初めての単独ライブ当日の朝に、相方のiPhoneが便器に沈んだ写真が人づてに送られてきたことがあった
忘れもしない、2017年5月3日のことだ。
この日は僕たちにとって初めての単独ライブだった。
それはもう、気合い入りまくりだ。
目はバキバキだったし、変な感じでかかりまくっていた。
「俺らが1番面白い」そんなことばっかり言っていた。
単独ライブなのに。
前日の深夜、僕は「あそこのオチ前のくだりもうちょっとこうした方がいいか」とか、「これどっちだ、分かりにくいのかな」などと、それらしい過ごし方をしていた。
相方はなんだかよく分からない飲み会に行っているみたいだった。あいつはしょっちゅうよく分からない飲み会に行っていた。
1人でネタのことについて考えていると、僕のiPhoneが鳴った。
相方からの電話だ。
午前2時だ。BUMP OF CHICKENじゃねぇか。
もうそれは前日の夜ではなくて当日の始まりだから。
普段なら堂々と無視するところを、まぁ初単独だし、こいつもなんか明日のライブのことで思うところあるのかな?それとも明日頑張ろう的な?なんだろう。
そう思いながら、ちょっとなんかまだ付き合う前の明日初デートの女子みたいなテンションで出た。
相方「もしもーし、今どこ?」
僕「いや家だよ。何時だと思ってんだよ。さっきちょっと訂正したところLINE入れたけど。」
相方「いや、どこって俺がだろ!!!」
僕はこの時点で会話をする気をなくしていた。
相方と言えど酔っ払いの強気の「そっちかいボケ」ほど面白くないものはないのだ。
こんなやつと明日初の単独ライブを成功させなきゃいけないのか、と僕は「付き合ってる分には楽しいんだけど結婚ってなると大丈夫なのかな?」と考え出すOLみたいなテンションだった。
僕「もう切っていいか?」
相方「待て待て、明日…単独だな。」
僕「おう、じゃ。」
相方「待てって!!!マジで頑張ろうな。」
僕「酔っ払いがモチベーション上げんな。酔っ払いがモチベーション上げようとすると酔っ払いだけしか上がらないから。」
相方「うわぁ、明日の今頃は単独の打ち上げかぁ。」
僕「何次の飲み会のこと見据えてんだよ。知らない?こういうの普通ライブ本番のことを見据えるんだよ。」
相方「明日の単独打ち上げ頑張ろうな。」
僕「酔っ払いがボケんな。酔っ払いのボケ酔っ払いしか笑わないから。しかも明日も深夜2時の計算じゃねぇか。」
相方「バカ!!俺らにとって打ち上げっていうのは…」
強制終了した。
思うようにパソコンが動かなくなってイライラして無理矢理シャットダウンするみたいな、それに似てた。
そうして迎えた当日の朝。
少し早めに集合して最終リハをしようと約束していた。
それもそうだ、なんたって何回も言うが初単独だ。がっちりリハをしておくにこしたことはない。
早めに現地近くのファミレスに入る僕と、ライブの照明を手伝ってくれた奥さん(当時は結婚前だが)。
ここに音響を手伝ってくれた後輩もくわわる。
遅い。
めちゃくちゃ遅い。単独ライブで主演が遅れるって最悪だから。
連絡も取れない。僕だけが待たされる分にはまだいい。
そうして、人づてに送られてきた写真がこれだ。
「これ、夜中に落としちゃったみたいで連絡がとれないって!!」
僕はスティーブ・ジョブズの分も含めてブン殴りに行こうかと思った。
どうしてこんなに綺麗に落ちるんだよ。毎日ここに返してんのか。
なんなんだよこの、ちょうど充電スポットみたいな。元からiPhone置き場だったかのような。
今にも僕はブチ切れそうだったけど、上述したように僕だけならともかく周りの人間も待たせてるし、ここでケンカというか変な空気にするのも違うなと思って、
僕は大きく深呼吸して、
「お前それ大丈夫か?その状態でHey siri !って言ったらガバゴボガバゴボって言われるんじゃないか?」と返した。
我ながら大人でなおかつお笑いっぽい返しだと思った。
めっちゃ無視された。
僕はブチ切れた。
「あいつめちゃくちゃにして笑えなくしてやろうかな」とか言った。
待ち合わせ時間から2時間すぎた頃、相方はファミレスに現れた。
こいつどうやって登場する気なんだろう、この状況で何を言うのかなと思ったら、
相方「いやー…あるんだなぁこういうことなぁ…あるなぁ…笑」
ウォーターセブンでルフィとウソップが喧嘩別れしてその後なんだかんだでウソップには戻る意思があるんだと分かったけど、第一声が謝罪じゃなかったらウソップを置いていくと言ったゾロの気持ちがすごく分かった。
僕「まず周りの人に謝れよ。」
相方「すいませんでした。」
僕「ていうかお前さ、二日酔いで単独ってなめてんの?」
相方「いやこれだけは聞いて、二日酔いではない。」
僕「絶対二日酔いだろお前。何頼むんだよじゃぁ。」
相方「…しじみの味噌汁ってあります?」
僕「二日酔いじゃねぇか!!!!!!!」
こうして僕と、iPhoneがない二日酔い男の初単独ライブは成功に終わったのだった。
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