言いたくて仕方がない秘密
明日は「父の日」
娘たちが、「おとーさん、父の日のプレゼントがあるんだよ!でも内緒だよ!」と何度も教えてくれる。何度も。
子どもって秘密は大好きだけど、「秘密」とカテゴライズされた瞬間、言ってはいけないことがイチバン言いたいことに変わってしまうのは誰もが一度は経験したことだろう。
今言ってしまいたい
でも秘密だから今言っちゃいけない
という2つの相反する行動の狭間をもだえながらソワソワしている様子は愛らしくもあるけど、ちょっと可哀そうにも思えてくる。
だって「いえないこと」がホントに辛そうなんだもん。
なんてないことであっても、大人が、
これ、わたしとだけの秘密ね。
という呪文を放った瞬間、ごく平凡だったひとつ情報には「極秘」というスタンプが押される。
そしてそのスタンプが押された瞬間、今度はその極秘情報を入手できたことを誰かに共有したくなる。そして多くの場合あろうことか、一番つたえてはいけない相手に伝えたくなる。
ボクもそうだった。
小学校低学年のころ、祖父が「お母さんには内緒だぞ」と言って、お小遣いをくれた。
そんな内緒のお小遣いが嬉しすぎてすぐに誰かと共有したかった。
きっとこれが現代だったら、手のひらに乗った500円玉をスマホで撮って、ツイッターで #内緒のお小遣い とタグをつけてつぶやいていたかもしれない。
しかし90年代にはまだそんなテクノロジーは存在していなかった。
黒電をじーこ・じーこ回して友達宅に電話するようなこともまだマスターしてなかった。
そんなこんなでこの秘密を誰とも共有することできないまま、母がパートから帰ってきた。
初めてこの秘密を知らない人間が自分と同じ空間にいる。
言いたい。
でも、祖父は「母には内緒」と言ったではないか。
あ、そうだ。
じゃあ、祖父に「ボクが母に言った」ということが知られなければいいんだ!
本気でそんな発想が名アイディアとして浮かんだのだった。
そして母に嬉しそうに、
「これねー、おじいちゃんがお母さんには内緒だよっ!って言ってくれたのー、だからねー、おじいちゃんにボクがお母さんに言っちゃったこと言っちゃだめだからねー」
と洗いざらい説明してしまった。
もちろんこの後、祖父は母からこっぴどく叱られたようだった。
あー、ボクも可愛いトコあったんだなーと、遠い日の思ひ出を思い返していた。
今思えば、これはいろんな意味で祖父に非があるなー。と思うエピソードだ。(秘密をばらした当人の非は棚上げ)小2の子どもに500円ものお金を与えて「内緒」にできるわけないし、あげるタイミングもけっこう悪かった。
この出来事は度々祖父から聞かされていたので今でもしっかり覚えている。
*
娘たちが再びボクのもとにやってきて、こう言う。
「ねぇ、プレゼント何か知りたい?」「でも内緒だから言わないよ?」
「ねぇ、でも知りたいでしょ?」「でも秘密だから言わないからね!」
もう実際のプレゼントなんかよりもこの様子を見ているだけで満足してしまったのは娘たちには内緒にしておこう。。