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タクシードライバーを3ヶ月ぐらいやっていたことがある話①

ちょうど2年前ぐらいになるだろうか。

何か僕の中に全くなかった部分の仕事を、できる範囲内で無性にやりたくなった時期だった。

それでいて、いろんな種類の人間とコミュニケーションが取れるのではないかと思った。

長く続かなくて良いから経験はしておきたい。

そう思い、すぐに前職を辞めて、タクシードライバーに照準を定めた。

二種免許取得の試験はかなり厳しく、久しぶりに勉強もして、はれて僕はタクシードライバーになったのだが、なったらなったで、

「子どもが産まれたら深夜までかかるの嫌だから」

「首がめっちゃ痛くなったから」

「道、全部覚えらんねぇから」

といった様々な理由により、3ヶ月で辞めた。

僕は恋に恋をしていたのだ。

は??

とにかく、他にも細かい理由はあるけど、辞めた。

早い、と思うかもしれないが(実際早い)、良いところもあった。

このタクシードライバー期間のおかげで、今では僕は車の運転を長時間しても全然疲れないボディになった。

当然危険なので休憩は挟むけれど、いきなり車で東京から大阪行ってこいと言われてもなんの疑問も持たずにいけるぐらいにはなっている。

「そこらへんまで行ってくる」の範囲が関東ぐらいなら簡単に超えている。

それともう1つ、だいぶ濃い目の知らない人との絡みに強くなった。

こういう部分のコミュニケーション能力を高めたい人にはタクシードライバーをすすめたいぐらいだ。

社会人をやっていれば、どんな職種だろうと絡みたくない人がいたり、人間関係に苦しむこともあると思う。

タクシードライバーに限らないかもしれないけど、タクシードライバーは「瞬間的に」それが起こる。

あそこに手を挙げている人がいる。タクシーを停める。ドアを開ける。

そこまでどんな人なのか分からない。

準備や対策が取れないし、うまく絡めなくても次がないからリベンジもできない。反省しても同じ人で試せない。

瞬間的に相手にアンテナを合わせなければいけない。

そこの部分は僕はたまらなく好きだった。

そんなわけで、3ヶ月という短い期間であったとはいえ、その3ヶ月間に対応した濃いお客さんの話をしていきたいと思ってる。

だから「①」とつけてシリーズ化した。

まぁ、僕のことだから②ぐらいで終わることもあるかもしれないけど。

▶︎ゴリゴリのヤンキー4人

「クーラーMAX全開で」

そう言って入ってきた金髪ピアスの強そうなお客さん。以下、金髪ピアス様。

だいたい第一声は目的地か、どのぐらいかかるか言われるものだと思っていたけど、まずエアコンの強さを指摘された。

夏なことが分かる。

助手席に座った。

すると連れのお客さん3人が後部座席に座る。

東京卍リベンジャーズみたいな人達だった。

「あっつ!!」「ちょ、あちーよ!!」「つか、3人並ぶの狭っ!!」

僕は「やめてやめてやめて」と何度も思った。

助手席の金髪ピアス様が「○○の○○まで」

僕「かしこまりました…ご指定のルートはございますか?」

基本的にこっちで道を考えるが、少しでも気に入らない道を通ったり、間違えたりして、これ遠回りしてるんじゃないかと思われたらアウトだと思った僕は、そう尋ねた。

「あぁ、良いよ、なんでも」

僕「はいっ!!!!!!」

元気さでいくしかないと思った。

走行中、後部座席は何やら賑やかだった。

「運転手さん、マジであちーよ、この車」

「つか、運転手さん若くね?何歳?」

「運転手さん最近いつHしました??」

このライブのMC、むずすぎる。

むずいむずいむずい。まず安全運転が優先なことを抱えながらだから。全てのパンチがノーガードで打たれるから。

エアコンMAXだし。あと絶対あなたたちの方が若いし。それから、なんでいつHしたか聞きたいんだよ。

「てか、薬指、指輪してね!?結婚してんの!?」

僕「はい、結婚してます」

「やば!!なんで!?」

僕「なんでって(笑)何がですか(笑)」

「え、結婚なんて絶対したくねぇよ!」

僕「今僕、結婚すすめましたっけ?(笑)」

そこそこ食らいついたように思う。

すると隣に座ってるお客さんが、

「てか、最近いつHしました?」

なんでさっきからそれ聞きたいんだよ。話割ってまで聞くことか。「まだ答えてないですけど」みたいな。だいたいタクシードライバーの性事情聞いて何になるんだよ。

僕の答えに正解がないと思ったので、どうにかはぐらかして目的地につく。

途中、ここには書けないような言葉も浴びせられたりもして、決して良い気分ではなかった。

4200円ぐらいだったと思う。

このメンツで、この会話での4200円ぐらいはだいぶ長距離に感じた。

すると助手席の金髪ピアス様がピッ、と5000円札を出し、一言、

「運転手さんごめんね、うるさくて。これお釣りいらないから、頑張って」

もう黒髪ノーピアス様じゃないすか。

マジすか。その金髪どこでやったんすか。僕も金髪にします。同じピアス開けていいっすか。

怖がってた自分が恥ずかしいよ。

最近いつHしたかぐらい教えてあげればよかった。

辞めた今でも、このエピソードは全然忘れていない。

実は、良くしてくれたお客さんの方が多いのだ。

こんなようなお客さんが、3ヶ月間の中にたくさんいる。

僕はそれを図鑑かのように語っていく。

つづく

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