エストニアの桜は真冬に咲く
今年はよく雪が降る。
近年は度々暖冬になり、積雪が当たり前のエストニアでも雪がしっかりつもっている状態が続くことが少し稀になってきた。
私が小いさかったころは・・・
そんな子どものころの雪の思い出を義母やヨメがしてくれることも多々ある。
九州で育ったボクとしては雪をみると未だにテンションがあがる。
エストニアに住み始めて10年経つが、それでも雪をみると未だにテンションがあがる。
なぜなら雪が積もると世界が明るくなるからだ。
冬至は過ぎ、日に日に日照時間は長くなってきているはずだが、まだまだ暗い時間の方が長い。
そんなどんよりした気候も雪があると少しは心が救われる。
雪がないと本気でどんよりした風景に囲まれ心までどんよりしてしまう。
積雪状態が続けば子どもたちも大喜び。
親を馬かロバと勘違いしてるのでは?というくらいのノリで、「はやくソリを引いてくれんか!?」と要求してくる。
まるで奴隷のような親たちは町中ですれ違うと知らない人でも戦友のような気分になり、「わかるぞその大変さ。2人を引っ張るのは大変だもんな。もうちょっとだ。がんばろう」そんな意味が含まれている(であろう)会釈を交わし、ひたすらソリを引っ張っていく。。。
そして雪積るこの季節には美しい花が咲くこともある。
真冬に??
そう。真冬に。
寒い寒い氷点下10度以下の朝日が昇りかける数分だけに開花する、
そんな特別な花があるのだ。
この日も子どもを幼稚園に送った後、園を出たら空がいい感じになってきていたので、これはひょっとすると・・・と、お気に入りの場所まで行ってみたのだが、完璧なタイミングで到着できた。
寒さも忘れるほどのキレイな景色。白銀の世界だけでも見惚れてしまうのだが、そんな白銀の世界が淡い朱色に染まり背丈のある木から徐々に染まっていく様子は本当に幻想的なのだ。
まるでネイチャー系の番組のタイムラプスを生で見ているかのような気分になる。
エストニアには梅や桜の花はないのだが、この景色は桜並木の美しさに匹敵するのでは?と本気で思っている。
「儚さ」にも類似点がある。
この雪桜(勝手に命名)は、日が昇りかけ~登り切った直後の数分しか拝めないのだ。しかも空がこの色になるにはある程度の雲が必要だし、太陽がでるくらいの天気のよさも必要。気温もマイナス10度前後でないといけないし、木々の枝に雪がしっかり積もってないとこれまた見事な染まり方はしないのだ。
桜は開花して1週間程度で散っていくとはいうけど、ちょっと強い雨風がふけば一気に散ってしまうという儚さがある。そこに情緒を感じるのが日本人なのだが、この雪桜は上記の条件に加え、開花の時期も予告されないし、開花時間も僅か数分と、「儚さ」抜群なわけだ。
たった数分のこの景色が、長い・暗い・どんよりした冬に落ちていった気分の沈殿物を一掃してくれる。
この景色が見れるだけで、ここに住んでてよかった。とも思える。
他のSNSでシェアしたらリトアニア人の友達から「Batic Roseだね!」というメッセージがあった。
Baltic Roseか….. おぉ、これはまたいい名前だ。
そんなBaltic Roseも陽が上りきって桜色はなくなり元の白銀の世界に戻っていた。
ありがとう。十分に癒されました。
さてと、、、洗い物がたまっている我が家に帰るとしよう。