案内しましょうか」
「これが商店街の地図ですので、お渡ししましょうか」
などの対応をしてくれる人もいる。

 そして、お客さんは、たいていの場合「ありがとうございます」といって、ロールプレイを終わる。
 お客さん(役の人)にとっても、「うちは八百屋なんで、牛肉はないんですよ」だけで終わらず、「親切だった」と感じる人ももちろんいるだろう。

 では、お客さんの「背景」に、実はこのような事情があったらどうだろうか。
 お客さんは、先週この街に引っ越してきたばかりの女性である。引っ越してきたばかりで、この街のこともあまりよくわからない。実家も少し離れてしまったため、すぐに親を頼ることもできない状況である。
 隣町には高校時代の友達がいるが、2人の子育てに忙しく、なかなか会うことができないでいる。
 そして、お腹の中には一人目の赤ちゃんがいる(ただし、お腹はまだ目立たない)。妊娠を機に新しく家を買い、この街に引っ越してきたのである。
引っ越し作業は一段落したが、家探し、引っ越し、仕事などの疲れが出たのか、夫が最近「夏バテ気味」となっている。
 そこで、「夏バテにはお肉がいいと思う。きっと、牛肉がいい」と思い、牛肉を買いに街に出たところ、お店があったので「牛肉を買いたいんですけど・・・」と話しかけてみることにした。
 そのお客さんは、今後のことで不安もあるが、頼れる知人は近くにいない。

          、、、つづく

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