【AI/DX事例解説】雑草を見分ける画像処理AIの開発
ESTYLEのデータサイエンス事業部新入社員の多田です。
私は表題の通り、作物と雑草を識別するAIの開発について調べてみました。今回はBlue River Technology社が開発した作物・雑草判別モデルの概要をご紹介します。
本記事はBlue River Technology社へのインタビュー記事[1]の内容をまとめて、加筆したものです。
開発の背景
雑草に除草剤をピンポイントに散布
大規模な農場では、雑草を1本1本抜くわけにはいかないので、大量の除草剤を散布して雑草を除去しています。
アメリカ環境保護局(EDA)によると、除草剤/成長剤の支出は全世界で2億ドル以上にもなるそうです。(2012年)[2]
そこで、人工知能やロボット工学を使ってスマートな農業をすすめている企業”Blue River Technology社”は、画像認識モデルを使用しピンポイントで除草剤を散布することで使用量を削減する開発が行われました。
モデルの構築
Kaggleのデータで学習
画像認識モデルで作物と雑草を区別するためには、雑草のデータを事前にモデルへ学習しておく必要があります。雑草のデータを集めるために、Blue River Technology社はKaggle(データ分析コンペのサイト)のデータを扱っています。サイト内に「DeepWeeds」[3]というオープンデータがあります。
DeepWeedsには17000枚以上の雑草の画像が公開されており、それぞれの雑草には9種類のラベルが付けられています。
DeepWeeds[3]から引用
これらの画像のRGBをもとに特徴量を生成して、学習させていきます。
綺麗な画像だけを学習させても認識率は上がらない
しかし、公開されている「きれいな」データだけでは、雑草の判断を正確におこなうことはできません。
なぜなら、作物や雑草は地域や気象条件によって大きく見た目(色彩など)が変化するからです。
例えば、綿花の葉がひょうでダメージを受けると、まわりが黄色に変化し、見た目がまったく異なります。この変化をAIに事前に学習させていないと、雑草と区別することはできません。
また、雑草の中には作物と非常に似ているものがあり、素人では判断が難しいものも多いです。そのため、Kaggleのデータセットとは別に農場で数多くの作物と雑草の画像を取得しています。
大規模な画像を集めたあとは、Deep LearningライブラリであるPyTorchを使って学習をおこなっています。
下図は、専門家とDeep Learningの判別結果で、赤枠が雑草、緑枠が綿花です。
学習の結果、作物と雑草の区別は専門家と同等以上にできるようになったと報告されています。
Blue River Technology社のYouTube[4]から抜粋
Deere & Company社のトラクターにエッジコンピュータを搭載し、除草剤を雑草が生えている部分にだけ散布した結果、除草剤の使用量を90%削減することに成功しています。
所感
モデルの詳細(Deep Learningの内容や教師データについて)には触れられていませんでしたが、Core Technologyはあらゆる条件のデータセットを用いることで精度が向上されたと書かれていました。
インタビュー記事の中でも、多様なデータをどのようにして集めてきたか、ということに焦点が当てられており、教師データの重要性が示唆されています。
機械学習/Deep Learningと聞くと、モデルの構築や精度の向上に目がいきがちですが、ビジネスに応用するにあたっては、役に立つデータを与えることが大切であると感じました。
また、開発コストを下げるために、初めは手元のデータやオープンデータを用いて、データが足りないときには現場でデータを取りに行くという方法が参考になりました。
これからデータ分析を専門にされる方や、AIを導入されるときのイメージ作りに役立てれば幸いです!
参考文献
[1]Blue River Technology社へのインタビュー記事
https://www.protocol.com/the-future-of-farming-is-math
[2] 除草剤/成長剤の支出についてhttps://www.epa.gov/sites/default/files/2017-01/documents/pesticides-industry-sales-usage-2016_0.pdf
[3]Kaggle(DeepWeeds)概要ページ
https://www.kaggle.com/imsparsh/deepweeds
[4]Blue River Technology社のYouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gszOT6NQbF8
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